【レコーディング編】ベース
エレクトリックベース・ギター(以下、ベース)のレコーディングについて解説します。
プレシジョンタイプには注意
レコーディングにプレシジョンタイプのベースを持ち込まれる場合があります。ブリッジ近くにピックアップが付いたPJタイプであれば、まだ可能性はありますが、プレべはミックスでうまくいきません。ライブなどでブリブリと鳴らすには良い楽器なのですが、レコーディングには向いていません。一度プレべをレコーディングしてみると、その扱いにくさが分かります。ただし、その上で音作りを完成させることのできるベーシストであれば、ミックスでどのような音になるのか理解されているので、そのままレコーディングするのもアリでしょう。ベーシストがこだわりを持っていなければ、事前にジャズベースタイプのものを手配しておきます。必ずしも高級なベースである必要はありません。
基本はパッシブでDI直結
レコーディング時、アンプで音を完成させることができたとしても、耳で聴いている音とマイクが拾う音は異なります。まずはピックアップの音を直接レコーディングしておきます。アクティブベースの場合はパッシブに切り替えておきます。アクティブベースの回路自体は、それほど高音質に作られていません。9Vで動作させることのできる回路には限界があります。
DIで信号を分岐させることができれば、ベーシストの希望する音として、キャビネットから1mほどの位置にサイドアドレス・コンデンサーマイクを大雑把に向けてレコーディングしておきます。この音がベーシストが聴いている音に最も近いものです。アンプの設定など、セッティングは撮影しておきましょう。ミックスダウンで役に立ってくれます。
オーディオインターフェースで音質が決まる
オーディオインターフェースがハイインピーダンス入力を持っている場合、回路的にはそこへ直結するのが最短となります。仮に素晴らしいDIがあったとしても、オーディオインターフェースの入力回路によって、その音質は維持されません。ベースから出力される信号はそれほど大きくありませんから、ADコンバートするにはプリアンプが必要です。やはりここでもデジタルプリアンプが現実的な選択になります。
高音質DIは簡単に自作可能、ラインスプリッターにもなる
ここまでをまとめると、パッシブタイプのジャズベースの音をオーディオインターフェースとアンプに分岐し、それぞれレコーディングするということになりますが、この「分岐」が第一の音質劣化ポイントです。ベースアンプがラインアウトを持っている場合もありますが、わざわざ音質を劣化させてレコーディングするより、高音質なDIで分岐したほうが賢明です。また、全てのベースアンプがラインアウトを持っているとも限りません。
「DI」というと何か特別な機器のように思われるかもしれません。しかし実際は電子回路の基本とも言える、ただの電流バッファですので、作ってみると意外と安価で簡単に高音質が手に入ります。
ベースやギターのレコーディングで重宝する「DI+ラインスプリッタ」は、是非持っておきたい道具の一つですので、回路図とその材料を公開します。
DI-Line Splitter 回路図と材料
電源
DI
パーツ詳細
V1 汎用スイッチング電源DC15V
R1, R2 TAKMAN REY 10kΩ
C1, C2 Panasonic SEPC 470μF/16V (16SEPC470M)
C3, C4 Enesol 高分子コンデンサー 47μF/50V (50RHV47MD11)
C5, C6 積層セラミックコンデンサ 0.1μF
C7 Panasonic プラスチックフィルムコンデンサ 0.47μF
R3 TAKMAN REY 1MΩ
R4 Vishay Dale NS-2B 33Ω
U1 新日本無線 MUSES03
箱、ジャック、基板は汎用のものを使うとして、5000円くらいで完成すると思います。入力インピーダンスは1MΩと充分に大きくしているため、R1にはほとんど電流は流れず、output1(スルーアウト)も可能にしています。電源部の耐用時間が短い分、市販品とは比べ物にならない音質です。
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