ゆらゆら由来の深い底
古本喫茶シンカイ書房の由来についてよく聞かれる。
「喫茶シンカイ」と略してくれるのが呼びやすいし覚えられやすいけど、88%程度の人がシンカイのイントネーションを、万代や安牌やダンカンや坦々などの発音で言ってくるが、深海・心配・引退などのイントネーションが正しい。
「シンカイ」の由来
シンカイを片仮名にしたのはレトロでちょっとポップな印象が欲しかったのと、漢字で表記すると解釈が縛られてしまう気がして、自由度の高いカタカナを採用した。
「シンカイ」は深海・新開などの様々な解釈を皆様にお任せしている。
個人的なイメージを言うと、本を読む・海に潜る行為が似ている、あるいは全く同じ行為のように感じている。
レコードショップでレコードを1枚ずつ探す様子を「Dig(掘る)」と表し「ディグる」というスラングが存在する。
本を探したり読むのは、いくつもの物語や誰かの人生が詰まった世界に深く潜り込んでいくように感じる。
ページ数を重ねるごとに深くまで、自分の知らない世界の奥底へ沈んで行く。
どちらかというと土を掘るというよりは海の深くまで潜るイメージの方が本には強い気がしている。
何の音も聞こえない。聞かない。
海の中に沈んでいくような浮遊感。
小さな発見が深い記憶と結びつく。
昼も夜もない。
朝焼けに照らされなければ夕焼けを見送ることもない。
酸素に依存していては元も子もない。
いかに自分が無知であるかを証明されるような孤独感。
心拍数が耳の奥で揺れているような、囁いてるような。
目を開けているのか閉じているのか分からないほど暗い。
海月も鯨も隣合わせ。
鱗も視力も捨て去るような。
混ざり合わずともすれ違う必要もない。
眠くなったら呼んでほしい。
乾いた皮膚への愛着がない。
必要がないから光らない。
沈む為の意識はいらない。
眠るように。記憶もいらない。
此処が何処か分からない。
宗教もない。
価値もない。
戦争もない
事実もない。
嘘もない。
誰もいない。
後ろが見えない。
自分かもしれない。
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