見出し画像

短歌アイデア帳002「体で覚える」

 なんとタイムトライアルで即興性のパフォーマンスを向上させるトレーニング法を開発(?)しました。効果は自分で実証済みです。短歌を始めたばかりの人には、効果が高いと思います。大した時間もかからないので、ぜひ、騙されたと思って試してみてください。
 それは、十首を15分で作るというもの(鬼だな)。お題がないのがせめてもの救いでしょうか。また、内容の質もどうでもいいし、慣れることが目的なので。よく言うところの「習うより慣れろ」的な発想です。僕がアメブロで半年以上も前に投稿した記事をもとに、その時の様子をまとめてみました。まずは、10日間続けた結果、出来たものを古い順に並べてみます。「なんだこりゃあー???」って、呆れながら、見る人は一通り見てください。まとめまで、とばして読んでいただいても構いません(笑)

1日目【2021/01/10】

○口髭も 顎もホッペも 伸びたまま 誰に会うでも 何するでもなし
○風強し これは恐らく 木枯らしの 三号くらいに なるかも知れない
○一銭の儲けにもならぬ趣味三昧 家計に響く一線は越えず
○寂しくて ネットの友は冷たいし 下手に歩けぬ 自粛生活 
○誰でもいい せめて教えてくれないか こんな生活 いつまで続くか
○沈香の匂い残して面影を 敢えて焼き付けたかったかどうか
○自粛して 一年出かけず いたけれど 気づけばみんな 出歩いていた?
○寒空に 飛行機雲が 碧海に 白波立てるように続いてる
○寒くって 身も縮こまる 陽気ゆえ 余計心が窮屈みたい
○とりあえず 十首作れば このノルマ 達成となり これにて終了


2日目【2021/01/11】

○この文は 文字数だけは いいみたいだが 中味は普通 ただの散文 
○かねてから 知りたいなとは 思ってた 短歌がそれと 言われる結縁
○何が違う 字数音律 合わせても 何故か短歌と 呼べぬ代物
○くだらない 傍から見れば そうだろう 何でそんなに躍起になるかと 
○ペース落ち これがいちばん怖いから やる気ないのに 無理してるから
○返事待つ SNSの コメントを まだかまだかと 行ったり来たり
○疲れたな 特別何も してないが 正月ボケで 調子が狂う
○昨夜見た 夢の続きは見れないが 見させてくれよ この恋の夢
○逢いたいと 想う気持ちが募るほど 逢えない辛さ 激「辛」状態
○焦るよな 時間に限りが あるものな ホントにこれは 無理があるから


3日目【2021/01/12】

○窓からは ふざけたような 陽の光 色レンズ越しに 目に染みてくる 
○眼鏡して ノートパソコン 開いたら 無口で打ち込む 十五分間
○休憩の 時間でやっては いるものの 苦痛で 休憩 したと言えない
○飯を食う 時間でさえも 惜しいのに この時間だけは 必ずとってる 
○昼過ぎに 仕事部屋へと 行ったきり そこを出るのは 多分五時過ぎ
○物書きを 半分仕事の ようにしてる こんな生活も 嫌いではない
○電線に 止まる小鳥の 数が増え いつの間にやら 数十羽にも
○あと二つ 時間は残り 二回り やっつけ短歌 とりあえず書く
○終いには 詠むこと無くて こまりはて こんな散文 代わりに書いてる


4日目【2021/01/13】

○立派です たくさん勉強 した あなた 歌人の短歌 詠んでいるから
○悩むより とりあえず書く 潔さ 私は歌人で ないからできる
○これは凄い 書くだけ書いて知らんぷり 知ったかぶりのクソリプだらけ
○クソリパー SNSの 質落とす でも本人たち 気づいていない 
○SNS こんなんだけど 楽しいね 減らないわけだよ ユーザーの数
○「変顔!」と 真顔の人を 笑ったら 馬鹿にしてると 即 怒られた
○ひどすぎて 笑う気なんて 起こらない 自分の詩作 これっぽっちも
○あまりにも 好き勝手過ぎる 友捨てて 新しい友 作り始める  
○ネットでは 友達作りも ネット的 友が友呼び 網の目状態
○悲しいね 希薄なつながり とも知らず 絆と呼んで いる私たち


5日目【2021/01/14】

○よく晴れて 昨日の雪が 嘘のよう 関東地方の 今日は冬晴れ 
○昨夜から 痛みだしたよ 親知らず 歯医者行くのも 自粛するのか
○図書館の 本を借りたは いいけれど 気づけば既に 今日が返す日
○痒くって 至るところを 掻いてみる かゆみ止めなど 塗るまでないが
○暖房費 ばかにならない 1ヶ月 振替料金 多く 驚く
○マスクして うがい手洗い しっかりと 風邪や病気を 予防するため
○日中の 眠気 びっくり 飛び起きる 急に目覚めて あくびも忘れる
○時間帯 色々変えて 詩作する 昼間やったり 夜中やったり
○嫌なもの できるならこう 思いたい ここに見えてる ものは幻
○あいうえお 五十音順に 並べると 出席番号 後ろばっかり 

6日目【2021/01/15】

○気になって 夜中突然 目が覚める ブログ開いて 入力開始 
○この時刻 丑三つ時と 呼ばれてる こんな時間は 寝たほうがいい
○どうしても やっておきたい ことならば 早め早めに 取り掛かるべき
○朝六時 過ぎてようやく 朝日出る 放射冷却で やる気 冷却 
○ともすると これが自分の 力かと ふっとため息 ついてる場合か
○早くしろ 早くしろよと急かされて 作っているよう このアクティビティ
○あと三分 ひとつあたりを 計算し 一分足らずで 残りも作る
○鬼トレも ここまでくると 神のワザ 何が何だか わからなくなる
○いけそうだ なんとか間に合いそうだよな ちょっと安心?してる場合か
○振り返る 昨日が五回目 十回まで 残り半分 大丈夫かな?

7日目【2021/01/16】

○冬空に 鳥たちの飛ぶ 影数多 日は眩しくて 翼輝く
○渡り鳥 今年は数が いつもより 何故か多いと 感じ眺める
○カーテンの ひだに日差しが 折れ折れとストライプ作る 午後二時近く
○換気時に 窓を開ければ すがすがしい 風が窓から 体清める  
○今思う 人のふり見て 顧みて 我が身は穢れ なき体だと
○昼休み 何気なく見た 窓の外 見覚えのある 男女連れ合い
○以前から 怪しいなとは 思ってた あのことあいつ こそこそしてて 
○あれは多分 真っ昼間から よろしくと 二人仲良く 職場恋愛 
○こんなこと 口が裂けても 言えません 私そうです 平和主義です
○あなたもね こういうことにしてください聞かなかったし知らなかったと

8日目【2021/01/17】

○柑橘類 みかん・伊予柑 ポンカンも ビタミンCは 僕らの味方
○水分も ビタミン類も 豊富だね みかんポンカン 冬の果物   
○いつまでもあると思うな っていうけどね この歳になっても親は頼れる
○気づいたら自分も親になっていた いずれ そしたら 子どもに頼ろう
○和歌・若夜 ばかばか若夜 あほ若夜 若夜ばかばか バカ馬鹿な僕? 
○小さいな 大きいなとか 競り合って 草背比べ 冬の園庭
○イヌツゲの 小さな葉にも つく霜の ほの白い葉見て 寒さ一際
○冬本番 車のフロント 霜でなく 厚く凍って 大寒近し   
○一月も 厳寒堪える 慰みに 春遠からじの 気配を探す
○日中は 晴れているなら 暖かさ 感じる窓辺 日向ぼこする

9日目【2021/01/18】

○ごくまれに 歌人ですかと 聞かれるが 短歌ばかりを 詠んではいない
○詩を書きます そうです私 詩人です 死人や四神じゃ ありませんから
○曇り空 天気いいって 言ったのに 朝の予報が なんか嘘つき 
○星占い 今日の一位は 何座かな 僕はビリのが 運がいいけど 
○何しても すっとこどっこい 抜けている 笑わせ上手は抜け目ないけど
○「いい加減」言いなおしたよ「良い加減」イメージアップしてないけどね
○寒い部屋 ため息一つ ついてみた いつになったら 外 出歩ける?
○轟々と空に響いてる でかい音 ジャンボジェットか 自衛隊機か
○腹減った 朝飯控えたからかなあ 見れば正午の 時計の知らせ 
○さあ終わり 今からランチタイムだが ランチを休む お店急増

10日目【2021/01/19】

○ここに来て 眠いぞ眠い 詠うのは 眠ってスッキリ してからがいい
○眩しくて 天気いい日は 窓ガラス 手のひらかざし 青い空 見る
○口笛を 吹いて仕事を やってみる 嫌なこと無理して やる時の癖 
○借りてきた「奥の細道」読んでみた 五七五の 勉強も兼ねて 
○最近の 自由短歌は 音数を 守らないもの 結構多いな
○現代歌 三十一音 守るのは 必ずしもじゃ ないってことね 
○歌詠みの 効率落ちる 昼下がり こっくり頭 机にぶつける 
○たまにいる 会議中マジで「起きてる?」って声をかけたくなるような人
○キーボード 叩いて入力した短歌 どんな下手でも パクってないから
○暖房の 温風なんかが 心地よく ついつい眠気に 誘われふわり

詠むこと・読むことを楽しむ

 以上、全部で100ありますが、「これはいくらなんでも…」というものばかりです。一見、時間の無駄のように思えるかもしれませんが、この活動にはとても大切な要素がいくつも含まれています。その一つが、「五七五七七のリズムを体に覚えさせる」ということです。
 短時間ですから、ゆっくり声に出して詠むなんてことができません。もちろん一々音数を確認している暇はありません。感覚でどんどん詠まなければならないし、紙に書く(あるいはキーボードで打ち込む)のも、のんびりやっていられないので、走り書き(ブラインドタッチ)です。誤字(誤変換)は後で直せますので、とりあえずは無視するとしても、一首あたり一分半(90秒)で詠んで書かなければなりません。やってみると鬼のような作業です。
 最初は、困ってしまって、苦し紛れにその時の状況を無理やり「五七五七七」っぽくして、ごまかすようなことをしがちですが、それでも、トレーニングの目的としてはOKということです。慣れてくると、その時、耳から入ってくる音、目に偶然入ったものが、まるでメッセージを伝えてくれるように、言葉が思いつくようになってきます。それまで、何でもいいので繰り返し「五七五七七」っぽく、言葉を並べて10ずつ作るんですよ。もしも1ヶ月(25日でよい)でやるなら、1日6分間で4首ずつ詠めばいいので、負担を減らしたい人は、それでもいいかもしれません。要は、「五七五七七」を短時間で集中して詠み、合計100個に到達させることです。細かいことは気にせずに、やったあとで読み直してみると、いろいろな気付きがあり、多くの学びがあります。そして、このトレーニングを終えた後に、ある変化が現れます。それは、「あれ、前よりも、なんか簡単に五七五七七のリズムで詠めるようになった気がする。」という漠然とした感覚。1日あたり、20分もかからないようなこんな練習(もしも長期間続ける場合は、1日3分で2首を毎日続けて50日間)でいいんです。
 そして、終わった後の振り返りをするとさらにいいと思います。今度は、声に出して、しっかり確認します。作っているときには気づかなかった韻律(音の響きやつながり、およびリズム感)のいいところと、ぎこちなさや違和感を感じるところがはっきりします(内容はともかくね)。それって、何なんだろうって考えて、言葉を入れ替えて試してみたり、言い換えをしてみたり、語感を歌全体に合わせてみたりなどしたくなりますね。それが、歌を詠む上で、とても大事なことだと思うんですよ。ただし、このトレーニングでは、あくまで内容やテーマは重視していませんので、実際に歌を詠むときには、テーマをしっかり設定して、どんなことを短歌にするのかを念頭に置いて詠まなければなりません。
 でも、心配しなくて大丈夫です。ここから、いきなり「題詠」という課題に取り組めば、やったことがそのまま活かせます。「題詠」と言うのは、出題者から与えられたテーマや言葉を詠み込んで短歌を作る作業です。ネットでも、こういった歌会形式のサイトが存在しています。ここで、いきなりデビューしてみてください。大丈夫です。「題」を見て、ササッと一つ詠んでみてください。そしたら、声に出してみて、「ん?」と思うところをちょちょちょいといじって作れば出来上がりです。おそらく早ければ10分くらい、のんびりでも30分ほどで一首出来上がると思います。結果は保証しませんが、自分の今の状態で多分十分な歌になっているはずです。躊躇わず、投稿してみてください。共感してくれたり、いいと思う人がいたら反応してくれます。また、反応がなくてもめげずにやってみてください。あと、やりっ放しにせずに、必ず他の人の投稿作品にも一通り目を通し、声に出しながら読んでみるといいです。きっと、さらに歌が作りやすくなっていくと思います。このやり方で、僕は上達こそはしないものの、短歌がすごく好きになりました。好きになると好循環でもっと短歌を詠もう、読もうという意欲が湧いてきます。知らないうちに、無理せず身についていくことがあって、しかも楽しいんですよ。迷って立ち止まっている人がいたら、こんな僕みたいなやり方もあるということで、参考にしてみてください。