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道端の花の咲き変わりで、季節の訪れをひと足先に気がつける人

美術品よりも説明書を読む時間のほうが長くて蘊蓄を垂れ流す「美術館に行っている自分」が好きな人が言う、「美術館に行くのが趣味」は嘘だろう。

美術館なんてたいそうな場所に行かなくても、道端の花の咲き変わりで、季節の訪れをひと足先に気がつける人が、本当の意味で美的な感性がある人だ。

小説も同様だ。
本当に小説が好きな人は、1日中ずっと本を読んだりしない。

本当に小説が好きな人は、日頃の自分の感情の揺れにも繊細に気を配れる人だ。
悲しい事があったら、その悲しみに揺さぶられるままに感情を委ねるように。

読んだ冊数を誇ることなく、大切な本を何度も読み返す人だ。

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だから、出会った時に君が「僕も本が好きで1年間に300冊読んでるんだ!」と声を掛けてくれたけど、たぶん、私と君の本好きの定義は違う気がするんだ。

ごめんね、傷つけるつもりではないのだけど。あの時は君のことが気になってたから、言えなかったんだ。

でも、結局、一緒にいろんな経験をして、長い時間を過ごすうちに、そういう目を背けて見ないふりをした、小さな違和感みたいなのが、目を背けられないくらいの大きさになっていった別れ方になっちゃったね。

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別れ際に言われた言葉。
棘を引きずって生きている。

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