吉川

ただの美術大学生です。

吉川

ただの美術大学生です。

最近の記事

消さないで.m4a

日中の暑さが和らいで、辺りは薄暗くなっていた。 玄関は靴でいっぱいだった。 大好きな場所にいるはずなのに、 なんだか落ち着かなくて。 賑やかな声から逃げるように、私は外に出た。 私は多分どちらかと言えば愉快だ。 それは間違いなく母からの遺伝で。 そんな母の愉快さは、間違いなく祖母からのものだった。 私が物心ついた頃から透析していた祖母。 決して体は強くなかった。 腕にはいつも透析の痕跡があった。 薬も欠かさず飲んでいた。 それでも私よりもパワフルで、働き者で、 笑い声の絶

    • 暑くなると

      家の中に、随分血を蓄えていそうな蚊。 足に吸われた痕跡。 「お前か〜…」 母が容赦なくバチンバチン 追い込んでいくのを眺めていました。 重そうな身体で天井高くに逃げていって。 またどこかに消えました。 明日にはもう一個、二個 私の身体に赤く跡をつけていくんだろうな。 痒い痒い。 ちょっと触れただけで死なないで。 私が悪いみたいだから。 去年の五月末、メモに書き残していた言葉。 蚊を見ると、思い出す祖母の記憶がある。 会いたいなぁ…。

      • 10行と3分

        九州に住む祖父母に手紙を出した。 写真展をやったこと、体調に気をつけてほしい、 時間を見つけて会いに行く、 そんな旨を書いた手紙と、 先日開いた写真展の様子とお気に入りの写真を 数枚添えて送った。 数週間前、家族が祖父母の家に 顔を出しに行った時、自分が用事で行けなかったこと、 それを残念に思っていることも忘れずに書いた。 1枚の手紙と数枚の写真。 10行のLINEが届いた。8個も絵文字をつけて。 改行も変換もぎこちなかったはずの文面が、 今では可愛らしく

        • それはそれは濃ゆい3日間で

          初めての展示会。 開催を決めてから、搬出までの間 とにかく自身と向き合い続けた展示会でした。 『言葉』についての感想を多くもらったことが 今回の展示での一番の収穫だったように思います。 自分では気づけない自分の在り方を見つけられたようで すごく意味のある時間でした。ワクワクしました。 足を運んでくださった皆さん、ありがとうございました。

        消さないで.m4a