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スミソニアン自然史博物館(4)鉱物の多様性ある世界を知るには?
スミソニアン自然史博物館の鉱物コーナーは、鉱物学や宝石学視点を更にわかりやすくグループ分けにして展示されています。そのグ分け方がユニーク。約35万点の鉱物標本と1万点の宝石コレクションは、世界最大の収集数です。
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鉱物の多くはこの三人の方々の寄付から。左から、
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Mr.Washington A. Roebling 土木技術者で、ブルックリン橋の建設の橋梁技術者として名前を残しています。熱心な趣味として岩石や鉱物の収集。1万6千点のコレクションは息子さんに引き継がれた後にスミソニアン博物館へ寄贈されました。
Mr.Frederick A. Canfield 鉱山技師で、9千点のコレクションと5万ドルの寄付を博物館へ。
Dr. Issac Lea 出版事業者でもあり、貝殻学者、そして地質学者。淡水産貝類で複数の本も執筆、軟体動物1,842種に名前を付けました。フィラデルフィア自然科学アカデミーの会長を務め、また、アメリカ科学進歩協会の会長を務めました。
こういった方々のご寄付で、私たちは貴重な鉱物を楽しむことができるのですね。
この展示について、この博物館のキュレーターでもあるJeffrey Post 博士は2013年のGIAのインタビューでこう語っています。
「液体、熱、圧力で誕生した鉱物と宝石は、息を呑むように美しい色、形、多様性で私たちを魅了します。」これらの言葉が、スミソニアン国立自然史博物館の宝石や鉱物の展示場へ訪れるお客様を歓迎します。 訪問客は自然の芸術性と向かい合うことで、宝石が地球から美しく、しかし粗い状態で、生まれてきたことを理解するようになります。人々が「その感動的な瞬間を体験して、地球についての考え方が変わること」が目標だと彼は述べます。
鉱物を通して私たちは、地球が作る多様性ある世界観を感じることができます。全てではないですが、その見方を展示の仕方で紹介していきますね。
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上の画像は、成長時の状態の違いでグループ分けされた鉱物です。
宝石は主に地殻の岩石の中で結晶化されます。ダイヤモンドだけはマントルで生まれます。マグマが凝結したり、液体が蒸発したりする過程で、原子が規則正しく配列し結晶化します。マグマの熱気やガス、熱水、高圧力、その後ゆっくり冷却されながら育っていきます。その時の温度や成長速度など外的な状況で、結晶面を持たずに成長する場合や表面に溶解現象(エッチング)が現れるものもあります。
なぜ結晶の形は多種多様なのでしょう?
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自然界にある88種類の元素は、さまざまな大きさや特性を持つ原子で構成されており、さまざまな方法で組み合わさって結晶を形成します。地球内部の温度と圧力の大きな範囲がこの多様性に貢献しています。しかし、その多様性は無限ではありません。特定の形状やバリエーションが何度も発生します。
こちらは元素ベリリウムの宝石
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ベリリウム(Be)の宝石とその科学組成(数字は小文字)は以下の通りです。
アクアマリンやエメラルドのような緑柱石
Be3Al2Si6O18 (ベリリウムとアルミの珪酸塩鉱物)
クリソベリルBeAl2O4 (ベリリウムと酸化アルミニウム)
ユークレスBeAlSiO4(OH) (ベリリウムとケイ酸)
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上の画像の右は、白雲母と共存しているアクアマリンの結晶で、多くはペグマタイトから産出されます。左は水晶の結晶にくっ着いたアクアマリンの結晶です。どうやってくっ着いたのか、その状況を想像するのも楽しいです。
こちらのクリソベリルは、
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黄色い花びらのようでしょう?クリソベリルの結晶はお花のような形です。
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この結晶の一部が母岩に着いたのか🤔と想像したり…、展示物の前であれこれ考えてしまいます。
そしてこちらは心踊る並べ方です!
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虹色になるように鉱物が展示されています。鉱物は様々な色があって、色の起因はそれぞれですが、次のコーナーはベリルを色の違いで説明しています。
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科学組成が同じ鉱物でも、内包される不純物で色が変わります。例えば、アクアマリンは不純物としての鉄(Fe)の量で青の濃度が変わります。ベリルには黄色やピンクもあります。
エメラルドの緑色の起因はクロムです。
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その産地の特徴的な色もありますが、同じ産地でも微妙に色が違います。まさに大地のレシピ、含まれるスパイス(不純物)の匙加減ですね😌
次は、コランダム(ブルーサファイアやルビー)。その色も不純物で決まります。
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ブルーサファイアは鉄とチタンに因るもので。ルビーはクロムが色の起因になります。
展示では、動画でルビーがなぜ赤いのかを説明をしています。
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クロム原子には、黄色、紫色、緑色、および青色の光を吸収する電子があります。つまり、赤が残吸収されずそれが私たちの目に届くから赤く見えるのですね。そのクロム原子の動きも興味深いのですが、また別の機会に書ければ。
さてこちらはガーネットです。
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ガーネットは一つの宝石の名前ではなく、ケイ酸塩鉱物(ネソ珪酸塩鉱物)グループの名称です。結晶構造は同じでも化学成分が違うことで色や硬度が変わってきます。
ガーネット族の科学組成の式 X3Y2(SiO4)3または、X3Y2Si3O12
Xには、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン
Yには、鉄、アルミニウム、クロムが当てはまります。
化学成分により16種に分けられますが、宝石としては6種です。更に詳しくは過去の記事を読んで頂ければ嬉しいです。
さて、こちらは光源で色が変わる宝石
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クリソベリルの中で、光源で色が変わるものをアレキサンドライトと呼びます。これは光の波長の吸収の違い(光の選択吸収)に因るもので、アレキサンドライトに微量に存在するクロムが、白熱光やろうそくの灯では赤色が強く反応して、
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太陽光や蛍光灯だと緑色が強く現れます。これをカラーチェンジ効果と呼びます。
宝石学の中でも様々な色の起因を学ぶことはとても興味深いです。全てが解明されているわけではないですが、知ることで宝石がなぜ美しいのかと深く想いを巡らせます。
こちらは、目に見えるインクルージョンの世界です。
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鉱物の成長過程で、他の鉱物が入り込んだり生まれたりします。宝石だと10倍ルーペや顕微鏡で確認しますが、大きな鉱物は肉眼で楽しめますね。
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左上の水晶の中に存在するパイライト(黄鉄鉱)です。元々は水晶の結晶の表面に形成されていました 。その水晶の結晶が成長し続けるにつれて、パイライトの結晶が水晶にとり囲まれていきます。飲み込まれる感じでしょうか、じっくり長い年月をかけて…。
だから、インクルージョンはその鉱物が天然であるという証明にもなります。鑑別でもインクルージョンの状態を見ることが大切です。
次は素晴らしい多様性と表した展示
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地球からこんなに様々な鉱物(宝石)が産まれるのですね。その中で、
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左上にあるスピネルの結晶を見てください。スピネルの晶系は等軸晶系です。ピラミッドを上下合わせた様な八面体で、名前はラテン語で「棘」を意味するspinaに由来します。和名も尖晶石と先が尖ったイメージです。
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左上は希少石のペイン石(Painite)、1950年代初めにミャンマーのモゴックで発見された鉱物で、1956年に新種の鉱物と認められました。世界で最も希少な宝石としてギネスブックに認定されたことがあります。しばらくは世界でも数個しか確認できなかったのですが、2000年代に入ってから、以前の鑑別ではわからなかった宝石が実はペイン石であったとか、新しく鉱床も発見され、数も一気に増えました。
その下も希少石のポードレッタイト(Poudrettite)です。淡いピンクですが、9ctを超える大きさはとても希少です。1960年代にカナダのケベック州で微細な結晶として初めて発見されました。微かですが放射能が検出されるとか。
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2段目に置かれたダンブリ石(Danburite)は宮崎県産出。日本産出の鉱物とは嬉しいですね。ダンブリ石は、研磨して美しく宝石として輝くものもあり、明治初期は結晶がトパーズに似ていることからトパーズと考えられていたそうです。宮崎県土呂久鉱山や大分県尾平鉱山が代表的な産地でしたが、この地域で砒素の公害が起こり70年代以降の採掘はされていません。
左はターフェアイト(Taaffeite)、希少石です。こちらは長らくスピネルと思われていた宝石です。わずかな光の屈折形の動きで、単屈性のスピネルではなく複屈折の別の宝石だとわかりました。んで、
ちょっと自慢させて、
私のターフェアイトです。縁あって出会えました😌
この博物館は鉱物の展示だけに限らず、学べる仕掛けもたくさんあります。
結晶のモデルとか、
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同じ炭素から出来ても結晶構造の違いで硬度が全く違いますね🤔
こちらは、
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採掘現場を再現しています。
そして何より面白くて、何度も見に行ってしまったのはこちら、
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蛍光鉱物です。紫外線は可視光を発します。鉱物の中には紫外線が当たると、より高いレベルまで高められる電子を持つ原子があり、高められた電子はすぐに元のエネルギーのレベルに戻ります。その時に可視光の形でエネルギーを発します。(実はこれはルビーの中でも起こっています…上に書いたルビーの赤の理由)
展示では、数十秒ごとにUVライトを当てて、
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蛍光がアートのように美しく浮かび上がります。
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このコーナーは部屋の奥の方にあるので見逃しやすいです。是非、忘れずに!
↑スミソニアン自然史博物館のコレクション
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