スピッツの伝説のLIVE映像に想う

2013年9月14日 に横浜の赤レンガパークにて開催された一夜限りの野外LIVE、『スピッツ 横浜サンセット2013』がyoutubeで無料公開されていることを佐久間さんのオールナイトニッポンで知った。劇場公開されたが、商品化されず、ファンから販売を熱望されていた作品とのこと。スピッツ、懐かしいなと思い、観てみることに。

スピッツがデビューしたのが1995年、デビュー曲の『ロビンソン』は徐々に高くなるキーが特徴的で、カラオケで苦しくなりながら歌いきるのが当時流行っていたような記憶がある。私にとっては上手い下手はさておいて、ぎりぎりリーチする音域だったこと、そして密かに女子ウケがよかったので、カラオケのレパートリーで重宝した。デビューしてからスマッシュヒットを連発して、共有できる曲も多かったのもありがたかった。今回の横浜サンセットLIVEでは披露されなかったが、スピッツといえばロビンソンの印象が強い。

もう1曲、そのLIVEで選曲されなかった『空も飛べるはず』も印象深い作品。好きだったけど視聴率が芳しくなかった『白線流し』というドラマの主題歌になった。淡い日々を送る高校生の青春物語のテイストにマッチしていた。ドラマの視聴率は高くはなかったものの、この曲自体はオリオンチャート1位を獲得、ミリオンセラーになった。セールスというものは分からないものだ。

話を横浜サンセットLIVEに戻す。映像はスピッツのメンバーの登場を待つ観客の手拍子、会場を覆う夕暮れ時の雲、海を渡る船、照明が入っていないステージの様子から始まる。やがてステージに上がるメンバーに歓声が上がり、ステージにもライトが照らされる。オープニングは『恋の歌うた』、ボーカルの草野マサムネさんの特徴的な甘い歌声が会場に鳴り響いていく。その一連の過程が素晴らしく、現地での空気感が伝わってくるような感覚を覚える。深夜、少しだけと思い観始めてみたが、結局は最後まで鑑賞。外から新聞配達のバイクの音が聞こえてきた。スピッツの醸す世界観にすっかり引き込まれてしまった。youtubeのコメント欄にはファンの愛のある言葉で溢れている。伝説のLIVEと呼ばれる所以を理解した。

緊急事態という異様な事態が解除され、日常を取り戻そうと各地が動き始めている。エンターテイメントはまだまだ厳しい環境は続きそうだ。スポーツもまたしかり。しかし、いかなる文化も生きていくうえで必要不可欠なエッセンスだ。いずれ取り戻したい。今回の映像解禁は、そんな環境を取り戻したいと願う人たちへのスピッツからの贈り物だと思う。音楽のちからは素晴らしい、そう気づかされた。

また一方で、思い知らされたのが自分は思った以上に「密」という言葉に感覚を狂わされてしまっているということ。LIVE映像の、会場に密集する観客に何とも言い難い違和感を覚えてしまう。いいとか悪いとかではない、単純に「多いな」っていう感じ。たった1か月ぐらいの異様事態だったが、自分の中で異変が起きているようだ。あのスピッツのライブのような光景が当たり前になる頃までに、自分の感覚も戻ってくればいいのだか。

明るい気持ちになりきれない中で、スピッツの独特で温かい音楽でひととき癒された。以前、会社の先輩が「年を取ると音楽を聴かなくなる」と言っていた。当時はそんなものなのかなと思っていたが、もれなく自分もそういう年の取り方をしてしまっていた。スピッツは2013年当時『小さな生き物』というアルバムを発表している。自粛から営業を再開したショップにでも行って購入しようかな、と思う。自分の生活に音楽を取り入れ直すために。


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