北上線 2024 秋 〜 えきねっとQチケ初使用
はじめに
私はJR東日本のサービス「どこかにビューーン」の愛用者なのだが、最近はプライベートな事情があり、使える機会が無かった。たまたま2024年10月の連休にこのサービスが使えるタイミングが久々にあったので、”どこビュン砲”を発動した。
今回のターゲットは秋田。
これまでもどこビュン砲で足繁く秋田を訪れているが、定価よりお得なポイントで秋田まで足を伸ばせるのはありがたい。
ただ、秋田内陸縦貫鉄道も男鹿線も由利高原鉄道も乗り尽くし、奥羽本線も主要なところは乗車済み。
秋田県立博物館や秋田港も訪問済みで、次のネタはどうしようか、、と思って路線図を眺めていた。
北上線。
東北の地方交通線で唯一、私が一歩も足を踏み入れていない路線があった。
私の記憶が確かなら、「ほっとゆだ」改称前も後も、北上線には一切足を踏み入れていないはず。
北上線の、秋田側の出発点は横手で、大曲の4つ隣の駅なので、秋田までのチケットを大曲で途中下車すれば、横手に出て北上線に乗れる。
ということで、ネタは決まった。北上線。
えきねっとQチケとの出会い
北上線に乗ろうと決まるはいいが、乗車券はどうしよう。
週末パスの圏外であり、青森・秋田の県内フリーパスも、県またぎでは使えない。
そうなれば普通乗車券で乗り通すか、と思い、いつもの習慣で、えきねっとで普通乗車券を買いつける操作を始めた。
大曲から100km超の普通乗車券を購入し、途中下車する計画で、「大曲-横手-北上-日詰」という、マニアックな普通乗車券をえきねっとで購入しようとした。
そこで、「QR」の見慣れない文字が目に留まる。なんじゃこりゃ。
そういえば、JR東日本のプレスリリースで「えきねっと経由でQRコードチケットを発売する」といったアナウンスがされていたな、と思い出した。
https://www.jreast.co.jp/press/2024/20240711_ho02.pdf
「えきねっとQチケ」というサービス名称で、ちょうど2024年10月1日からサービスインという話であった。なんといういいタイミング。
何事も使って体験!ということで、あまり迷わず「えきねっとQチケ」で普通乗車券を購入し、旅行当日を迎えた。
秋田新幹線 by どこかにビューーン
最近、「どこかにビューーン」を連休中などの繁忙期にエントリーすると、「ご希望の日時でエントリーできません」といったアラートが出るようになった。サービス当初は「連休初日の朝イチ東京発+連休最終日の旅先最終時間帯発」でもすんなりエントリーできたが、利用者が増えてきたためかエントリー難易度が高くなってきた。
今回も、東京発着にしようとしたが「エントリーできません」と言われ、上野発着にして、上野発は朝イチではない午前の時間帯にセットして何とかエントリーできた、という次第。
それで行き先は「秋田」と来たもので、なかなかに遠いところが出てきたものだ。お得なポイントで遠出できるので、ありがたいことには違いない。嬉々として、上野の新幹線ホームで「こまち17号」E6系の到着を待った。
大曲
「どこかにビューーン」で取得した乗車券+特急券は新幹線eチケットのルールが適用され、「途中下車前途無効」の扱いにはなるが、途中下車は許容されている。今回は秋田のひとつ手前の大曲で下車し、大曲から秋田間は権利放棄することにした。
問題は、改札。
新幹線eチケットで途中下車する分には特に問題はなく、Suicaを大曲でかざしても特に出場できないといったエラーは起こらない。
一方で、今回初めて使用する「えきねっとQチケ」はなにぶん初使用なので、入出場の改札をきっちり対応すべきだろうと思い、大曲のQR対応自動改札にしっかりとQチケをかざして使用開始手続きを行うべきだろうと思っていた。
こまち17号が大曲に到着するのは13時37分。
大曲から横手行きの普通が出発するのは13時44分。
その間、7分。
まぁ、大曲ほどの程よい規模の駅ならば、何とか間に合うかと思って時刻表アプリを閉じて車窓に集中した。
結局、大曲では改札を出場・入場して普通列車のホームに行くと4、5分の”お釣り”が出るほどに余裕があった。おかげさまで、デジタルスタンプ「エキタグ」をゲットする余裕まであった。
なお、「えきねっとQチケ」は「えきねっとチケットレスアプリ」を起動してQRコードをスマートフォン画面に表示して使用する。大曲駅は自動改札機にQRコードリーダーがついており、スマートフォン画面上のQRコードをQRコードリーダーにかざして改札を通過する。土曜13時半過ぎの落ち着いた時間帯で改札を通過する人員も少ないことから、ゆとりを持って自動改札を通ることができた。QRコードの読み取りはスムーズで、スマートフォン画面をかざし直したり、画面の照度を高めるといった余分な手間はかからなかった。
「えきねっとQチケ」で行く北上線乗り通しはこうしてスタートした。
横手で途中下車 by えきねっとQチケ
701系普通442M、秋田発横手行は14時3分に横手に到着する。北上線北上行が横手を出発するのは14時15分。乗り換え時間は12分ある。
横手でじっくり滞在する時間はないが、「えきねっとQチケ」で途中下車は可能なのか?という点に興味を持ち、とりあえず横手の改札を出ることにした。
横手の自動改札にもQRコードリーダーがある。私は降車時に「えきねっとチケットレスアプリ」を起動してQRコード表示をスタンバイ。改札に向かってQRコードリーダーにスマートフォン画面をかざすと、、、
無事、出場。
途中下車可能な普通乗車券で、何ら問題なく改札を出場することができた。
磁気券と何ら使い勝手は変わらない。とても良い。
ちなみに「えきねっとQチケ」の画面上、QRコードの下には「出場|横手駅」という赤い表示が現れる。途中下車印のような扱いと思われるが、この表示も明快でよい。
と、磁気券同様の使い勝手であることを確認して、すぐさま横手駅の自動改札を通って駅構内に入り直し、北上線ホームに向かう。
北上線 横手〜ほっとゆだ
初めての北上線、横手駅ホームにはキハ100の単行が停車していた。
横手はいちど冬の時期に訪問したことがあり、北上線ホームを遠巻きに見た記憶はあるのだが、ようやく乗車することができる。
北上線を取り上げるYouTube動画もいくつか観ており、田沢湖線などと比べて線形が比較的良いことなどを頭の中に入れていたので、実際にどのような沿線風景が広がっているか、楽しみに乗車した。
横手出発時点で座席がほぼ埋まっていたため、私は運転席付近のお手洗いそばに立って全面展望を楽しむことにした。
横手からしばらく、秋の訪れを感じるような、少し色づき始めた山々が目に映る。快晴の空の爽やかさも相俟って清々しい。途中の黒沢駅で対向の気動車と交換し、横手から40分弱の乗車でほっとゆだ駅(旧称:陸中川尻駅)に到着する。一度来てみたかった温泉併設駅。もちろん私はほっとゆだ駅で下車する。
ほっとゆだで途中下車 by えきねっとQチケ
14時52分にほっとゆだ駅を出発する車両だが、ほっとゆだ駅到着時にはホームに大勢の乗客が待機していた。10名、いや、20名くらいだろうか。団体客かと思うくらいに大勢の乗客がホームにいて、意外だなと思った。「秋の乗り放題パス」の時期だからなのか、それとも地元の方々なのか、内訳はよくわからなかったが、ともかく賑やかなことは良いことではないか。
私はそんな乗客を満載した気動車をホームから見送り、駅構内を最後に出る乗客として改札に向かう。
ほっとゆだ駅には自動改札はない。駅の窓口は15時で終了のようで、私が下車して駅構内を出たら恐らくこれがもう最後の出改札業務なのだろう。そんな中、「えきねっとQチケ」のQRコードを表示した私が改札を通る。
私:「えきねっとのQRチケットで途中下車します」
駅員さん:「はい、、少々お待ちください、、」
明らかに戸惑われている様子だが、致し方ないだろう。
たぶん、えきねっとQチケの処理については初めてに近いのではないか。それも、途中下車処理という、輪をかけてレアな処理を持ってきているので、戸惑わないわけにはいかないだろう。
私は駅員さんに対し申し訳ないと思いつつも、今後も私のようなレアケースを持ってくる乗客が居ないとも限らないので、じっくり時間をかけてご対応いただいた。幸い、私が乗車する予定の、次の北上行が17時55分発で、その間3時間もある。温泉に入って周辺を散策してもお釣りが来るくらいの余裕があるので、駅員さんと改札口で一緒にアプリ処理と格闘することにした。
駅員さんはマニュアルを持ち出してじっくりと熟読されている。私はえきねっとチケットレスアプリやえきねっとQチケのウェブサイトをサブのスマートフォン(私はプライベートのスマートフォンを2台保有している)で確認してみる。
駅員さんは何度か駅員用タブレット端末を起動して私のQチケを読み込む。が、途中下車処理に相当する挙動は発生せず、マニュアルとタブレットを幾度も往復する。
セルフチェックイン・セルフチェックアウト
先に結論を説明すると、ここでミスをしているのは私の方である。
駅員さんの、駅務用タブレット端末は恐らくこのケースでは使う必要はなかったのではないかと推察している。
というのは、えきねっとQチケの利用ガイドを読むと、以下の説明がある。
https://www.eki-net.com/top/jrticket/guide/geton/ekinet_qtk.html
そう、「セルフチェックアウト」という操作をユーザー側で行い、駅員さんに提示するのが正規処理なのだ。私はウェブサイトのどこを見ていたのか。
また、私がこの「セルフチェックアウト」の処理に気づいたのは、北上に着いた後という始末で、何とも情けない。
北上で、正規の手順に則ってアプリの位置情報設定を利用ガイド通りに設定し、セルフチェックアウトの操作をやってみたところ、すんなりと途中下車処理ができた。何なら、プッシュ通知設定をオンにしたところ、ご丁寧に「セルフチェックインができる」みたいなプッシュ通知も表示された。
ということで、えきねっとQチケの利用ガイドはよく熟読した上で移動を開始することを強くお勧めする。
が、実際の体感としては、利用開始前に利用ガイドを読んでもイメージは湧きづらいかもしれない。位置情報設定とプッシュ通知の設定も、「それって必須?」と思ってスルーしかねない。
お試しデモサイトなどがあれば利用時のイメージが湧いて、準備もしっかりできると思った次第だが、私も適当な性格なので「実際に現地で触ればわかるでしょ」とスルーしてしまうかもしれない。
ただ、今回は「現地で触ればわかる」とまではいかなかったため、今後は新サービス利用時は事前の学習を綿密に行なって臨もうと思った。
話をほっとゆだ駅改札に戻す。
駅員さんと話し合った上、最終的には「今回は途中下車扱いをした、ということで、そのまま降りていただいて大丈夫ですよ」という結論に至った。
駅員さん:「本来は磁気券に途中下車印を押すんですけどね」
私:「アプリでも、そういった処理をするはずですよね」
という会話をしたが、素人のいち旅客たる私が過剰に出張ってはいけないと抑えつつ、頭の中では磁気券のオペレーションを想像してそれをアプリ処理に置き換えるとどうなるか、という脳内シミュレーションをしていた。
冷静に考えると、アナログ処理のメタファーでDXをするのは必ずしも業務効率化に結びつくとは限らないことが多いので、フルデジタルの世界だとどういうオペレーションが明快で効率的か、というアプローチでシミュレーションしてもよかったかもしれない、などと思った。
かれこれ気動車を下車して20分くらいは経過していたかもしれない。駅窓口の終業時間もとっくに過ぎてしまい、駅員さんの残業時間を増やしてしまった。重ね重ね申し訳ないと思いながら、私は改札を出て「エキタグ」の電子スタンプをゲットし、かつスタンプ帳に物理スタンプも押印して駅舎を出た。
ほっとゆだ
温泉併設駅として名高いほっとゆだ駅。もちろん温泉に浸かるが、北上線乗車記念かつ北上線全通100周年記念の「駅カード」を観光案内所でいただくことをまずは優先した。地方の観光協会窓口は閉まるのが早いケースが多いと思い、先に観光案内所を訪問した。
無事に駅カードをいただき、ほっとゆだ(温泉)へ。
3段階の温度に分かれた浴槽と、壁面の鉄道信号機が印象的だ。
個人的には最も熱い浴槽が体の芯まで温もってたいへん心地よかった。
湯上がりの牛乳も爽快感が半端ない。
湯上がりに駅前を散策すると、西和賀町の歴史民俗資料館を発見し、土地の歴史をクイックに学んだ。ご丁寧に、資料館を管理されている方からも一部の展示物の説明をいただくこともできた。
かつては鉱山があり、最近は温泉で著名になっている模様。
また、この地域の高校は近隣から学生を集め、熱心でこの土地ならではの教育がなされている模様。駅に高校のポスターが貼られていたことも印象的だった。
錦秋湖周辺ではマラソン大会もあるようで、大会の時期に鳥海山が見えるんですよ、というお話も伺った。鳥海山が眺められるという位置関係には驚いた。
閉館間際の時間にも関わらず、歴史民俗資料館で西和賀町の地勢と歴史について少しでも理解を深める機会が得られ、知的好奇心を満たす良い時間になった。
歴史民俗資料館を出て左に歩くと湖が見え、湖の向こうに北上線のトラス橋が見える。
錦秋湖はダム湖で横に長いようだが、どうやらこの歴史民俗資料館付近の湖も錦秋湖のようだ。
トラス橋を渡る北上線キハ100は、鉄道写真としては著名な構図かもしれない。日が暮れて夜のような情景になってしまったが、せっかくなので横手行の北上線を撮ってみた。
北上線 ほっとゆだ〜北上
さて、ほっとゆだ駅に戻って北上に歩みを進めようと思う。
駅には北上に向かうお客さんが集まっていた。私は早めにホームに向かって気動車を待った。
ほどなくして17時55分発734D、キハ100が到着。車内は私が横手ーほっとゆだ間で乗車した時ほどには混雑しておらず、空席がちらほら。私は席に座って暗くなった車窓を眺めながら北上に向かう。
えきねっとQチケについては、北上では自動改札にQRコードをかざして出場した。
先に述べたセルフチェックイン・チェックアウトについては、北上のホテルの客室で手順を理解し、食事をとりに外出して駅に着いた時にセルフチェックイン操作を試してはじめて理解した。
普通乗車券は日詰(北上から盛岡方面に5駅進んだところ)まで通用するが、私はもうこれ以上この普通乗車券で移動しないので、チェックインしたままの状態で放置した。「目的地に着いたらセルフチェックアウトしてください」というプッシュ通知が何度も来たが、日詰には行かないので通知は無視し続けることにした。
北上線 復路、そして秋田へ
翌日、北上発6時1分の723Dで横手に向かう。
当初はこの日もほっとゆだ駅で途中下車して朝風呂に入ることも考えたが、諸々の行程を考えて北上線の復路は北上から横手まで乗り通すことにした。
この日は北上から秋田までの普通乗車券を「えきねっとQチケ」で購入。北上ー横手ー秋田のルートは営業キロ100Km超なので、トリッキーなことをせず素直にこのルートの普通乗車券を購入した。
途中下車はまず横手で実施。横手はQRコードリーダーつき自動改札があるので、無難にかざして通過。
*以下、実際にえきねっとQチケを使用する場面の動画が続きますが、動画ではQRコードを隠していません。これは、えきねっとQチケのQRコードは一定時間経つとリフレッシュされ、同じQRコードをずっと使い続けられる仕様であることから、QRコードを隠さなくても不正利用のリスクは低いと判断し、QRコードのマスク処理を省略しています。
横手のスターバックスで朝のコーヒーを味わった後、再び横手の自動改札を入場。
その後、奥羽本線で秋田に直行。秋田もQRコードリーダーつき自動改札がある。ここでQチケを使って無難に普通乗車券を使い終えた。
北上線の復路では自動改札の無い駅での途中下車をせず、自動改札のある駅ばかりで乗降したため、セルフチェックアウト・セルフチェックインを実用的に使う機会がなかった。
今度再びえきねっとQチケで途中下車する際はセルフチェックアウト・セルフチェックインを実用的に使って、少なくとも駅員さんを戸惑わせるようなことをせずスムーズに乗降したい。
なお、秋田ではカーシェアを使って
・国際教養大学の学園祭見学
・奥羽本線和田駅でエキタグスタンプを取得
・寒風山と八郎潟訪問(八郎潟干拓の歴史学習がメイン)
といった場所を訪問。
16時17分秋田発のこまち38号で帰路についた。
これらの旅程は本稿の主題から離れるので詳細は省略する。
まとめ えきねっとQチケ所感
今回、「えきねっとQチケ」普通乗車券を使って北上線を乗り通してみた。
利用ガイドを読んで理解し、アプリの位置情報設定・プッシュ通知設定も欠かさず行うといった事前準備は着実に行なった方が良い。
しかしそれでも、利用中に想定外・予想外の事態や挙動が起こりうる可能性はあるだろう。使い慣れるまでは、不測の事態に陥ってもトラブルシュートの時間をじっくり取れるだけの心の余裕を持っておいた方がストレスなく便利にQチケを使えると思う。
なお、磁気券のように手元に物理的に記録が残せない点は「風情がない」と取られかねない点だが、メールの購入履歴やえきねっとの利用履歴を辿ることで「自分がいつどこに行っていたか」を追跡することは可能なので、これも好みの問題というか、割り切りではないかと思う。
個人的にはキャッシュレス・チケットレスを強く嗜好しているので、無駄に紙を出力しない傾向には大いに賛同する。
一方で、一般に広くキャッシュレス・チケットレスがストレスなく使えるまで、「慣れるまで」の時間は相応にかかると思われる。
一般の利用者に、第一印象で嫌悪感を持たれないサービスにするためにも、アプリの操作方法など、使い勝手に関わるノウハウはできるだけわかりやすく、かつ好印象を持ってもられるような伝え方の工夫があると良いのではないかと思った。
コストはかかるかもしれないが、レクチャー・サポートの場で利用者の方に実際に「お試し利用」してもらって、新しいスタイルのチケットに慣れてもらうような策が具体的に考えられると思うが、DXの過渡期には相応のコストがかかるものだよな、と利用者の立場からも改めて実感した次第である。
本稿に目を留めていただいた方も、過剰に臆することなく、気軽に新しいサービスを試してみて、便利な点は素直に活用してみていただきたいと思う。同時に、課題だな、もっとこうすると良いのにな、と思う点は率直かつ合理的な方法で表現することで、サービスが洗練される良い循環が生まれると良いように思う。