じさつとたましい15

「別にろうそくとか、火消しちゃえばよくない??
みんな移動で疲れてるし、寝ようよ」

お通夜が終わり、翌日まで誰がろうそくの番を
するかのか揉めていた。

寝ずの番と言って、故人が悪霊に取り憑かれず
安全に極楽浄土に行くことができるよう
一晩ろうそくの火を絶やさないでおくのだそうだ。

Aにはとことん迷子になっていただいて
構わないと思った。みんなで火を消して
寝てしまいたかった。

結局、私が寝ずの番をすることになった。
長距離移動をした両親を寝かせないのは、
さすがに可哀想だったし、
迷子になっては可哀想と思っている両親もかわいそうだった。

流石に一晩Aの横にいるのは、気持ちが悪いので、
隣のリビングから時々覗きに行くことにした。

遺体Aのために、部屋はかなり涼しかった。

その冷気を足が感じ取るたび、
どことなく心地よさを感じていた。

眠気は全く来なかった。

なんだかんだアドレナリンがぶんぶんに
出ている感じがした。

犬はやっぱり預けなければよかった。

一晩抱いてやって、そして犬も私の話し相手に
なってくれたらよかったのに。

前島からのLINEは未読無視をしていた。

お腹が空いたので、お茶漬けを食べた。

途中で父親が起きてきた。
大きい目が、加齢でくぼみ、さらに疲労と
夜の眠気で、ぎょろぎょろとしていた。

「おい。代わろうか。お前も寝た方がいいだろう」

そんなぎょろぎょろの目で言われても、仕方がない。

一晩続けるから寝なよと言っておいた。

父がA語りを始めたので、
まあまあそれはいいから寝なよと言っておいた。

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