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映画『戦雲(いくさふむ)』の感想

ご縁あって今月公開された三上智恵監督の映画『戦雲』を沖縄の桜坂劇場で観た。
与那国、石垣島、宮古島、沖縄本島で展開される郡司要塞化の現状について。
小さな島に住んでいても知らないうちに進んでいく。知らないでは済まされない。突然、近所にミサイル基地ができたり、射撃練習場ができたり、眼の前の道路を戦車が走って戦争の準備を始めたらどうする?それが与那国で起きている。突然島民に呼びかけがあり、全島民避難計画が発表される。そんな馬鹿な、うそのような、信じたくない本当の話。

沖縄の人々は日本で唯一戦場になり、どんだけの被害と試練と悲しみを体験したの?また繰り返すの?まさかやー
絶望と無力感に打ちのめされるが、映画の中で一番印象的だったのはカジキ漁の漁師、川田さん。沖縄の強さ、明るさ、たくましさを象徴する存在。この性質が沖縄を沖縄戦の傷から救ったのだと思い出す。光あふれる沖縄の自然に癒やされながら人々はたくましく日々を生きる。川田さんもこのたくましさで日々を豊かに生きていた。沖縄の地域の伝統行事、カジキ漁。。。でも川田さんもうすうすと気付かされる、忍び寄る戦争の影に。過疎化の島に自衛隊が来ること、自衛隊の人々と仲良く豊かな島を享受し、暮らしていくことはいいことだと思ったのに、あれ?なんで、戦車が?なんでミサイルが?なんか違う。

映画ではたくさんの活動家が軍事化に反対し、声を上げ闘う中、川田さんが軸になりドキュメントされる。映画が呼びかけるのは、主に何も知らない、知ろうとしなかった一般の人々へだ。

私達には日常がある。どんな現状にあっても私達はたくましく楽しく豊かに生きていく。それでいい。でもそれだけでいいのか。

私達一人ひとりのうちにあるあたりまえの平和を求める小さな灯火、そして私達のいのちが、戦争を体験し永劫の平和を望んでやまなかったご先祖の想いを受け継いでいることに気づくことが大事。灯火を集めたら大きな平和の炎になり、それは戦争をもとめることができる強い炎となるはずだと直感した。

私は希望を持って映画館を出ることができた。小さな平和の灯火をリレーのように誰かに渡すことを決意したから。それが雪だるまになるように、すこしずつ大きくなることを強く想像したから。それは必ず実現する。私達ひとりひとりが意識することによって。反対に言えばそれがなければ、平和は実現しない。平和は努力によって創るもの、本当にそのとおり。知ること→意識すること→その意識をもって生きること。ひとりひとりの生き方が平和活動であるべきだ。

映画解説(オフィシャルサイより)

「標的の村」「沖縄スパイ戦史」の三上智恵監督が、沖縄など南西諸島の急速な軍事要塞化の現状と、島々の暮らしや祭りを描いたドキュメンタリー。

日米両政府の主導のもと、自衛隊ミサイル部隊の配備や弾薬庫の大増設、全島民避難計画など、急速な戦力配備が進められている南西諸島。2022年には台湾有事を想定した日米共同軍事演習「キーン・ソード 23」と安保三文書の内容から、九州から南西諸島を主戦場とする防衛計画が露わになった。

三上監督が2015年から8年間にわたり沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島などをめぐって取材を続け、迫り来る戦争の脅威に警鐘を鳴らすとともに、過酷な歴史と豊かな自然に育まれた島の人々のかけがえのない暮らしや祭りを鮮やかに映し出す。

2024年製作/132分/G/日本
配給:東風
劇場公開日:2024年3月16日

オフィシャルサイト

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