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芸備線・木次線 2024 初夏

旅のきっかけ

4月・5月とWESTERポイントが当たるキャンペーンに当選し続け、総計20000ポイントものWESTERポイントを断続的に頂戴したため、ポイント消費目的?で北陸新幹線と山陽新幹線をポイントで乗りまくることになった。

山陽新幹線に至っては全線開業50周年記念ということで、新大阪・岡山間を定価の25%(75%引き)分のポイントで乗車できる「WESTERポイント超特典きっぷ」なるものが登場し、驚きの低価格で新大阪・岡山を移動できた。

ド◯キも驚きの驚安価格(出典:JR西日本Webサイト)

せっかくの機会なので東京・岡山間、岡山・東京間をサンライズ瀬戸・出雲で移動し、夜行列車旅を満喫するというオプションも追加。先々、私のライフステージが変わって、サンライズに乗る機会が作りづらくなっても後悔しないように、飽きるほど乗っておこう、という戦略である。
さらには「381系やくも」も2024年6月で定期運用から退くため、これも見納め&乗り納めする機会ができた。

やくもといえば、新見を通る。新見といえば、芸備線。
芸備線も、私のライフステージが変わった暁にはそうそう乗りに行けるとは限らなくなるだろうと思っているため、これもちょうど良い機会だ、ということで、思い切って乗ることにした。

芸備線・木次線とは

新見は岡山県の北西部。
芸備線は新見の北西にある備中神代から広島県広島までを結ぶJR西日本の路線。途中の備後落合からは島根県の宍道に向かう木次線と接続している。
備後落合は芸備線・木次線が接続するジャンクションのような駅だが、鉄道旅行趣味者の間では秘境駅としてよく話題に上がる駅である。
芸備線・木次線ともにJR西日本において経営状態の悪い路線としてメディアでも取り上げられる機会は多く、2020-2022年度の3か年平均で芸備線東城-備後落合間は100円を稼ぐのに15,516円のコストが、木次線出雲横田-備後落合間は100円を稼ぐのに5,695円のコストがかかっている旨がJR西日本より公表されている。(JR西日本のニュースリリース, 2023/11/28

赤い線が今回乗車した新見・備中神代-備後落合(芸備線)と備後落合-宍道(木次線)

前段:新見までの道のり

ポイントを使おう

2024年6月8日。
とにかく溜まりまくっているWESTERポイントを消費することを目的の一つに含めたため、出発地点は北陸新幹線上越妙高駅になった。(東京から上越妙高までもJRE POINTを使用。)

サンライズ上越妙高

上越妙高と糸魚川の間はJREPOINTもWESTERポイントも使えない区間なため、上越妙高から富山までは指定券を購入して乗車。

WESTERポイント特典きっぷの注意点

ヒヤッとしたのは、WESTERポイントで引き換える新幹線乗車券「WESTERポイント特典きっぷ」の発券は、JR西日本の駅のみどりの窓口・指定券券売機等でないとできない、という点。
前日のうちに東京駅や上越妙高駅の指定券券売機で発券しておこうと思い、QRコードを券売機にかざしたがエラーになって、「これはもしや。。。」と思ってJR西日本のWebサイトを熟読したところ、「JR西日本の駅で発券(上越妙高を含むJR東日本の駅では発券できない)」と書かれていて、それじゃあ仕方ないよな、といったんは納得した。
が、実は上越妙高-富山-敦賀と移動する間で、富山での乗り換え時間は8分しかない。富山でいちど降車し、指定券券売機でWESTERポイント特典きっぷを発券し、再び敦賀方面のホームへ上がって敦賀行きの列車に乗らねばならない。

「8分」。大丈夫か?

I LOVE TOYAMA, AGAIN

運命の8分滞在

幸いにして(?)私は最近富山がマイブームで、実は5月にも富山駅を訪れて駅の構造は熟知していた。階段に近い降車位置さえ心得ておけば、階段を降りて改札を出てすぐ右に行けば指定券券売機(クレカ専用の機械)があることを理解していた。クレカ専用機は現金利用の一般客が使えないため、使い慣れた乗客しか使わない=行列ができる可能性は低い、と勝手に考えて、富山駅でのすべての行動を脳内シミュレーションしておいた。

結論から言うと、1分で降車〜改札通過〜指定券券売機到着、2分で発券(富山・新大阪間と新大阪駅・岡山間)、2分で「ますのすし(小丸)」購入、1分でホームに戻って新幹線に乗車。最終的には2分”お釣り”がくる計算であった。
ちなみに「ますのすし(小丸)」は富山-金沢間で平らげた。実に平和である。

ますのすし小丸とWESTERポイントきっぷ

そして新見へ

敦賀・新大阪で乗り換えて岡山に到着し、岡山からは381系”国鉄色”やくもに乗って新見へ。昭和生まれの人間としては国鉄色は本当に思い出深い。博物館入りしている車両を見ることも可能だが、晴天の下で陽の光を反射させる車体の輝きは屋外の営業路線で堪能したい。それももう、今月でできなくなる。そんなノスタルジーを胸に、やくもを新見で見送った。

素敵な思い出をありがとう 381系国鉄特急色やくも

衝撃の事実

新見に来ると私が必ず立ち寄るのが「パンとツカイモノの店 松陰」というお店。駅から急ぎ足だと8分ぐらい。高梁川沿いに行って東方向(備中高梁方面)に行ったあたりにある。ここの手作りパンが鉄道旅にぴったりで、いつもここで3、4個パンを仕入れて列車に乗るのが私の新見のひそかな楽しみである。

私の新見のお気に入り

が、しかし、衝撃の事実。2024年12月で店じまいしてしまうとのこと。。。
誠に残念。。。

衝撃の告知

私「閉店しちゃうんですね。。新見に来る度寄らせていただいてました。」
お店の方「どちらからいらしたんですか?」
私「東京からです」
お店の方「お仕事ですか?」
私「いえ、旅行で。芸備線に乗りに。」
お店の方「そうなんですね。また12月までに機会があれば寄ってくださいね。」

気さくにこうした会話に応じていただけたのも嬉しいが、お店がなくなってしまうのは残念。
地域に根付いたお店でのお買い物は個人的には旅の楽しみの一つなので、そうした思い出に残る場所がなくなってしまうと、どうしようかなぁ、と思ってしまう。

マニア垂涎

新見駅に戻り、駅を観察していたところ、「ICOCAに2千円以上チャージすると鉄カードプレゼント」という告知を発見。駅のポスターやチラシなどの告知はしっかり目を通して興味深い情報がないかを必ずキャッチする癖が身についているため、ちょっとしたノベルティプレゼントの機会は逃さない。関東人なのになぜか所有している「SMART ICOCA」を手に、クレジットチャージ(クイックチャージ)で3千円をICOCAに入れ、証明書を窓口に提示すると2種類の鉄カードのどちらにしますか、と言われる。キハ120の描かれたカードがあったので、これはもう渡りに船とばかりにキハ120のカードをいただいた。
芸備線の備中神代と坂根の間にある大きな水車を背景に走る芸備線キハ120が描かれている。地元のみどころを活かした素敵な写真だと感激して1番線ホームに向かう。

素敵なお写真です

芸備線443D

ホームに上がると姫新線のキハ120が2番線に停車中だったが、芸備線のキハ120はまだ入線していなかった。タイミングよく入線アナウンスが響き、東側(石蟹・備中高梁側)からオレンジ帯のキハ120が入線してきた。新見12:58発の443D。

443D キハ120 336

この日の旅客流動

入線直後は乗客もまばらであったが、発車が近くなり、岡山方面からの伯備線普通列車からの乗り継ぎ客も乗車してくると、着席率は100%ぐらいになった。
地元の方、高校生のほか、この日は若い女性のグループがクロスシート2ボックス分を占めた。大学生グループのように見受けられたが、どういった方々かはよくわからず。なお、私と同じ目的の鉄道旅行者も7−8名くらい見受けられた。(空気感でわかるものだ。。。)

途中、布原で1名乗車。その方は備中神代ですぐ下車されたので、恐らく381系撮影目的の方だろうか、と推察。伯備線は鉄道写真趣味の方々が多くいらして、盛り上がっているので「そうですよね。撮りますよね。」と妙に納得した次第。
神代からは確か市岡で高校生が1名降りる場面を見た。
また、大学生グループとおぼしき方々は野馳でまとまって下車。グループの皆様はワンマン列車に乗り慣れていないようで、後ろの扉から降車して乗務員さん(この日は運転手さんのほか乗務員さんも乗車しており、その方)から「前から降りてください」と言われていた。降車後は先生?指導者?っぽい方が駅にいらして、グループの皆様を迎えられていた。

グループの皆さんが降車された野馳駅

東城町の中心地、東城駅で地元の方が全て降車され、東城以降は私を含む鉄道旅行者が終点の備後落合まで乗り通す、という流れで、備後八幡〜道後山間の乗降はなし。

2024年、初夏、備後落合

(1999年、夏、沖縄(by Mr.Children)風タイトル)

備後落合の2番線にはすでに三次から来た芸備線が停車中で、新見からの443Dは3番線に滑り込む。
晴れの備後落合は個人的に初めてかも、と思うほどに、晴々した「3方向が落ち合う時間」は新鮮だった。初夏の爽やかさが心地いい。

晴れ間がのぞく備後落合 芸備線ホーム

3方向が落ち合い、分かれるまでの20−30分の賑わいは、特に青春18きっぷやフリーきっぷシーズンを除いた平時にこそ楽しみたいと思うようになっている。
フリーきっぷ有効期間は同じ趣味の方々が集中し、賑わいはとても良いと思いつつも、静寂、落ち着きのある駅を楽しみたいと思うと、繁忙期は避けたいと思ってしまう。

備後落合の思い出

ここで少しだけ私の「備後落合体験」のお話し。

2023年3月に三次17:24発・落合18:43着の362Dで落合に来て、20:10落合発の446Dまで1時間半を落合で過ごしたことがある。日没も早く、真っ暗闇の落合は星空が綺麗で、冬の大三角形を落合の駅名標と共に撮影して喜んだりして過ごしていたらあっという間だった。

星空の下の備後落合(届けこの想い) 2023.3


18きっぷシーズンに通過した時は乗り遅れやしないか、と思うほどの賑わいでバタバタしたことを記憶している。
朝に三次から来て(三次発6:54落合着8:14の350D)、落合でガイドさん(かの有名な永橋さん)にじっくり駅をご案内いただき、ジオラマも拝見できたのもいい思い出だ。

そんなこんなで、落合訪問は4度か5度目ぐらいかも、というくらいに直近2−3年でよく立ち寄っている。

木次線1462D

今回は、落合から木次線に乗車。木次線は芸備線の2車両が到着後、最後に落合に入ってくる。木次線は目測で15−20名ぐらい乗車しており、落合でどっさり降りてきた場面を見て「結構乗っているなぁ」と思ったものだ。
芸備→木次の乗り換えも一定程度いるが、木次線をそのまま折り返すお客さんも散見された。あとで分かることだが、出雲坂根で車を停めて、坂根-落合を観光目的で往復された旅行客などがいらっしゃった。

愛ある木次線

3方向から落ち合った車両が最初に出発するのは、芸備線三次行き359D(14:40発)。その次は芸備線新見行き444D(14:42発)。それぞれを見送ったあと、14:44に宍道行き1462Dが落合を出る。
どの車両へも、ガイドの永橋さんが手を振って見送られる。本当に頭が下がる思いで、私は1462Dの最後尾で駅が見えなくなるまで手を振り返してお見送りに応じた。ささやかながら、せめてもの感謝の気持ちが伝わると良いのだが。

落合を出て芸備線と別れた直後

木次線の落合以降の高地、坂根のかの有名な3段式スイッチバックとおろちループの景色は一級の「鉄道観光資源」でしょう。
2023年11月に木次線で亀嵩に行った際、三井野原から団体の旅行客が乗車して、3段式スイッチバックとおろちループの車窓に歓声を上げ、出雲横田で降車していったのはとても印象に残っている。
今回(2024年5月)も、1462Dがおろちループが眺望できる箇所で徐行した際に乗客のみなさんが歓声を上げて写真を撮られていた。
残念ながら奥出雲おろち号は来なくなってしまったが、キハ120からも眺望と貴重なスイッチバック体験を楽しめ、エンターテイメントとしては十二分に価値があるし、個人的にはリピートして飽きない区間だなと実感している。

時間があれば横田・亀嵩などに寄って美味しいお蕎麦や仁多米を楽しみ、たたら製鉄を学んだり棚田を見るなどして地域を楽しみたいところだが、この日は岡山からのサンライズ瀬戸に乗るため、残念ながら途中下車する時間が取れない。
2023年11月に一度横田・亀嵩に寄っていい思い出があるので、また再訪したいところだ。

木次駅

1462Dは落合発・宍道行きだが、途中の木次で16分停車する。これは貴重な停車時間で、欲張りな私はこの16分の間に
・駅の観光協会で木次線の歴史解説本を購入
・木次駅前のスーパーで仁多米2Kgを購入
という芸当をやってのけた。

木次駅16分チャレンジ

木次線の歴史解説は地元・雲南市の「地域づくりの会」が制作し、木次線の前身の「簸上鉄道(ひかみてつどう)」の開業ストーリーが丁寧に記述されて、地域史・鉄道史の理解を深められて興味深い。この書籍を拝読すると、もともとの簸上鉄道の開業区間である宍道・木次間と、木次・落合間とで路線の様相・景色が異なって見えてくるような印象が持てるようになるのも面白い。
「この地域でしか得られない、詳しい地域史を手軽に学べる手段」としてのこうした書籍・ブックレットも、私にとっては旅の楽しみを深める良い素材になって、嬉しいものである。

500円で雲南市観光協会(木次駅併設)で購入


また、仁多米は「東の魚沼、西の仁多」と言われていることから、米好きの私としては気になる存在である。2023年11月に横田から「奥出雲たたらと刀剣館」に行った際に、途中のロードサイドのご飯やさんで仁多米のおにぎりを頬張り、良い印象がある。
そのため、「炊き立ての、より良いコンディションの仁多米をいただいてその実力を実感したい」と思っていたので、木次駅で仁多米2kgを購入できたのはラッキーだった。(本日2024/6/7時点ではまだ炊飯していないが、炊き立て仁多米をいただく瞬間を楽しみにしている)

仁多米楽しみです! 木次駅にて

木次線終着・SHINJI

そんな木次での充実した16分を経て、木次線1462Dの旅は宍道で終幕を迎える。
個人的などうでもいい話だが、”宍道”は私の実名「Shinji」(漢字は伏せます)と同じ読みで、ローマ字表記にすると同じ名前になることから、思い入れがある。
この駅は過去3、4回ほど訪問・通過しているが、通る度に駅名標にカメラを向ける癖がついている。
そんな"Shinji"の、木次線版の駅名標は木次線の停車位置からやたら離れた場所にあるので注意が必要。かつて長編成の客車や気動車が来ていた頃は、駅名標の位置は自然な場所にあったと思われるが、キハ120単車の時代になると、ホームの端に置かれた木次線版の駅名標は不自然な位置に思えてしまう。これも時代の流れか。

{←みなみしんじ しんじ} しんじ撮影

帰路

2024年の芸備線・木次線乗車体験はこうして心地よい余韻を残して終了し、その後は松江から「381系やくも」の私的最終乗車により岡山へ、岡山からはサンライズ瀬戸のシングルツインで、余す所なくシングルツインの諸機能を使い倒しながら夜の山陽・東海道を駆けて帰京した。

シングルデラックス(A寝台)よりデラックスだと思うシングルツイン(B寝台)

金曜夜発、日曜朝着で首都圏からでもサクッと楽しめる芸備線・木次線の乗車体験。味を占めた?ので、また機会があればやってみたいと思う。
もし再び実践するなら、今回と逆の、宍道-落合-新見のルートにして、亀嵩でそばをいただく時間も作りたい。(このルートを満喫するためには宍道9:11発に乗らねばならないが。。。)

サンセット宍道

まとめ

中国山地の険しい山間で、岡山・広島・島根の3県に跨る自然豊かな芸備・木次沿線。
「赤字の鉄道路線」という点がついクローズアップされがちだ。
私はこの路線が契機になって、この周辺の土地・風土が生む自然の造形や産品を知ることができた。
三次の「はぶ草茶」「唐麺焼き」、仁多米、亀嵩の蕎麦、奥出雲の棚田や「たたら」、新見の街など、芸備線・木次線がなかったら気付けなかったと思う。
その土地ならではの魅力を知る方法・契機は様々な形があって然るべきだが、鉄道旅を趣味とする私としては、鉄道に乗って見知らぬ土地の魅力を発見する体験が、今後も続けられると良いな、と思う次第だ。

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