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家族と一緒にネパール旅行-16

ガタガタ、ゴトゴト、ブーブーブー。

補正されているようでされていない、車線が引いてあるのに誰もそれを気にしていない。バスの運転手はずっとクラクションを鳴らしながら、混み合う道を走っていきます。

鳴らすのが当たり前だからなのかわからないけど、クラクションの音は日本のそれよりも軽く感じられました。

座り心地や冷房がないことはさておいて、不快さを高めるのはバスに乗るたびに目にする交通事故。
みんながルールに則って走っているのならば、「あらぁ」と心をちょいと痛めるだけで済みますが、ルール完全無視の中を走り続けていると「次は我が身」と恐怖を引き立てます。


それでもどうにか6時間ほどかけてポカラのバス停に到着しました。バス停は町の外れにあり、お迎えなど来ていない観光客はタクシー利用が必須なようで。

ここでもバスを降りれば、タクシー運転手が迫り寄り歩く場所を奪っていきます。
チトワンでの教訓もあり、今回はできる限り家族みんな固まっての移動を心がけます。
値段交渉をしようと話を聞いてみると、皆均一、同じ値段しか言わず、交渉に応じず、さらにタクシーが小さいため四人+荷物だと一台に収まらず、二台利用しないといけません。その中で、ホテル用小型バスだけが値下げに応じてくれて、シンガボール人の家族と一緒に乗車することに。

乗り込む際にも何やら周りのタクシー運転手たちが文句をつけてきて私たちの動きを妨げようとします。

どうにか全員乗り込んでも車は動きません。
というか、動けないのです。

なぜならバスの周りをタクシードライバーが囲んでいるからです。

「お前はルールを破っている」

「いや、違うよ。彼らは僕のホテルに泊まるんだ」

えっ?
泊まらないけど。

「嘘つきめ」

「君たちはこの違反バスに乗っちゃいけない」

まるで私たちが全盛期のビートルズでファンやマスコミに囲まれているのかと思うほど、どうにもならない状態。
最終的に警察が笛を鳴らしながら怒り騒ぐタクシードライバーを車から離し、ゆっくりゆっくりと動き出しました。


その後は問題なく安全運転の中、ポカラ中心部に到着してお金を支払う時のこと。
割引交渉をしていた時は笑顔満載でこれぞ「お客様は神様です」対応だった運転手は剣幕になり態度は一変し、「金をよこせ」と言ってきます。
その請求態度があまりにもひどく、なんだか脅されている感じ。とりあえず交渉した金額を払いますが、奪い取られるような形で嬉しくない。その後、シンガボール人家族を代表して支払った女性が彼に何かを言うと、彼の顔が一瞬にして歪みました。

バスを降りた後、たぁが言いました。

「彼女の言い方は良かった」

私には聞き取れなかったのですが、彼女はこう言ったそうです。

「そういう態度で請求するのは失礼でしょ。支払うのが嫌になるわ」

皆が恐怖や不安を感じていると冷静な判断を失ってしまいますが、こういうときに平然と意見が言える姿が見事です。

今思えば、ミニバスの運転手さんは確かにほかのタクシーよりも低価格で私たちを中心部まで運んでくれましたが、その交渉は一家族ごとに行われたので、二家族同時に乗車させたことで、利益も二倍で規定以上のお金が入ってきたというわけで。

もし彼が支払いの時も良い対応を崩さないでいてくれたら見事な一石二鳥だったのにな。


ポカラは以前、ネパールに来たことがあるたぁのお勧めの場所だったので私たちはここに一週間ほど滞在する予定です。しかし、アニルさんたちは数日で帰るということだったので、ここでお別れすることに。
すったもんだがありながらも一緒に旅をできてよかったです。ありがとう。
アニルさんご夫妻が一緒にバスに乗り込んだかどうか、忘れちゃったなぁ。

とりあえずポカラに到着したけど何の予定も決まっていない今、最初にすべきことは宿探し。
観光地として有名なポカラは決して小さい町ではありません。たぁ両親を連れながら一軒一軒ホテルを探すのは面倒だし、彼らにも負担がかかってしまうので、喫茶店でお茶を飲みながら荷物と一緒に待っていてもらうことにしました。


たぁ曰くメインストリートにはバーが多く、夜になるとライブが深夜まで続いてうるさいから一本道を入った宿がお勧めとのこと。
メインストリートの端近くにある一本道を中に入っていくと、良さげなと思われるホテルがありました。
中に入ると一人のおじさんが出てきて、どうやら彼がオーナーさんのようです。
一週間泊まりたいこと、二人一部屋で二部屋使いたいこと、またお湯が出るかなどの確認を親身に対応してくれる非常に誠実な方だと理解。
値段もお手頃(一部屋一泊千円以下)でお庭も広く、部屋を見せてもらうとこじんまりとしながらも清潔感があります。さらに開けられた窓からはなんとアンナプルナ山が見えるじゃないですか。

バッチグーなお部屋ですね。

ってことでここに決定。

喫茶店に両親と荷物を迎えに行ってすぐにチェックイン。階段は狭いので荷物を運ぶのが大変ですが、スタッフの人が手伝ってくれました。


まずはスーパーに向かいビールとお菓子を買ってきて、一階にある休憩所で今日という日を労います。
カトマンズ、ナガルコット、チトワンと早起きの日々が続いていましたが、今日からはのんびりまったりポカラタイムが始まります。

さぁて、明日は何をしようかな。

私の両親から借りてきた10年近く前のガイドブックを見ながら、ビール片手に語らい、疲れを癒しましょう。


※2010年11月18-12月4日にたぁ両親とともに訪れたネパール旅行記です。


これまでのお話


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