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しおりを挟んで。~上白石萌音さん『いろいろ』に寄せて~

こんにちは。桜小路いをりです。

上白石萌音さんのエッセイ『いろいろ』を、読み終えました。

見開き1ページ前後の短いエッセイが何編も収録された1冊で、「隙間時間に少しずつ読もう」と思っていたのに、気づいたら一気に読んでいました。

そのくらい、惹き込まれる作品でした。
温もりのある素朴な言葉が綴られていて、途端に萌音さんを身近な存在に感じてしまうような1冊です。

役者さんって、究極的に「言葉」を伝えるご職業だからなのか、すごく言葉のひとつひとつを大切にされているという印象も受けました。

エッセイだけでなく、萌音さんの書下ろしの短編小説や、スナップなども収録されています。

お気に入りの文章がいくつもあるのですが、まずは、「めくる」というエッセイから少しだけ。

本の表紙をめくった先にある、改めてタイトルが書いてあるページを〈扉〉という。なんて、なんて素敵な名前なのだろう。扉を開くと世界が始まる。たちまち異世界に足を踏み入れることができるのだ。

文章の行間から、「本が好き」という想いが溢れる素敵な1編でした。
ひとりの本好きとして、私も共感するところがたくさんあったり。

また、思わずくすっと笑ってしまったのが、「視る」という編。
ちょっとだけ内容を紹介させていただくと、萌音さんは、すごく目が悪いそうです。メガネデビューの日のことから、現在の視力のことまで綴られています。

でも最近わたしは気づいたのだ。この視界は、よく言えば、新印象派の画家が描く点描画のようだと。

ここの一節、すごく好きです。
萌音さんのことはテレビでしか見たことがない私ですが、なんだか、すごく「萌音さんらしいな」と思いました。

また、役者さんとしての想いをいちばん強く、鮮烈に感じたのは、「赴く」というエッセイでした。(こちらはネタバレ厳禁で、ぜひ真っ新な状態で読んでいただきたいので、あえて引用はしません。ご了承ください)

1冊を通して読み終えて感じたのは、まず、萌音さんの「飾らない美しさ」でした。

泣いたこと、笑ったこと、悩んだこと、嬉しかったこと。

色んな感情の揺らぎとグラデーションが、鮮やかに、真っ直ぐに切り取られていて、まるで本当に萌音さんとお話ししているような親近感があって。

そこには、俳優の萌音さんがいて、歌手の萌音さんがいて、姉の萌音さんがいて、ひとりの、ごく普通の女性としての萌音さんがいて。
そして、ひとりの表現者の萌音さんがいて。

こんなに、飾らなくて、真っ直ぐで、すきっと澄んだ言葉を紡ぐ方なんだな、と感じました。

「飾らないこと」って、すごく難しいことだと思います。

自分の弱いところ、小さなほころびは、どうしたって華やかな言葉で飾って隠したくなる。

でも、「飾らない」からこその「綺麗さ」や「眩しさ」「美しさ」って、唯一無二の、その人だけの煌めきになるとも思いました。

また、『いろいろ』には、「おとも」となる「スピン」という楽曲があります。

読み終えてすぐ、早速TSUTAYAに走って借りに行きました。(こういうとき、真っ先にCDを求めにいくのが私の悪い癖だったりします。今回に関しては、なんとなく「この曲はCDのほうがいい」気がしたのも事実です。)

夕暮れの川沿いの道をお散歩するときに聴きたい、可愛らしくて温かみのある素敵な楽曲でした。

ちょっとだけ、ミュージカルっぽい曲のようにも思います。
萌音さんの、弾むような声と伸びやかな声との対比が、なんともドラマチックです。

めくるめく日々にしおりを挟もう
例えばちょっとだけ 泣いちゃった日の
熱いシャワーのことや
あなたがくれた なにげない言葉も
ここにね 書いてあるから
大事に抱えて行くから

歌詞にも、エッセイの題名である「いろいろ」というフレーズが入っていたり、本と併せて何度も楽しめる1曲です。

ちなみに、「スピン」は、本に付いている栞紐のこと。非常に本好きの心をくすぐるタイトルです。
(ちなみに「I"ll be there」との両A面シングルを借りたのですが、インスト音源が「おうちカラオケver」と記載されていて、胸がキュンとなりました。こういう小さなこだわり、大好きです)

私の個人的な印象なのですが、萌音さんは「夕陽」や「夕焼け」のイメージです。

温かくて、何通りもの色彩を見せてくれる。
「今日も頑張ったよね。おつかれさま」と静かに励ましてくれるような。
いつでも、どこでも、何故か懐かしく感じて、胸がいっぱいになるような。

ライブ、行ってみたいです、すごく。
萌音さんの作品に触れるたび、言葉を大切にされている、という印象が強く深くなっているので、その言葉を生で受け取ってみたいなと、すごく思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

余談ですが、キッコーマンの大豆麺のCMの萌音さんがとても可愛いので、こちらもぜひ。(なんのふくらみもありません、ご紹介したかっただけです……)


実は、久しぶりの読書に関する記事でした。
私の記事の最近の裏テーマは、「読者の方の音楽との出会いのきっかけを作る」なのですが、本との出会いの橋渡しも、していきたいなと思ったりしています。

今回お借りした見出し画像は、爽やかな筆記用具の写真です。ミントグリーン×茶色を基調とした一枚で、なんとなく「チョコミント」っぽい雰囲気がオシャレで、選ばせていただきました。「言葉を綴る」「想いを書き留める」というこの記事のイメージにぴったりかなと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。