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朗読フリーの作品

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こちらにある作品は基本朗読フリーとなっています。 ※朗読する際はこちらのアカウントにDMでご連絡ください。(https://twitter.com/jamasin6) 語尾の変更…
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2023年5月の記事一覧

墓地の警備(局長の話)

私が遠縁のあるおじさんがから聞いた話。
おじさんは数年前まで、とある霊園の事務局で局長として働いていた。
当時も今も夏になると肝試しをしに墓地に来る若者たちがいて、また、そういう人達に限ってゴミを散らかし放題で帰っていくのだそうだ。
肝試しそのものももちろん困った話ではあるのだけれど、ゴミが一番の悩みの種だった。
場所が場所だけに放っておくわけにもいかなかった。朝早くからお墓参りに来る人たちも少な

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墓地の警備

これは俺が年上の従兄弟から聞いた話。
従兄弟がある霊園で働いているんだけど、ある年警備員が夜、墓地を巡回することになった。

「肝試しに来て余計なことをする若者たちがいてね」
墓地で花火をしたり、勝手に飲食をしてごみを捨てて帰る人はもともといたけれど、その年は特に多かった。
従兄弟も正直今更だよなと思いつつ、巡回が始まることは歓迎していたらしい。
ところが、あるとき妙なことに気が付いた。
頻繁に警

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リクライニングベッド(朗読:絢河岸 苺様)

これは友人がとある職員として病院で働いていた時の話。
その病院には普段使われていない部屋がありました。
入院用の個室なんですけど、その部屋のリクライニングベッドにいわくがあり、どうしても部屋が足りないとき以外は使わないようにしていたそうです。
「スイッチを押してもいないのに頭の部分が勝手に持ち上がる」そんな誤作動がときどきあったそうです。
そして、この誤作動が起きた時、そのベッドを使っていた人は必

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ビルの地下にあったもの

とある建築現場の監督から聞いた話。
大手の建設会社に勤めていた男性は、もともとはオカルトには半信半疑の人だったらしい。
ただ、とある工事をきっかけにすっかり信じるようになってしまった。

その工事は5階程度のあまり大きくはない会社ビルの建設だった。
工期通りに工事は進んでいて、ビルの基礎、つまり土台ができれば、あとの工事も順調に進むだろうと思われていた。
そんなときだった。
ある一区画が、雨が降っ

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バスが来ない (朗読:かすみみたま様)

当初は家に帰りたいという意味で言っているのだと、友人や施設の人たちは思っていた。
入所する人の多くがバスか自家用車で最初訪れる。
老人の場合はバスに乗ってだったから、同じバスに乗れば帰れると信じているのだとみんな思ったのだ。
それから、来る日も来る日も「バスはまだか?バスはまだか?」と老人は言い続けた。
「赤いバスはまだか?赤いバスに乗りたいんだ」そう繰り返した。

ある職員の一人が見かねて段ボー

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