じさつとたましい④


なんやかんや乗り継ぎが上手くいかなかった。

午前中には出発したのに、
地元に着くと18時前だった。

途中、ふとAの家に寄ってみようかと思った。

既読はつかないままだった。

あいつ、意味わかんないLINEしてきて、
なんなわけ。

タクシーを捕まえようと、ロータリーに
出ると、高校の同級生と出会した。

「およっ、すえむつじゃん」

ひょろひょろメガネの前島だ。

「まっ、まえじまー!!!」

私は歓喜した。前島は私の不登校仲間だ。

一緒に保健室登校もしたし、
サボって海なんかにもいった。

なんやかんや前島はちゃんとした奴で、
高校を出た後、市役所で働いている。

連絡は定期的に取っていたが、
今回の帰省では会うつもりがなかったため
伝えていなかった。

「なんだよ、帰ってくるなら言えよなー」

「ごめんごめん、本でも読んで適当に
また大学に戻ろうと思ってたんだ」

仕事帰りか、前島はスーツ姿だった。

「そうかあ、相変わらずだなー」

前島は、なんとなく自閉的な私を
否定しない奴だった。

まあ、前島だって不登校だったんだから、
人とはちょっと違う道を知っている身だとも
言えるのかもしれない。

前島は、お父さんもお兄ちゃんも
お医者さんの家系の子どもだった。

本人も勉強が好きで、全国でもトップの
中学校に入ろうとしていたらしいけど、
どうも上手くいかなかった。

前島はちゃんとし奴だから、
地元の中学でも最初は学級委員とか
選挙会委員とかしていたけど、
ある日の体育の時間に、ドッジボールの
球が鼻に当たって、何かがぶっ壊れたらしい。

反射的に出る涙を、
呆然と出し続けた翌日には
もう布団から出られなくなっていた。

「すえむつ、この後暇?茶しばかね?」

「おっ、いくいく、ラーメン食おうぜ〜」

中学時代何回か2人でラーメンを食べた。
もやしのナムルが食べ放題の店。

今回の地元訪問で食べるとは思わなかった。

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