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DXでCXしてIXしちゃう時代の「DXの思考法」5

しのジャッキーです。ESG/SDGsについてや、世界標準の経営理論についてばかり投稿していますが、実はIT企業に属していますので、ときどきITのことも書きます。

本って乱読しているのですが、読みっぱなしだといまいち頭に定着しないので、アウトプットを伴わしていきたいものです。今回は「DXの思考法」の第5章、「デジタル化の白地図を元に、あなたのビジネス、あなたの会社のDXに結びつけ、あなたの会社自体を書き込むにはどうしたら良いのか」についてまとめます。以降、本書の内容の忠実な引用などではなく、私自身の理解をもとに、意訳・要約しておりますのでご了承ください。

第1章のまとめ的なもの

高速変化の時代なので、今のスナップショットは一瞬で陳腐化するので、近未来をイメージして白地図を描く必要がある。本書は第2章~第4章で、デジタル時代の白地図を説明する。第5章~第8章で、白地図に自らを書き込み、地図を書き換えるとはどういうことかを説明する。

第2章 抽象化の破壊力のまとめ的なもの

デジタル化は、共通的な手法(標準化)で解がでる範囲の水位が上がっている。そのメカニズムは、層・レイヤーが積みあがる構造、ミルフィーユ構造にある

第3章デジタル化のかたちレイヤー構造のまとめ

デジタル化のかたちはレイヤー構造を使ったネットワーク。ビジネスの要素をばらして、レイヤー間で組み合わせ可能にする。そのレイヤーを増やしていき、組み合わせネットワークを深くしていく。そのネットワークの中から、得たい出力(価値)を引き出せるように整備することが効率化とイノベーションの源泉になる。

第4章 デジタル化の白地図を描くのまとめ

あらゆるサービスがデジタル化する中で、デジタルインフラがレイヤー化して組み合わせて進化し続ける構造になった。これは、デジタルサービスにアクセスしてくるUIレイヤーおよび顧客体験を作るUXレイヤーにおいてもデジタル同様レイヤー構造をとることで、価値の最大化が可能となる

第5章 本屋にない本を探す

GAFAはデジタル化の白地図の中で、自分の得意なインフラのレイヤー構造の中で新しいレイヤーを押さえにかかっている。アマゾンとマイクロソフトはIaaS/PaaSといったインフラのクラウドサービスで争っている。Googleはディープマインドの買収をはじめAIを押さえにかかっており。UI-UXで強みを持つフェイスブックは、ディエム(以前はリブラ)によって、デジタル通貨のレイヤーにチャレンジしている

DXで覇権を握ったネットフリックス

欧米では、GAFAにNを加えたFAANGという表現がある。ネットフリックスの存在がそれだけ大きいということである。DXの事例として、ネットフリックスが取り上げられることは非常に多く、著書もネットフリックスを取り上げる。

ネットフリックスについて著者がここで取り上げるポイントは以下である。

デジタルトランスフォーメーションを実現するするために、多くの日本企業は企業風土の抜本的な変革が必要であり、そのためには、タテ割りではない文化が必要であり、ではタテ割りの文化なしに、会社を成り立たせるためにはどんな文化が必要なのか?そのヒントがネットフリックスにある。

P&GのDXを牽引したトニー・サルダーナ氏によるネットフリックスが産業構造までひっくり返すことに成功した3つの要因を取り上げた上で、2と3について深ぼりする。

1. 早い時期にストリーミングの可能性に着目し、方向転換したこと
2. 書籍「NO RULES RULES」に描かれるような特異な組織風土のフル活用
3. ビジネス拡大に耐えうるデジタルテクノロジーのモデルの採用

コンテクストによる経営

なぜネットフリックスでは、部下が上司の承認を取ることなしに、社として一体となってある方向に邁進し、高収益を叩き出すことができるのか?その要因について「NO RULES RULES」を元に以下のようにまとめている。

リーダーや上司がきちんとコンテクストを説明し、それが組織に浸透している
→規律やコントロールではなく、コンテクストによって会社を引っ張る 

そして、このコンテクストによる経営が成り立つ前提条件として以下の3つを取り上げる。

1. 有能な人材だけで構成されていること
2. 組織の目的がイノベーションであること
3. 会社内の部門同士の関係が緩やかであること

書籍で語られなかったネットフリックスで共有されている明確なコンテクスト

トニー・サルダーナ氏による分析の3つ目のポイント「3. ビジネス拡大に耐えうるデジタルテクノロジーのモデルの採用」とは、ネットフリックスがシステムをアマゾンのAWS(Amazon Web Services)、つまり全面的にクラウド移行し、その後マイクロサービスと呼ばれるようになるソフトウェア開発手法を作り上げ、オープンソースを活用しまくったことである。

これは会社のシステムの構成要素同士が疎結合であることも意味している。そしてこのシステム構成が組織の構成をも規定するようになるというのが、ネットフリックスの中で「逆コンウェイの法則」と呼ばれるコンテクストである。こデジタルを最大活用するシステムを作ると、それは構成要素同士が疎結合となり様々な組み合わせで活用が可能となる。また構成要素同士は独立性が高くなる。そういうシステムを実現しようとすると、会社側のシステムもそうなってくる、というのが著者の主張なのだろう。

ネットフリックスが自前開発にこだわったポイント

ネットフリックスは自前のデータセンターを捨ててクラウド移行したが、顧客の試聴体験の最適化には、自前の技術開発を徹底した。これまでの大画面テレビでコンテンツを視聴するという固定観念を捨て、あらゆるデバイスでの試聴体験を最大化するためには、既存のソフトウェアやサービスではないものを作る必要があったからだ。個別の目的に合わせて作り込まれたモノリシックなソフトウェアではなく、組み合わせて使えるように変えていった結果、マイクロサービスというアプローチに行き着いた。

マイクロサービスとは何か

マイクロサービスは疎結合を実現したテクノロジー。アプリケーションを、独立したマイクロサービスに分ける。その上で、それらを統合する機能をもったレイヤーを整備することで、社内外の既存アプリケーションと連携可能とする開発のアプローチがマイクロサービスによるソフトウェア開発のアプローチだ。

本屋にない本を探す

著者は、デジタル化の白地図に自社を書き込むことを「本屋の本棚の前に立ってみて、そこにない本を探すことをイメージしよう」と言います。一般的なDXの指南本のアプローチでは、自社システムの最適化を起点に考えて、オンライン会議などまずできるところからデジタル化し、その範囲を広げていき、全社展開する、といったものが多いと言います。著者のアプローチはこれとは異なります。

本屋の本棚を先に見る3つのメリット

本屋の本棚を見に行くというのは、外部環境を見に行くということであり、そのメリットを3つあげている。

1. 世界をベンチーマークできる
2. 自社が真に集中すべきポイントが明らかになる
3. このプロセスを経て本屋にない本を開発すると他社にも売れる

3つもの事例としては、ベゾス経営のもとDXしたワシントンポストが、電子配信において、文字・画像・映像などのコンテンツを組み合わせて配信するために開発した「アーク・パブリッシング」という編集ツールを他の新聞社などにも提供していることを挙げる

白地図を書くためのツール:ウォードリー・マップ×本棚

本屋の本棚を見て、自社の真に集中すべきポイントを明らかにしていくにあたってのツール(フレームワーク)として、著者はサイモン・ウォードリーという方が開発氏、英国政府も参考にしているというウォードリー・マップというものを挙げます。

ウォードリー・マップは「可視化軸×デジタル開発度軸」の2軸のマップである。可視化軸は、顧客から見えるかどうかであり、デジタル開発度軸は、技術はあるが独自開発が必要か、製品のカスタマイズが必要か、はたまた、もうプロダクトとして普及しているか、といったデジタル化の度合いをさし、低い状態から高い状態へと時間の経過によって移っていく運命にあると捉える。マップの例として、オンライン写真サービスの例が以下のように示されています。

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このように、顧客の体験や課題を頂点にして、それに必要な機能や要素を分解していくことがタテ軸であり、それは本書でいうレイヤー構造と同じです。そして横軸は、そのデジタルとしての完成度であったり、コモディティ化の度合いです。分野によって非常に細分化されて痒い所に手が届くようになっているものもあれば、技術的にもまだまだ研究段階で実証検証が必要なレベルのものまで様々です。

ツールの使い方

著者のアプローチのミソは、自社にとっての本棚の棚割りを書くこと。その上で、その本棚に入手可能な本を並べてみること。さらに、そのカテゴリーの事例も並べてみる。事例があるということは、時間が経てば、本になってくるということだ。そうやって、外部環境がわかってきたところで、それぞれの要素で、自社はどうしているのか、自社システムの構成を書き込んでいく。

こうして出来上がったマップを眺めながら。自社の目指す価値を実現するために必要なもの、そして本棚に現在ないものは何か、それは自社で開発できるか、すべきか、他社と組むべきか、といったDXにおける経営課題、戦略課題が浮き彫りになる。

第5章のまとめ

デジタル化に即したサービス提供システムのマップを描きそれを実現する経営を目指すことで、ヨコ割りの組織風土を実現できうる。そのためのマップは、顧客体験・課題を頂点に要素分解、その要素を実現するデジタルテクノロジーが開発要・カスタマイズ要・普及済みかを事例含め見極め、自社システムを重ね合わせたものである。このマップを俯瞰することで真に集中すべきポイントと実現方法を考えることで経営戦略に昇華できる。

第5章は4000字近い記事になってしまいました。。。さて、第6章ではこのアプローチの汎用性についてです。

DXについての記事は以下の「マガジン」にストックしてますので、併せて覗いてみてください。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

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