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ひかりの橇で

聖なる夜がやって来た
世界に
聖なる夜がやって来た
この町に

さまざまなお話を読んでしまった
この町の住民たち
それぞれの絵本の中に隠し持つ
冬空に広がる叢雲と星々
商店街のイルミネーション
そして永遠のきらめきと、ときめき

聖なる夜がやって来た
きみに
聖なる夜がやって来た
この町に

旭通りの蕎麦屋で
富士見通りのカフェで
谷保駅前の居酒屋で
みんな一杯やりながら、ご機嫌さんで
報道がうるさい夜でさえ
祝杯をあげている
だれもが酔っ払いの聖歌隊だ

聖なる夜がやって来た
ぼくに
聖なる夜がやって来た
この町に

宝石のような神々と
さまざまなスタイルの祈りがあるという
演説のひともいる
この町のひかりの橇で
今夜はどこまで繰り出せるのだろう

聖なる夜がやって来た
何人かに
聖なる夜がやって来た
この町に

戸口にて尋ねるひとよ
だから、今夜は歌ってくれ
多摩蘭坂から転げるようにして
シャウトするひとのように
肩を組んで飲もう
なにもなかったようなふりをして
夜の大学通りを歩く

雲もどかこに行ってしまった
なにもない夜の空が抜けている
闇と透明なものを
交換する
目に見えないものと
耳に届かないものを
今夜、ぼくは
遠くに旅立ってしまったきみに手紙を書く

聖なる夜がやって来た
世界に
聖なる夜がやって来た
この町に

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

◎国立ランブリング「創作ノオト」

いつものように、暮れになるの喪中欠礼の挨拶が届く。
いなくなったひとと、まだ生きているぼくたちの町にも
クリスマスがやって来た12月に。
もう、商店街にもクリスマスソングは流れないけれども、
美しい国立大学通りのイルミネーションがやけに目にしみ
る、ぼくたちの12月。
メーリークリスマス、と今夜は呟いておこう。

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