見出し画像

短歌アイデア帳007「r音効果」

ら行の音の繰り返しが持つ、素敵な甘い音の印象


「らりらりら らららるるるる りろりろる
 るららるらるら らりらるらりら」

 五七五七七のリズムで、「ら・る・ろ・り」を適当に並べてみると、あら不思議。なんか柔らかく甘美で素敵な音の世界が広がります。なんなんでしょうね。特に「ら」と「る」は、歌謡曲なんかでもよく耳にします。
 歌謡曲の歌詞に「らららー」とか「るるるー」なんか、よく入っているのを見かけますけど、なぜなんでしょう。発声する時の口の形が対照的で、前者は口を大きく開くのに対して、後者は逆に口をすぼめて声を出しますよね。真逆の口の形で、「ら」と「る」だけでも甘い感じの連続音を生み出すことができる不思議。同じ口形(こうけい)でも「あ」や「う」では、何か足りない感じです。そこで、ちょっと考えてみました。

 ら行の音は、音声学的には破裂音・摩擦音・破擦音などとは違う「弾音(だんおん)」と呼ばれる音に分類されます。空気を破裂させたり、擦らせたりして出すような音ではなく、上の歯茎の裏側中央に舌先を着けたり離したりして、軽く素早く動かしながら出す音です。だから、他の音と違って、軽快に弾む感じに聞こえるんでしょうね。ら行の音に「ん」をつけて繰り返せば、「ランラン」「ルンルン」と楽しそうに弾む感じになりますしね。また、「リンリン」はベル音のする電話や目覚ましなど、軽やかな鈴のような音ですよね。さすがに、「レンレン」「ロンロン」は言わないですけど。「レロレロ」では、ちょっと頼りなく力が抜けてしまいそうです。要するに、口の開きが中途半端でメリハリがなくなっちゃうんでしょう。ここは、口の開きが縦横に全開の「ら」。口の開きが横に全開・縦に最小の「り」。口の開きが縦横最小の「る」。この3つで組み合わせたほうが音の区別がはっきりして、言う方も聞く方もわかりやすくなるからだと思います。

 さらにさらに、万葉集の中には、山上憶良の次の有名な歌があります。

憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ
(おくららは いまはまからむ こなくらむ そそのははも わをまつらむそ)

 この歌には「ら」の音が多く用いられています。第四句には「れ」まで入っていますが、特に繰り返し出てくる「ら」が、音韻的に独特のリズムと雰囲気を作り出しています。場を和ませるような柔らかい感じです。「らら・らん・らん・らん」ですかね。歌の意味と合わせて、この歌がどういう場面で詠まれたのかという状況に気づくと「なるほど」と思います(笑)

「らりるれろ」音は、使いようによっては効果絶大です。特に「ら・る・り」音は魅力的です。おちゃらけやふざけも入れるなら「れ・ろ」もいいかもしれません。ここぞと言う時に使ってみませんか?意外におもしろい詩歌ができるかもしれませんよ(笑)