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伊豆天城山でハイキング-36

ららの運転で山道へと出る。

今日もゆっくり運転。

「止まって」

「はい」

対向車が来てささが支持を出し、ららは素直にそれに従う。
彼女は助手席にささを希望しただけあり、彼女の指示に本当によく従う。そして今日もささのアドバイスは適格だ。

対向車がゆっくりと通り過ぎようとしている時、ららがアクセルを踏んだ。

「今、動かさないで」

「はい」

再びささの指示に従うもの、変に動かしてしまっただけに狭い山道に車は斜めに止まっている。

この状態が怖い。

何年も運転していない私でさえ息を呑む状況だけに、私の運転手であるたぁは「うぅっ」とうなって、小さく縮こまっている。

どうにか通り過ぎた後も、たまに対向車が来たり、変な場所に停車したり、歩いているのかと思うようなスロードライブでたぁは体を丸めたままだ。もし彼がアルマジロなら見事な球体になっていたことだろう。

「たぁがトイレに行きたいみたいに丸くなっている」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

ららは笑いながら謝ってくれるけど、できることなら運転を他の人に代わっていただきたい。


昨日も怖い運転が続いたし、自らも運転に自信がないと言っていたのにどうして彼女は今日も運転することを決めたのだろうか。


聞きたい。


でも聞けない。


湾岸道路に出てもノロノロ運転が続く。後ろの車はたいそうイラついていることだろう。

「そこのガソリンスタンドに入って」

「はい」

昼食後は別行動になるのでその前にガソリン代を折半することになっている。給油とともに心もリチャージ。高速代金と合わせて折半したけど、ささは「家を出てすぐにガソリンを入れた」と言っていた。

あれっ?

おかしいぞ。

私たちと会ったのは小田原のはず。

後で確認するとやはり多く請求してしまったようで返金してもらった。


湾岸道路沿いにはたくさんのお土産屋さんがある。地域共通クーポンを使い切るためにどこかのお店に入ろうかと思ったけど、ささ家族はクーポンで家電製品を買うことにしていたので、私たちだけのために、そしてららに余計な駐車というプレッシャーを与えないためにもそのまま通過することにした。


常時ささの指示が車中に響く。たぁは顔を下に向けたまま、たまに正面を向いては小さくうなり、両手を股の間に挟んでいる。何度も何度も何度も何度も怖い思いをしながら、どうにか伊豆熱川駅を通り過ぎ、海沿いまでやってきた。
高台では釣りをしている人の姿がある。今日も天気はそれなりに良いし、釣り好きなささ家族の車には常時道具が積まれている。一度はやらないと決めたけど、この風景を見たら気分も変わるかな。

「ほらっ、ここでも釣りができそうだよ」

「でも、波は荒いし、彼らも連れていないみたいだよ」

釣りの体験が限られている私は長年それを楽しんでいるれんの意見を聞くしかない。きっと素人目にはわからないことがあるだろうから。


どうにか私たちがお世話になる宿の前に到着した。海沿いの真っ黒なホテルだ。
まだ午前中なので荷物だけ預かってもらうおうと中にと入ると、一人の男性スタッフが出てきた。

「今からお客様を送るのでコーヒーでも飲んで待っていてください」

ロビーには誰もおらず、受付前はカフェスペースになっていて、確かにコーヒーが飲めるように準備がされている。だけど朝食とサービスチケットで皆たらふく飲んだから飲む気にはなれない。

「だけど折角だから」

れんは“ただ”好きだ。

彼は利用客じゃないんだけどなぁ・・・・・・と思っても決して口には出さない。ここまで彼の家族の車で送ってきてくれたんだから飲む権利はある(はずだ)。


ロビーの奥にはお土産品がいろいろと置いてあり、「こんな状態で盗まれないのかなぁ」と勝手に心配する。
これも多分、日本の片田舎だからこそなせる業なのかもしれない。どこぞの都市ならば数分でなくなることだろう。

そんなことを思っていたらスタッフさんが戻ってきた。

「チェックインまで荷物を預かっておいてください」

「お部屋に入れるのは15時ですが、その前にチェックインができますがどうされますか。最上階の家族風呂の貸し切りも今、お受付できますよ」

「おっ、それなら皆さんが予約時間を決める前に」とお願いすることにした。
チェックイン後、家族風呂の予約票を見ているとすでにいくつかの枠は埋まっていたので、夕食前の17時にお願いをした。


帰りの送迎について聞いてみると、「その場の状況で私たちが運転するかタクシーを呼ぶか決めます。だけど予約はできませんし、タクシーがすぐに来るかはわかりません」と言われてしまった。

帰りは特急「踊り子」に乗る予定なので、時間が定まらないのはよろしくない。グーグルさんによると駅まで1.3km、歩いて16分ほどだ。ならば明日は歩いていけるだけの余裕をもって送迎のお願いをすることにしよう。


「おまたせぇ。待ってくれてありがとうね」

「いいよ」

現在11時前、昼食のお店は11時半に予約したので、まだ時間がある。

「この先に足湯があるからそこに行こう」

おぉ、いいね。

そしてささが運転席へと座った。


ほっ。

ありがたやぁ、ありがたやぁ~。


頑張ってくれたららにも感謝です。




主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう



これまでのお話



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