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胸椎の選択的アプローチ戦略

一般的な不良姿勢で最も散見されるのが、肩関節の位置が前方に変位したいわゆる巻き肩(foward humeral head)、頭部前方変位(foward head posture)、胸椎後弯が伴ったスウェイバック姿勢であることに異論はないでしょう。

スウェイバック姿勢改善に対するアプローチとして、胸椎の可動性に関しては誰しもが取り組むはずですが、なかなか上手く指導できないケースも沢山あるのではないでしょうか?

広背筋とスウェイバック姿勢

なぜスウェイバック姿勢が常態化してしまっているのか?もちろん感覚統合に問題が生じているからでしょうが、実際の現場レベルで落とし込むと、その中でも着目すべきは広背筋のタイトネスだと筆者は考えております。


スポーツ動作を中心にダイナミックに幅広く力強く活躍し、プル動作全般の主たる力源としている広背筋です。日常生活動作においても、普段の何気ない歩行や走動作でも胸腰筋膜を介し腕を後にスイングすることに寄与するのもまた広背筋です。


この上肢の主動作筋といっても過言ではない広背筋ですが、その解剖学的特徴として、肩関節〜胸腰筋膜〜腰部に付着する多関節筋であることからも、タイトネス(柔軟性の欠如)があることで、肩関節〜腰部に至る全ての分節構造に影響を及ぼします。

特に腰部への伸展方向への張力から、胸椎後弯および腰椎前弯を引き起こし、胸郭のポジション、脊柱の生理的湾曲の破綻を意味します。


広背筋の過収縮の弊害

今回のテーマでもある胸椎の可動性(特に伸展機能)の獲得における広背筋のタイトネスは先述の解説だけでも、十分にご理解いただけるかと思います。

胸椎伸展機能の獲得には、当然ながら胸椎伸展機能を有する深層筋の賦活は欠かせないファクターとなりますが、この広背筋のタイトネスが生じると、期待するようなエクササイズの効果が見込めません。

人体の特徴として多関節筋は感覚リッチな筋でもあります。

つまり筋の収縮感や伸長感を比較的容易に得られるということです。

胸椎伸展の選択的アプローチとして、胸椎伸展と肩甲骨下制を主目的とした、シェイプザヘッドに近しいエクササイズを個人的に多用しますが、ただ見様見真似するだけでは、ほとんどが広背筋の過収縮に伴い、僧帽筋上部で代償します。

もちろん広背筋以外の要因も考えられはしますが…

まずは広背筋がタイトネスですと、脊柱伸展運動時、腰椎(特に下位腰椎L4/L5)の伸展が過剰となり、分節運動制御不全が生じることとなりますので、広背筋がタイトネスが存在する時点で脊柱伸展の制御はまず不可能であるということを理解しておきましょう。

このエクササイズの代償の評価、考察は後述でさらに詳しく解説します。


広背筋のストレッチ

広背筋のストレッチ方法として最も効果的なものは何でしょうか?

先述のように広背筋は、上肢〜胸腰筋膜を介して大臀筋に至っており、肩関節〜股関節後面までを覆うことからも、広背筋のみではなく、大臀筋を含めた「広背筋ー胸腰筋膜ー大臀筋複合帯」を包括的にストレッチすることが有用となることが考えられます。

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