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お金の管理の上手い下手

母のこと

私は長い間母親がお金の管理をしっかりできる人だと信じていました。
何を根拠にそう思っていたかというと、母が貧乏をしながら家計をやりくりしていたからです。
しかし、実際どんな風なやりくりをしていたのかはわからないので、それがちゃんとしたお金の管理になっていたかどうかはわからないことでした。
子どもの私は母を慕ってなんとなくそう思っていただけのことに過ぎません。

母は生涯家計簿をつけることがありませんでした。
今はそれでよくやっていたと思いますが、記憶に残っている限りでは食べることにほとんど不自由したことがなく、それはとてもありがたいことでした。
また、母が若い頃は貧乏で管理するようなお金がないとか、郵便貯金に入れておけば満期で倍になって帰ってくるとか、そんなざっくりでも不安にならない時代だったのかもしれません。高度経済成長期でした。
私が世帯の家計管理を担うくらい大人になった頃の母は、よくわからないままに株に手を出していたり、職場に来た保険の外交員に言われるままに保険に入っていたりしていましたが、自分で稼いでいる間はお金についの不安を口にすることはありませんでした。
この頃私は自分のお金の管理技術のなさを感じ始めており、自分の不勉強を差し置いて母から何も教わらなかったことに気づいたところでした。

やがて仕事を辞めた母は、それまでの貯蓄を切り崩す生活になり、お金の不安を感じ始めます。
僅かな株については扱いかねてほぼ放置していました。
年金型の保険に入っていたので、貯金とその年金で例えば10年間の間に年いくら、月いくらのお金で生活すべきと計算することができるはずでしたが、母は計算が嫌いでしたから計算して計画を立てることはしませんでした。
計算をせずに少しずつお金が減るのが怖くて、認知症状が出始めると常に通帳と印鑑を持ち歩くようになりました。
気づいた私がそれを預り、母が必要だと言った時だけ代わりに現金を出しに行くと、その管理から解放され少し穏やかな顔をしていました。

老後の母は、訪問看護やデイサービスの利用料、入院とその関連費用、老人ホームのお金などにその貯金を使うことになりましたが、その時はもう自分で判断してお金を扱うことはできませんでした。

母は決してお金の管理が上手い人ではなかったと今は思います。
不安があるなら計算したり相談したりができていれば、もう少し安心して暮らせたのではないだろうかと思います。

もと夫のこと

前の夫についても、私はお金の管理が上手な人だと思っていました。
なんというか、自分がその方面に自信がなく、周りの人がデキる人に見えたのか、自分ができない/したくないから、自分以外の人にして欲しかったのか、母の時と同じ間違いをもと夫に対しても犯してしまいました。

結婚当初はそんな気配を全く感じさせなかった彼ですが、裕福な育ちではなくむしろ自営業で厳しい家計の家に育ったが故に、お金がないことが怖くて、ある程度安心できる額の貯金をするためには極端な節約を厭わない人でした。
また、社会人になってからは実家から頼りにされていて、それが生き甲斐にもなっていたので、そのためにも貯金に励む人でした。
貯金があれば気持ちに余裕もできるので、お金に対しての不安がないように見え、きっとこの人についていたらお金で困ることはないと思ったのです。
彼も私の気持ちを見透かしていて、お金の心配はないと請け合っていました。

しかし、彼には計画性がありませんでした。
生活全般を踏まえてお金をどう配分するかや、まずいと思った時のやめるとか引き返すことができず、もっと言えばまずいことにならないように予防する力も弱かったように思います。
なぜかというと、結婚の申込み前に結婚後田舎で親と同居するために家を建てる契約をしてしまったのです。
また、結婚直前に部長への昇格をうけたので、日々の残業代がつかなくなり手取りの給与額が激減しました。
いざ結婚の話を進めようとすると私の母が田舎での同居に大反対をしたために、田舎の家のローンを払いながら大阪で住む賃貸マンションの家賃を支払うということになりました。子どもが生まれると、正社員夫婦の子なので保育料がバカ高く、更にその後私が解雇されて定収入がなくなってしまいました。
丁度リーマンショックがあった頃で、景気は落ち込んでいく一方でした。

解雇された私が月々家計にお金を入れることが難しくなり、結果ローンと家賃の支払いが辛くなっても、もと夫からは何か現状を打破するような提案も家計を心配するそぶりもありませんでした。
家計の足しになるかと私が詐欺のような通信教育を契約した時は、私の不安のケアは全くなく、バカなことをしたと激怒しました。(クーリングオフで契約は破棄しました)

離婚後、知り合いのFPの力を借りたり、本で勉強したりして家計改善に取り組みながらもと夫のことを思い返すと、彼もお金を管理する技術はさして持っておらず、なければ貯める、貯めるためなら節約する、そんなシンプルな人だったなと思います。
家族が増えて、それぞれの思惑や言い分が出てきて、でも自分の気持ちやプライドもあって、そこにローンや家賃や欲しいものや遊びたいことがあると、彼には複雑過ぎてそれらを上手くコントロールすることはできなかったんだろうなと思うのです。

お金を管理する、お金と上手につきあうのは簡単じゃない。
やっぱり技術とかコツがいるなと思いつつ、私は相変わらず四苦八苦しながら生活しています。





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