物語「星のシナリオ」 -21-
〜過去世との再会〜
「あー痛っ痛い、先生」
「大丈夫、この程度ならすぐ治るよ」
「しばらく運動禁止?」
「そうだね。その方が身体も元気になることに専念できるよ」
「あー退屈だな」
「たまには良いよ。身体もメンテナンスするのにちょうど良い。それに…」
「それに?」
「おばあちゃんから聞いてるよ。今いろいろ人生の転機を迎えてるんだってね」
「あ、いや…。そんな大げさなもんじゃないけど。いや、大きな転機なのかな」
「おもしろいんだ。そうやって、魂が大きな目覚めを体験していく時なんかはさ、身体もそれに合わせて修正するように、強制的に休まされたり、古いものが浮かんで来て一時的に体調不良になったりするもんだよ」
「ボクも強制的に休まされてるってこと?」
「急ぐな。大丈夫だから、立ち止まって足元をよく確認してごらん。そんな、
身体からのメッセージかも」
「ふー。急ぐなって…」
学校で足を傷めたボクは、おばあちゃんの紹介でこの治療室にやって来た。
おばあちゃんの、古くからの知人である先生は、この前の満月の宴の日もあの場にいたらしいけど、顔を合わせるのは初めてだった。
「先生いつからこの仕事してるの?」
「今年で十三年になるかな」
「ボクと同じ年なんだね!」
「そうだよ。それも、同じ9月生まれだ」
「え?そうなの?」
「きみが生まれて来た日のことを覚えてるよ。なんせ、おばあちゃんもおじい
ちゃんも、それはそれは楽しみにしていたからね。実は生まれたばかりのきみを抱っこさせてもらったこともあるんだよ」
「えー。そうだったんだ。そんなに近くにいたのに、今まで知らなかったなんて」
「まあね。でも、時期がくれば出逢う予定だったから」
「え?ボクがケガするのを予言してたってこと?」
「えー?あはは、そうじゃないよ。まあ確かに可能性としてきみがここに来る
シナリオが有力だったかもしれないけどね」
ん?なんだか、頭で理解できるような話じゃなくなってきた。星の世界へ行って以来、いろんなことがありすぎて、正直なところ頭の中は混乱していた。
「ふー。なんかさ、そう。大きな転機なのかもしれないんだけど」
「急ぐな。大丈夫だから立ち止まって足元をよく確認してごらん」
「うん」
「今日のところはこれでよし。また、数日したら診せに来てよ。それまでは無理しないこと」
「はい」
「これからちょうどおばあちゃんの家に行くから、送ってくよ」
「今日も満月?」
「ああ、そうだよ。宴だ宴!車用意するから、表で待てって」
はー。なんか、安心したのか…一気に眠くなってきた。ボクはぼんやりと空を眺め、満月を確認して、それから…。それから車に揺られるまま眠ってしまったみたいだった。
心地良い音楽が流れている中…。夢を見ていた。
つづく
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