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後悔ではない

数年前にあるアーティストの楽曲依頼を受けた
じつはとても好きなアーティストで、事実こちらの作品に参加オファーしたこともあったが、諸事情で断られた。
そんな過去はしかしどうでもよくて、このひとに曲を書けるチャンスがあることに嬉々とした。
直感や感情その他使えるもの全てを投じて自分の中のセンチメンタル且つ変則なピアノバラッドのデモを生み出した。
そしてとても気に入った。
この依頼の背景には別のプロデューサーの存在があり、その方を信頼もしていた。そして僕の仕事は曲の提供のみ。
そして完成して送られてきた作品は僕の想像とは全く違うものだった。良い悪いではなく、違う作品なのだった。
そして、事前にそのプロデューサー氏から釘を刺されていたことを思い出した。このアーティストのあの特定の時代のムードを期待していると、少し違うかもしれません、と。

僕が好きだったそのアーティストの音楽的な面影は今回の作品からは全く感じとれなかった。互いの人生や音楽のフェイズが合っていなかったのだ。

失敗でも後悔ではなく、これは人生の殆どのことがそうであるように過去には生きられないという教訓なのだと思った。
そしていつか、この曲に込めた僕の感情を表現する人に出会ったらそのとき新たに録音しようと心に誓った。
それは答え合わせではなく僕にとっての過去と未来が交差するレトロフューチャーなのだ。

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