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中華そばを食べに行った話 ②

前回の話

 夏休みは何かと忙しく続きが遅くなってしまった。
 今思えば前回は中華そばの要素ほぼほぼないからややタイトル詐欺なのでは……?

海越えれば日差し 

 タラップを降りてターミナルを抜け、輪行を解除できそうな場所を探す。丁度バス停前の生垣あたりが使えそうなのでそうする。
 横型輪行は初めてだったため、輪行解除も初めてである。さりとて何が違うからと言われると特に違いは少ない。なのでさっさと終わらせてA面の解除も手伝い、2人分の輪行袋をリュックに詰め込む。まず先に向かうのは徳島駅の駐輪場である。

 ロードバイクに跨り、船の中で見た地図を思い出しながら、バス道を目指す。和歌山に比べて交通量はやや少ないように感じるも、途中のイオンモールあたりからは流石に多くなり始める。そのため、新町川沿に整備されている歩道を使うこととした。自動車は通行人に勝るのである。
 しかし暑い。今年初めて本土を通った台風4号は996hPaと軟弱で、梅雨に足りなかった水分を全くもたらさないまま、昨日の夜半にこの辺りを通り抜けている。そして、そのまま雲も連れ去ったためか日差しを遮るものがなく、ジリジリと我々を焼いていく。サングラスを持ってきて正解だったな、などと考えているとバス道に出た。

 そのま走り国道11号→318号と抜けていく。今調べてみると、11号の起点が近くにあったようで、写真を撮りに行けばよかったと後悔している。318号を走りつつもそのままJRを潜らず徳島城内に少し入り、わざわざ跨線橋を使うことにする。なぜなら「日本で唯一、電車が/」を確認するためである。
 徳島はその全土に渡って電車が走っておらず、全て気動車なのである。そのため、県の中枢駅ですら、架線設備は存在していない。そんな蘊蓄をA面に話しつつ跨線橋を越え、少し走って駐輪場へと辿り着いた。

線路の上に架線設備が無い

 地下駐輪場は当然日差しもなく、ある程度空調も効いていて快適そのものである。しかし、ロードバイクを立てかけ、かつ地球ロックを出来るような場所はなかなか見当たらない。どうにか柵を見つけて2台まとめてワイヤー錠をかける。ついでにヘルメットとグローブもブラケットにかけて置く。どうぞ盗まれませんように。涼しい場所に居る内に、A面と今後のプランを話す。とりあえずはラーメンを食べ、時間が有れば眉山を登ろう、と言ったところである。後にこのノープランっぷりが我々に牙を剥くとも知らずに。

 階段を登ると、そこには猛烈な日差しが待ち受ける。バスターミナル側なので、幾らかの日除けがあるとは言え、焼け石に水だ。トボトボと日陰を探して歩く。目指すは銀座一福の本店である。

お祭りエナジー 

 時に、今回の旅の目的は徳島ラーメンではあるがそれだけでは無い。何を隠そう、AwaRiseもそうである。
 AwaRiseとは、徳島コーヒーが出しているエナジードリンクである。何が凄いかと言うと、エナドリらしからぬ美味しさと、そのコンセプトである。

アワライズは興奮と熱気の渦に包まれる阿波踊りで最高のパフォーマンスを発揮したい時のために開発しました。
徳島コーヒー 公式ホームページより引用
https://www.tokushima-coffee.co.jp/asp/newsitem.asp?nw_id=960

 いくらなんでも商品コンセプトがニッチすぎる。阿波踊り限定のエナドリ。こんなのを飲むのは徳島県民くらいではなかろうか。
 まぁ、吉野家系列の「はなまるうどん」だって事業計画を立てて専門家に診てもらった時は「いや、そんなにうどん食べるの香川県民くらいですよ」とか言われたのが今や全国チェーンなんだし、このAwaRiseも頑張ったらもっと流行るんじゃなかろうか。

 そんなAwaRiseではあるが、徳島市内では自販機で売っていることもあるので探しながら店の方へ進む。途中、A面がしんどさを訴える。かなり末端があったかくなっていて汗もかいているので、アクエリアスを買い分け合う。そうしながら歩いていると、とうとう売っている自販機があったので迷わず購入。すだちの爽やかさを分かち合いながら、店の位置を再確認。一本隣の筋まで来ている。とっとと飲み切ってラーメンへありつくこととしよう。

昔ながらの中華そば屋

 向かった店は「銀座一福 本店」である。市内にあり、駐輪場から徒歩で行ける場所だったのでそうした。本当は南の小松島市にある「岡本中華 小松島本店」に行きたかったのだが、距離がややあること、ロードサイド店なので混雑が予想されること、吉野川河口南部の三角州をどのルートなら自転車で通れるか考えるのが面倒だったのでやめた。
 ちなみに銀座一福の一番かっこいいと思うところはその住所である。「徳島市銀座10」がそうなのであるが、まず「銀座」だけであるところ、10番地なので分かれておらず、店が古くからそこにあったであろうことなどが伺い知れてとても良い。

 店の構えは思ったよりも小さく、なんとなく通学駅の近くにあった中華料理屋を彷彿とさせる。暖簾をくぐろうとすると、馴染みの客と思しき人がワンタンメンの持ち帰りを頼んでいた。店の歴史を感じながら入店し、店の奥へと進む。壁にはマチ☆アソビのポスターが飾られてある。反対側には短冊に書かれたメニュー。
 そうそう、これでいいんだよ。などと偉そうなことを思いながら座り、壁に張られたメニューとにらめっこ。迷った挙句、中華そばとチャーハンのセットを頼む。ちなみにA面は中華そばの単品を頼んでいた。

 さて、ここでこれを読んでいる皆さまに謝らなければならないことがいくつかある。まず1つ目は写真を撮るのを忘れたことである。何故かというとあまりにもおなかがすいていたのと、空腹を差し引いてもとても美味しそうな見た目をしていたからである。そして2つ目は、この中華そばのおいしさを語るだけの語彙を持ち合わせていないことだ。基本的には徳島ラーメンのベースは中華そばであるため、和歌山ラーメンなどと近いところはあるものの、叉焼ではなく大阪の肉吸いのような肉がのっている中華そばであった。このおいしさはぜひ現地で味わってほしい。

街をうろうろ、巻いてうおうお

 おいしい徳島ラーメンを食べ終わって街をうろうろし始める。もう本来の目的は果たしているので、ぶっちゃけこれから旅程がいくら崩壊したとしてもそこまで問題ないとはいえ、安全な時間に帰ろうと思うと、18時台のフェリーに間に合うように動かねばならない。残り時間に気を付けないとな、と思いつつも街中をうろうろしていく。

 店を出て阿波踊り会館方面へと進んでいく。小さい社を見つけて拝んでみる。名前を松平大明神というらしい。タヌキが祀られているようで、さすが四国だなぁ、と思いつつ由緒書を読む。やはり阿波狸合戦にも出てくる狸らしく、それなりにえらいポジションにいたようである。ほえー、と思いつつも次へと進む。特に何もなく新町橋通りへとたどり着く。時間があれば眉山へ、とも思っていたが、時はもう既に17:45。泣く泣く駅の方へと脚を進める。

下から見上げる眉山。ぜひ今度は上から見下ろしたい。

 新町橋通りをそのまま駅へと進むと、新町川にかかる新町橋にたどり着く。この橋の下は少し工夫があり、満潮の時には橋の下の通路と川の境にあるガラス部分から泳ぐ魚が見えるかもしれないのだ。と言いつつも干潮から満ち始めたぐらいなので当然何も見えない。おとなしく橋の上を渡って対岸へと進んでいく。

 時に大学生の時にここを通って以来ずっと気になっているのだが、橋の西側にどう見ても無線アンテナが立っている。あのサイズはそこそこの免許がないと持てないだろうに、だれが持っているのかが気になっている。まあ、A面しかアマチュア無線免許は持っていないし、開局申請もしていないのでワッチしかできないんだけどね。

 駅へとたどり着くも、友人への土産を買いそびれているので、前述したAwaRiseやら海苔やらを買い込み、無理やりリュックへと詰め込む、そして時計を見ると18時を過ぎている。ここにしてようやく気が付くのである。
「これ、今のままやとフェリー間に合わんくないか?」

 こうして怒涛の巻き取りが始まる! うおうお!

Gamble, you gatta chance to take a ferry.

 なんにせよ急いで地下駐輪場に戻り鍵を外す。移動に30分かかるとすると輪行準備にそれほど時間はかけられない。となると、いかに移動時間を減らすかを考える他ない。惜しくも帰宅ラッシュの時間帯、となると川沿いの遊歩道を使って進んでいくのが最善である。
 車通りの多い国道を通り抜け、あまりスピードは出せないものの信号のない遊歩道を活用し、何とか15分前に港にたどり着く。急いで輪行して船に乗り込み、何とか平坦な場所に自転車を置く。
 今回乗り込んだのは南海フェリーの新造船「あい」である。新しいだけあって船内は綺麗であり、バリアフリーの概念も行き届いており段差も少ない。間に合ったことにほっと一息をつく。
 甲板に出て出航の動きを眺める。徳島側はクイックリリースフックになっているため、人はあまりいない。手を振る人がいないのでややさみしいが、安全面ではこちらの方が良いため致し方あるまい。そのままバウスラスターで横に移動しつつ推力と舵を入れて舳先を海へと向ける。

係留索の先の黄色と緑のものがクイックリリースフックである

 こういう大きい船の動きは大変だろうな、などと思う。昔機会があって2度ほど練習船に乗ったことがあった。その船で離岸の際に操舵室に入らせてもらったことがあるが、船長が事細かに指示を出していた。その船に比べて6倍近い総トン数のため、自動化がいくら進んでいるとは言え、慣性の掛りや舵が効くまで時間がかかるだろう。大変なんだろうな、などと思いながら船室に帰る。
 そうして日焼け疲れしたA面を寝かしつけ、その間にiPadを借りてちまちま書き始めたのが前回の記事の頭である。

 この後の話は対して面白くないので割愛する。せいぜい港から家に帰る途中、橋のジョイントに殺されかけたぐらいのことでしかない。

 なんにせよ、フェリーと自転車の相性はとてもいい。寝ている内に着く、というところがポイントが高い。今後も様々な航路を開拓したいものである。


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