sensuality

首筋に溶けた香水の残り香が流れ落ちていく。熱いシャワーが余計に身体を火照らせる。浴室の蒸した空気に、やるせなく溢れた溜め息が混ざって、頭の中では短い妄想の断片が短く白飛びして入り乱れる。今更幾ら考えても理想の関係なんてもう何も思い浮かばなくて。どれもこれも手慰み。便利で既視感のある設定で今日も何度か普通の恋愛ごっこをして、それでもかなり単純に気持ち良くなって、自分じゃないどこかの誰かに、赤の他人になれたらいいのにって、虚しくなりながら、思った。何もかも違えばいいのに。幸せな嘘の世界観で、笑っちゃうくらい陳腐な台詞を軽薄に弄ぶ。想像の中で。

「    」

呼び慣れた名前。慣れない声色で、苦く呼ぶ。

白い肌に爪を立てて。自分でも理解し切れない、理解されたくもない、不可解な情熱に打ち砕かれて。

私の青春が汚く濁っていく。

こんな不自由な身体なんかじゃなく。君にちょうど良い、恋人に相応しい肉体が欲しい。

お揃いの制服も、色違いのリップも、「可愛いよ」って言ってくれるロングヘアも。欲しいものからは全部ちぐはぐ。近くて遠い心の距離。

私は何で私なんだろう?

甘い甘いあの香り、彼女を真似た香水の残り香と、シャワーの熱気とに抱きすくめられて、惨めに後悔してるよ。

何でこんな風に。

好きになったりしたの。


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