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#忘れてはいけないこと

穏やかな日々が続いてる。

声を荒げられることもない、食事もできる。

普通の家庭。

時折、友人と名の付く人たちがやってくる
その時は、ごく自然に振舞うように言いつけられる。
それさえ守れば、何の問題もない。

時の流れとともに、私もまた身ごもりお産を迎える。

明らかに彼は、私に満足しなくなっている。

誰かに抱かれた後の私を愛するチャンスがないのだ。

若社長の妻子も里帰りを終え、自宅に戻るとあれだけ威勢のよかった
夜遊びがピタリと止んだ。妻はきっと尻に敷くのに成功したんだろう。

そして彼の趣向が変化を遂げ、暴力の後に私を愛することで何かが満たされるのを発見したようだった。

この頃には、私はもう1階で過ごすことを許されてはいなかった
家事や言われたことをこなす時のみ降りることを許されていた。
2階にある3部屋で一間が子供部屋、本来の夫婦の寝室が空き部屋になっていて、物置と化した一間が私の生活空間だった。寝るのも、食事を摂るのもその部屋だ。彼は本来客間の1階にある和室で過ごすのが常だった。

子どもが寝静まり深夜を過ぎると階段下から私を呼ぶ声が聞こえる
黙って降りていくと、彼がリビングでビールを飲んでいる。
”今日はいったい何があるんだ、、、”
それでも状況は様々だ。殴られる時もあれば、ただ愛されるだけの時もある。朝までただ謝罪を求められ土下座する時もある。さて、今日は、、、

和室に敷かれた布団に目をやり「裸になって待ってて」と一言。
正直、ホッとした。SEXだけで終わるのか、、、。よかった。

人間の性的趣向とは様々で、それは決して相手が同等に快楽を感じているか否かは趣向に対し主導権を握る者にとっては重要ではない。

彼にとって私のどの部分が性的趣向を満たすのか。
セクシーな下着でもなければ、映画のようなロマンティックなムードでもない。すべては彼の脳内で処理されるのだ。私が誰かに抱かれている姿。
そして今夜のように、失神する寸前まで首を絞め苦しむ姿を見て快感を得るのだ。

こんな毎日が次第に私の心を蝕んで、私から夜を遠ざける。
眠れない。浅い眠りは、彼の階段を上がる微かな足音で目が覚める。
”しまった、、、呼んだ声が聞こえなかった、、、”
ドアが開く。
「ごめんなさ、、、」
髪を鷲掴みにされ下に降ろされていく。
もう後は嵐が過ぎるのを待つだけだ。

信じられないかもしれないが、こんな生活が数年と続く。

子どもたちは公園を走り回る年頃になり
私は18歳を迎え、実家の母にとって重要な手当の役割を終え
無事、戸籍が解放された。そしてめでたく彼自身も異国での婚姻状態を破棄し入籍を果たすのだ。(#歪 参照)

入籍したことによって彼は少し安心感を得たのか
徐々にだが私も普通に生活できるようになっていった。
交友関係などはそれこそなかったが、普通に笑い合える日もあったし
一緒に眠るようにもなった。
そして以前よりは優しく愛されるようにもなった。
そう、普通の夫婦になるために少し時間が必要だっただけ。

しかし人間は忘れる生き物だ。いとも簡単に。
あれだけ苦行を強いられていたはずなのに。

ある日、彼が早朝から子供たちを預けに出掛けた。
てっきり久々にデートにでも連れて行ってくてるのかと期待したが
来客を連れ帰って来た。
なんと行きつけのフィリピンパブの黒子だ。
”まさか自宅にまで、、、”

完全に油断していた。彼にとってあの趣向は済んだものだとばかり思っていたのに。
和気あいあいと夕飯の準備を済ませ、皆が心地良く酔いが回った頃
彼が口を開いた。「一人選べ」こんな大富豪みたいな遊び方があるのか?
「そんなことできない、、、」すると3人いた彼らの中から1人選び
私と寝るように指示をした。少し驚いてはいたがこの彼は恐らく根っから遊び人だろう。2階へ上がり、ダメもとで聞いてみた”寝たフリをしてもらえないか?”と、すると「旦那さんが許可してるなら楽しめばいいじゃん」
交渉していると彼が足音を忍ばせ上がって来た。
「何してる。始めないのか?」
もう、やるしかない。

そして始まると、満足そうにドアが閉まり
私はただ行為が終わるのを待った。

しばらくするとタクシーが自宅に着けられ
彼らは帰路についた。

そして、ここから彼との時間が始まる。
いつもと同じように、初めて彼を裏切ったあのラーメン屋の出来事から始まり、私を責め続け、彼がいなければ生きる資格さえないのだと教えられるのだ。そして私のすべてが彼の所有物であることを認知させる。そして身体の隅々まで愛してくれる。

私は間もなく二十歳を迎えようとしている。

大きな変化がまた、訪れようともしていた。

本当の地獄の日々が待ち受けている。


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