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桜色の本棚

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私が出会った素敵な本のこと、読書のことを綴った記事をまとめました。読者の方と本との橋渡しができたら嬉しいです。
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#読書感想文

宮部みゆきさん『ソロモンの偽証』/誰かの真実、ひとつの事実。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』を読破しました。 『ソロモンの偽証』は、たびたび映画化・ドラマ化もされている、本好きなら絶対タイトルは知っているくらい大人気の作品。 私自身、小学生の頃に文庫本発売のポスターが書店に大きく掲げられているのを見てから、「いつか読んでみたい」とずっと思っていた憧れのシリーズでした。 一步引いちゃうくらい分厚い単行本で3冊、文庫本だと6冊の超長編ですが、あえて言わせてください。 もしパラレルワールドが

磨いていく、少しずつ。~『感性のある人が習慣にしていること』~

こんにちは。桜小路いをりです。 感性がある人って素敵だな、と思うことがよくあります。 季節の移り変わりや人の感情、身の周りの物事に敏感で、その時々で自分らしさを貫いて行動できる人。 私もそんなふうになりたい……! という想いから、とある本を手に取りました。 それが、『感性のある人が習慣にしていること』です。 この本では、「感性を養う5つの習慣」として、「観察する習慣」「整える習慣」「視点を変える習慣」「好奇心を持つ習慣」「決める習慣」の5つが紹介されています。 著

つながりゆく心の温かさ〜瀬尾まいこ『掬えば手には』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、瀬尾まいこさんの『掬えば手には』を読み終えました。 この物語の主人公の梨木くんは、勉強も運動も真ん中の順位で、「普通であること」がコンプレックスな大学1年生。 しかし、彼は中学・高校でのとある出来事から、「自分は人の心が読める能力をもっているのではないか」と感じています。 でも、その能力は、取り立てて「超能力」というほどはっきりとしたものではなく、「偶然」とか「ちょっと鋭いだけ」と言われたらそれまでのもの。 でも、そんな力を時た

「勇気」を縫い合わせて、「ときめき」で飾って。~『なんでも魔女商会』シリーズ~

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、小さい頃から「かわいいもの」が大好きです。 ふわふわのレース、ひらりと踊るリボン、キラキラしたビーズに、ふんわり広がるスカート。 今も昔もお洋服屋さんをのぞくのが好きだし、小学生の頃は「ファッションデザイナーになりたい」と言っているときもありました。 そんな私の原点になっている絵本があります。 あんびるやすこさんの『なんでも魔女商会』シリーズです。 昨年2023年に20周年を迎えた、ロングセラーシリーズ。 小学生の頃、図書館で

太宰治『女生徒』にもらった、想いの数々。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、プロフィールの記事に「愛読書」の項目をプラスしました。 (実は、少しずつアップデートされているプロフィール記事。時折のぞいていただけると嬉しいです。) 私が愛読書として必ず挙げる本のうちのひとつが、太宰治の『女生徒』です。 高校1年生のときに出会ってから、ずっと大好き。 今年の夏の角川文庫の「カドフェス」でピックアップされていて、ちゃっかり限定カバーもお迎えしました。 『女生徒』が表題になっていますが、太宰が得意とした女性の告

愛すべきミステリー小説〜『名探偵のままでいて』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 「このミステリーがすごい!大賞」受賞作、小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』を読み終えました。 語彙力をすっ飛ばして書くと、ほんっとうに(!)素敵な小説でした。 古典ミステリーへの愛、ミステリーそのものへの愛が随所に溢れていて、オマージュも散りばめられていて。 古典ミステリーがお好きな方にはもちろんのこと、あまり馴染みのない(私のような)方も、すごくすごく楽しめる1冊だと思います。 この物語の探偵役は、主人公の小学校教諭・楓の祖父

絶望で咲く「何か」もある。〜『絶望名人カフカの人生論』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、カフカの『変身』と、てにをはさん提供の「25時、ナイトコードで。」の楽曲「ザムザ」の考察記事を出しました。 あれから、カフカ自身の人生についてもとても興味が湧き、早速読んだ本があります。 それが、頭木弘樹さんの『絶望名人カフカの人生論』です。 今回の記事は、この本のご紹介になります。 最初に書いておくと、いつもの私の記事とは、少し趣向が違うかもしれません。 普段は「ネガティブなことは書かない」をモットーにしているのですが、なにぶ

「きらめくヒント」をくれる1冊〜田辺聖子さん『歳月がくれるもの』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 最近、大切な御守りになる1冊と出会いました。 それが、田辺聖子さんの『歳月がくれるもの まいにち、ごきげんさん』です。 このエッセイは、月刊誌『MISS』で連載されていたもの。 私よりも少し年上のお姉さん世代の方に向けたものなのですが、だからこそ、「素敵な大人になるヒント」が散りばめられて、今、出会えてよかった本でした。 「聞き書き」の形式で、本当に実際にお話しを聴いているような気持ちになれる距離感、親しみやすさも魅力のひとつ。 200

古文は「萌え」に溢れている〜三宅香帆さん『妄想古文』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、三宅香帆さんの『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』を読み終えました。 『枕草子』、『源氏物語』、『更級日記』、『とりかへばや物語』、『万葉集』……。 お堅くて難しく思える古文は、実は、現代に通じる「萌え」に溢れている(!) 文芸オタクな三宅香帆さんが、文学作品の内外の様々なカップリングに焦点を当てながら綴る「萌えすぎて」止まらない古文解説本です。 今年は古文を頑張りたい私に、バキュン!と刺さりまくった1冊でした。 私、三宅

音楽は、いつだって美しい。〜安壇美緒さん『ラブカは静かに弓を持つ』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 安壇美緒さんの本屋大賞ノミネート作、『ラブカは静かに弓を持つ』を読み終えました。 チェロを、その音色を、音楽を通して織り成される、圧巻の小説でした。 装丁に惹かれて手に取ったのですが、読めてよかったです。 物語の主人公は、音楽にまつわる著作権を管理する組織、通称「全著連」で働く橘という名前の青年。 彼は、幼少期からチェロを習っていましたが、ある事件をきっかけにチェロを辞め、傷を抱えながら淡々とした日常を過ごしていました。 彼の日常が変

ひとつの言葉、いくつもの思い出。〜川上弘美さん『わたしの好きな季語』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、川上弘美さんのエッセイ集『わたしの好きな季語』を読み終えました。 96個の季語に纏わる思い出を綴ったエッセイが、96編。 各エッセイで、その季語を使った有名な俳句も紹介されています。 趣き深い季語、川上さんの素敵なエッセイ、そして名句がぎゅっと詰め込まれた、宝箱のような1冊です。 しなやかで繊細で、ちょっとお茶目な川上さんの文章は、読み進めるたびに心地よくて、つい一気読みしてしまいました。 優しい手触りのコットンのお洋服みたいな。

ヨルシカと読んだ『アルジャーノンに花束を』

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を読み終えました。 長年愛され続けている、不朽の名作としても名高い本作。 今まで、なかなか読む一歩を踏み出せなかったのですが、このたび、ようやく読了することができました。 そのきっかけのひとつが、ヨルシカの「アルジャーノン」という楽曲です。 実は、あらすじや結末はもともと知っていたのですが、きちんと読むのは、これが初めてでした。 『アルジャーノンに花束を』は、幼児ほどの知能しかもってい

「見えないこと」を見つめ直す。〜『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 小学生の頃、こんな活動がありました。 クラスメイトとペアを組んで、一方がアイマスクやタオルで目隠しをして、もう一方にサポートしてもらいながら廊下を歩いたり、階段を昇り降りしたりする。 そして、サポートする側、される側それぞれの視点を経験して、その中で、「目の見えないひと」への理解を深めよう、というものだった気がします。 どんな子とペアを組んだのか、その活動の後で宿題になった感想文に何を書いたのか、私は、もう覚えていません。 でも、その

私をつくった絵本・児童書たち。

こんにちは。桜小路いをりです。 以前投稿した記事で、「私に訊きたいこと、何かありますか……?」と書かせていただいたところ、橙木輝さんから「読書遍歴」についてのご質問をいただきました。 橙木輝さん、ご質問ありがとうございます! そして、いつも素敵なnoteを楽しみに読ませていただいています。 長くなりそうなので、今回は児童書・絵本編。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 絵本いもとようこ作品 いもとようこさんの温もり溢れる絵が、昔も今も大好きです。 幼い頃は、有