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夏祭の大祓(おおはらえ)と御霊会(ごりょうえ)

本日は京都府立大学での講義へ。いつもお世話になっている濱崎加奈子さんの「歴史の中の食と病」の中での講義の2回目です。

私の演題は「疫病退散の夏祭ー御霊会(ごりょうえ)と都市祭礼の神賑(かみにぎわい)」。

もうすぐ夏祭の季節です。旧暦の五月や六月は、温湿度が高く洪水も頻発し疫病が発生しやすい環境となります。特に、農山漁村とは異なって、生活環境の自浄作用が追いつかない町場では、疫病の流行が顕著でした。

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都市域では、自然に蓄積される罪穢(けがれ)を祓う半年ごとの神式の「大祓(おおはらえ)」や、災害や疫病の原因を怨霊の類に求めて鎮める「御霊会(ごりょうえ)」が営まれました。双方とも、水辺で祭が営まれ、罪穢や悪霊を水に流して送り出します。四方を海に囲まれて多くの河川が淀みなく流れる日本列島で育まれた、日本らしい「禊(みそぎ)信仰」とでも呼び得る祭の様式です。

御霊会といえば、全国的には京都の祇園祭が有名です。疫病退散を願って、祇園感神院(八坂神社)の祭神である牛頭天王(スサノオノミコト)が、各地の城下町などに勧請されました。

天神祭が営まれる大坂の天満宮の菅原道真公も御霊信仰の影響も受けながら独自の天神信仰を形成していきますが、天神祭を含め大坂の旧暦6月の夏祭は、御霊会ではなく夏季の大祓を基底とします。

住吉祭では6月晦日の大祓が祭の核となっています。天神祭も、例えば『摂津名所図会』では、天神祭を「鉾流神事」として紹介し、多様な神事と神賑行事について述べた後、「これらに群をなすものみな天満神(あまみつかみ)の夏越の御祓(みそぎ)なるべし」と解説します。

かつて、神輿の渡御の目的地を定めたとされる鉾流神事は、もともとは罪穢、あるいは悪霊の類を水辺でカミ送りするための儀式だったのかもしれません。

今日は、祓詞と大祓詞の話の前に、呪術廻戦の「帳(とばり)」を下ろす時の唱え言「闇より出でて闇より黒き、その穢を禊ぎ祓え」をツカミにもってきたのですが、知っている人がいなくて撃沈・・・それはさてき、2回目ということもあってか、学生さんと会話をしながら講義も進めることができて、楽しかったです。

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