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遺書を書こうよ  新見正則


本邦初のセカンドオピニオン外来

オックスフォード大学の5年間の留学から帰国して、一時的に時間にちょっと余裕ができました。そんなとき、本邦初のセカンドオピニオン外来を担当することになりました。

がんのひとと死を語る

僕は、そこで毎週10人以上の方を診察しました。多くはがんの患者さんですが、患者さんの家族と一緒にお話をうかがいます。60分近い時間があると、いろいろなお話を聞くことができます。日頃は立ち入らない深い話もできるようになります。そんなとき、患者さんに「遺書を書こう!」とお薦めするようになりました。
こんなことは、3分診療の通常の医療体制ではまったくできませんよ。

病院で遺書の話をしてみる

「遺書を書こう」という話ができる人間関係を構築するには相当な時間がかかります。病院で「遺書を書こう」なんて言ったら患者さんはビックリですよ。でもそんな発言をしても怒鳴られたことはありません。むしろ遺書を書こうと告げると、笑いがこぼれることが多いのです。

外来で信頼関係を深める

こんな話はある程度の人生経験を積んだ後できるようになりました。そして「遺書を書こう」というメッセージはひとつの外来の作戦で、でもそれを有効に使うと本当に外来は上手く回りますし、患者さんとの信頼関係も深まります。

母が他界してからは、「遺書を書こう」ということにますます抵抗がなくなりました。「母が死んで次は僕の番だからね」と言い添えれば、誰もが「遺書を書こう」という僕の言葉を素直な気持ちで聞いてくれます。でも、後日改めて確認すると、実際に遺書の書く人は半分ぐらいみたいです。

遺書は自筆で書けば有効だよ

ちなみに、法的に有効な遺言書は、すべて自筆で書いて、署名と日付が超大切です。そして三文判でいいのでハンコを押してください。そして気が変われば、新しい日付のものを書けば、古い日付のものは効力がなくなります。特段公証役場に足を運ぶとか、弁護士さんのお世話になる必要もありあません。

50を過ぎると死が身近になってくる

若い頃は、ちょっと遠回りをしたとか、浪人したとか、留年したとか、1年から10年の差が妙に気になります。でも50歳を過ぎたぐらいから、今度はサバイバルゲームです。誰が自分の人生を生き抜くかの勝負です。その勝敗の行方は神のみぞ知るです。

生きているいまを大切に

遺書を書こうと思うと、いろいろなことを真剣に考えるようになります。日々一生懸命生きるようになります。そして日常の家族の会話にも、家族の死の問題が登場するようになります。

とりあえずは身近な願いでも書いておこう


人に遺言書を薦めている僕ですが、まだ僕は自筆、サイン、日付、三文判の遺言を書いていません。わが家では日頃から死について話しているので敢えて文書にはしていないという感じです。家族は僕の意思を、人生の価値観を知っていてくれるからです。

どんなお葬式を望むか、誰に知らせて欲しいか、そろそろ、そんな簡単なことでいいので文書にしようかと思っています。

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クリニックもがんばれ! 院長先生、がんばれ!


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