見出し画像

紀伊半島南下計画 4回目(1)

 皆さまは紀勢線を走るJR西日本の特急列車「くろしお」をご存じだろうか。京都駅から新宮駅までを結ぶこともある特急列車である。
 2022年11月2日。そのくろしおの白浜行き最終便に2人して揺られながら、ぼんやりと南中を過ぎた上弦の月を見ていた。今夜はこの月を肴にしながらナイトライドをする。といいつつも上弦の月は沈むのが早い。どちらかというと星空を肴にすることになるのだろう。

 くろしおに揺られるまでも色々とあった。
 気象庁の予報を事前に見ていた限りでは、紀南の最低気温は15度を切るようではあるものの、ヤフーでは夜明け前の一時間程度しか15度を切らない予報である。どちらを信じるか悩んだが、悩んだ末にヤフーを信じて冬用長袖インナーと半袖のジャージを重ね着することにした。
 しかし、家を出た瞬間に思ったことは「寒い」。うっかり紀南の天気ばかりを見ていて、自分が住んでいる場所をおろそかにしていた。安全のために長袖ジャージに着替えるか否か。そんな相談をしつつ、結局予報を信じてこのままの姿で行くことにした。最悪リュックに忍ばせたウィンドブレーカーを羽織ればいいだろう、と。そして、それはついぞリュックの外へと出されることは無かった。

白浜駅と激おこパンダ

 前回走った時は、この駅に夜中の3時半頃に到着した。GWだというのに寒く、コーンクリームスープを啜りうち震えていた事を覚えている。タクシー乗り場のベンチで凍えていると、駅の掃除のおばさまに「なんやったら多機能トイレに入ってても大丈夫やで」と優しく声をかけていただいたくらいに、寒さに打ち震えていた。

 今回は23時前に白浜へと着いた。
 大阪方面から白浜への終電は乗ってきたこのくろしおである。そのためにそれなりの人数が白浜で降りていき、車内は空っぽとなる。まぁ、終点なので当たり前なのだが。ちなみに乗ってきた車体はパンダくろしおの「Smileアドベンチャートレイン」である。先頭車両近くで降りたのでパンダ顔を撮りに行ったら、このまま折り返すためかテールライトが付いていた。丁度パンダの眼の部分が赤く光る仕様になっているため、この状態を勝手に「激おこパンダ」と呼んでいる。

かわいい。

 激おこパンダを何枚か撮って退場する。
 あの時に鍵がかかっていて、心底嘆いた待合室を借りて輪行を解除する。空調の利いた室内で輪行を解除できるとはなんと贅沢なことだろうか。ついでに2Lペットで買った水をボトルに移す。水の量はA面650ml、B面950ml+550mlである。それほど水を消費することは無いだろうが、今回走る区間は今まで走ってきた区間に比べ、人口が少ない。それゆえにコンビニが少なく、補給に関して難点が多い。そのため、アップダウンの重りになることを承知で多めに持っていく。
 組み立て終わって外へ出るとやや寒いものの、アウターを変えてこなくてもよかった程度である。A面と交代でトイレに行く。水の重さに対するせめてもの軽量化である。きっと人はこれを「無駄なあがき」と呼ぶのだろうが、大事なのは気持ちなのである。

 23時13分。白浜駅に別れを告げる。目指すは本州最南端、串本は潮岬である。あわよくば日の出も見られれば、と思いつつ80Km近い旅路に漕ぎ出した。


よかったらツイッターもフォローしてください☺️