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「学べること」の楽しさと尊さと。~『翻訳書簡 『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』~

こんにちは。桜小路いをりです。

先月投稿した、上白石萌音さんのエッセイ『いろいろ』についてのnote、ありがたいことにたくさんの方に読んでいただきました。
ありがとうございます。

あのエッセイで改めて萌音さんの魅力に気づかされた私は、あれから更に、自ら沼にハマりにいきました。

今回の記事では、萌音さんと、翻訳家の河野万里子さんの『翻訳書簡 『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』の感想を綴っていきます。

最後までお読みいただけると嬉しいです。

この本について

本書は、女優の上白石萌音さんが、文通で翻訳家の河野万里子さんに手ほどきを受けながら、『赤毛のアン』の名場面の翻訳に挑戦していく一冊です。

NHK「ラジオ英会話」テキストでの連載を、書籍にまとめたものになっています。

本の冒頭にも『赤毛のアン』のストーリーが載っていますが「まだ読んだことがない」「よく知らない」という方は、事前に読んでから、本書を開くのがおすすめです。
あくまで「名場面」の翻訳なので、その前後を分かったうえで萌音さんと河野さんのやり取りを読み進めていくと、自分なりの解釈なども頭に浮かべながら楽しむことができます。

本書の魅力は、「書簡のやり取りだからこその温かさ」と「翻訳の奥深さを学ぶことができる」というふたつの点です。
ひとつずつご紹介していきます。

「書簡」の温かさ

「お手紙」って、優しくて温かみがあって、すごく素敵だなといつも思います。

本書では、1回の連載分で2度お手紙のやり取りをする形になっており、そのお手紙の温もりのお陰で、一気に翻訳を身近に感じることができました。

「1回分」の連載の構成はこんな感じ。

萌音さんの最初の翻訳の文章

河野さんからのアドバイス

萌音さんが再挑戦した翻訳の文章

河野さんの試訳

読者の私たちも、萌音さんと一緒に翻訳の世界に触れながら、成長していけるような構成になっています。

ページのレイアウトやちょっとした挿し絵もオシャレで、読んでいて自然と気分が上がりました。

何より、装丁が素敵。シックだけれど可愛らしさのあるボタニカル模様の表紙で、この本をカフェで開いていたらそれだけで絵になりそうです。

『赤毛のアン』の原題が『Anne of Green Gables』(「Green Gables」は直訳すると、「緑色の切妻屋根」)だからか、全体的に緑色を基調としたデザイン。すごく素敵です。

話が逸れました、内容に入ります。
英語のセンテンスの中のキーとなる文法や単語には注釈も付いていますが、まだまだ英語を勉強中の私には、とても難しかったです。
ぼんやりとした意味をなんとなく掴むだけで精一杯。

「まだまだだな……」と思う一方で、「分かるようになりたい!」と、英語に対するモチベーションが上がりました。もっと頑張りたい。

得意かどうかはさて置き、もともと英語は嫌いじゃない、というより好きなタイプなので、終始楽しく読むことができました。

読み進めていく中で分かったのは、「翻訳」って、「英語力」がとにかく大事だと思っていたけれど、本当は同じくらい「日本語力」も大事なんだな、ということ。

詳しくは、次の項目で。

「翻訳」という「言葉の旅」

私がこの本を手に取ったのは萌音さんの『いろいろ』がきっかけだったのですが、私と「翻訳」との出会いは、少し遡ります。

「翻訳」そのものに興味をもったきっかけは、飛鳥井千砂さんの『女の子は、明日も。』という小説でした。
この本の中に翻訳家の女性が出てきて、その大変さと深淵さに目を見張ったことを今も覚えています。

本書では、「翻訳の奥深さ」を実感として知ることができました。

ただ、英語を和訳して読みやすくするだけではない。
原文を読んだときに感じた感動を、そのまま日本語でも感じてもらえるような文章を作らなければならない。

日本語と英語を何度も行き来して、言葉を練っていくその過程からは、溢れんばかりの「言葉への愛情」を感じました。

取り上げられているのが『赤毛のアン』だったことも、私にとっては親しみやすかったです。

私は、『赤毛のアン』の小説はもちろんのこと、アニメもよく見ていました。
各シーンのイメージが鮮明に浮かんできて、英文を読みながら、意味が分かるところは「ここは『眺める』がいいかな」なんて一丁前に考えてみたり。

「翻訳」って、楽しい。
そんなふうに思える一冊でした。

まだ、とても一編のお話を訳せる英語力ではないので、手始めに英語詞の曲のフレーズを翻訳してみたいな、なんて思います。もともと英語詞の和訳は推し活の延長でやっていましたが、もっと本腰を入れて。

それから、この本のセンテンスを少しずつ訳していくのも楽しそうです。

「学ぶこと」の本質

本書を読み進めていく中で感じたのは、「学ぶこと」の楽しさでした。

萌音さんのお手紙からは、「学ぶこと」を心の底から楽しみ、貪欲に吸収していく姿勢がひしひしと伝わってきました。

「勉強」「学習」なんて聞くと、それこそ「頑張ってやらなきゃいけないもの」というイメージが付きまとってしまうと思います。
私は勉強も嫌いなほうではないけれど、「じゃあ、いつも楽しく勉強していたの?」と訊かれたら答えは「否」です。だって、苦痛だったときもあるから。

でも、この本は、「学ぶこと」の本質的な楽しさを教えてくれる気がします。

「学ぶこと」って、「知ること」って、「分かること」って、本当に楽しい。面白い。
そんなふうに、生き生きと「学ぶこと」の楽しみに気づかせてくれます。

特に英語(というより言語や語学)は、「意味が理解できる」だけで見える世界がぱっと変わって、ダイレクトに感動できる学問なのではないでしょうか。

「学ぶこと」って、どこまでも終わりがない行為だと思います。
学んでも学んでも、まだ知らないことがいっぱいあって、この世の全てを「知る」ことなんて不可能。

でも、「知らない」からこそ「学ぶ楽しさ」を味わうことができるし、「知らなくて困ること」はあっても、「知っていて困ること」ってほとんどなくて。

学ぶこと、勉強することへのモチベーションが下がってしまったら、この本のことを思い出したいです。特に英語につまずいたときに。
英語の曲だって、歌詞の意味を知って聴くほうが、圧倒的に楽しいし、感動するに決まっているので。

まとめ

今、萌音さんのアルバム「name」を聴きながら、この記事を書いています。

その中に収録されている「Tea for Two」、改めて聴くと本当に可愛らしくて、ふんわりした素敵な曲です。
朝ドラ「カムカムエブリバディ」で、安子ちゃんと稔さんのデートのシーンで流れていたことから、アルバムに収録されたとか。

そういえば、「LIFE!秋」でも、SixTONESの北斗さんが萌音さんについて話していらっしゃいました。
他局の廊下で偶然萌音さんに会って、開口一番「稔さん、生きとったんか!」と声をかけられてオロオロしてしまったとか。

「萌音さん、強い……」とテレビの前で大笑いしてしまいました。

「カムカムエブリバディ」でも英語の勉強が取り上げられていましたが、今、こうして英語を身近に感じながら暮らせることの尊さも、改めて感じます。

「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも、自由に聴ける。自由に演奏できる。るい。お前は、そんな時代を生きとるよ」

娘の「るい」という名前に込められた、平和で自由な世界への願いと想い。
そして、その想いを口に出すことすら許されなかった時代。
その時代があったからこそ、今がある。

それを忘れてはいけないな、とすごく感じます。


なんだか、話が飛んでしまいました……。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

何が言いたいかといいますと、『翻訳書簡 『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』がすごく素敵な本だったということ。
萌音さんに、萌音さんの言葉に出会わせてくれた「カムカムエブリバディ」は、すごく素敵な朝ドラだったということです。(きっぱり)


今回お借りした見出し画像は、ハンドメイドモチーフと英字新聞の写真です。カラフルなモチーフが素敵で、選ばせていただきました。飴のような、つやんとした質感が可愛いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。