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創造と破壊(詞、短文、フィクション)

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主に詩や短文、フィクションなど書き連ねています
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2021年5月の記事一覧

種火

心を駆けるひかり 同じ速度で貼りつく漆黒の闇 気づくことが出来れば先を行くことができる しかし、ほとんどは深すぎて気づけず、覚醒した時にはすでにギラついた鉛に足元を固められる ひかりは、速さの何百倍もの圧力で扉を開けようとするけど、それもまた気づけなければ無と成り 安穏にも似た脱力感のうちに闇に飲み込まれる ひかりの持つ正の熱に向かえない時、冷え切った魂に種火を灯せるのは 本当の愛しかない エゴや意識を超えた 愛にしか成せないこと

その映画館は... 2

二名の警官に客席の間を引きづられるよう出口へすすむ。 やっとの思いで声がダイレクトに届く距離に友人がたどり着いた。 「柳田先生に電話!」 柳田先生は弁護士で、幸いにというか偶然というかその日一緒だった友人の紹介で以前お世話になったことがあった。 劇場を出るとかなり旧式のパトカーが待ち構えていて、劇場の古さと妙にマッチしていてなんら違和感がなかった。 即されるままにパトカーに乗り込む、テレビで良くみる両側に警官が座り 間に容疑者が乗せられるあのままになった。 手錠こそかけ

その映画館は...

昔ながらの建物で、座席の配列もいわゆる昔の劇場てきなもので、端のほうにいくにつれ緩やかにラウンドしてステージを取り囲むようになっている。 通路も無駄に広く作られていて、柵もなにもないので、夏休みで東映まんがまつりなどが上映される時期には子どもたちが駆け回っていたんだろうと想像がつく。 そんな懐かしさに誘われて僕らはどんなものが上映されているのかもあまり調べずに足を踏み入れた。 というのも、ここで今夜催されるものは知人が制作に関わった作品のプレビューで、どうしても僕に観てほ