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加速する 利用者が楽しくなる米国リテール ビジネス

 年明けのイベントと言えば Las Vegas で開催される CES を思い浮かべる方は多いと思いますが、米国では CES の直後に毎年 New York City で開催される National Retail Federation が主催する世界最大級のリテール ビジネスの展示会 NRF Retail's Big Show も注目を集めます。今年は特に顧客体験を改善したり、買い物を楽しめるサービスが多く紹介されていたように思います。


 注目の一つは米Amazon の Cashierlessサービス「Just Walk Out」及び店舗向け手のひら認証サービス「Amazon One」で、Amazon はこれらの技術をリテール業界に展開を始めていて、Kansas City市の生鮮食品スーパー  Community Groceries などが導入を開始しており、買い物客にレジ精算行列のストレスを減らす店舗体験を提供しています。
スーパーなどで支払いの行列に並ぶのは決して楽しい体験ではなく、日常の買い物で少しでもストレスを減らすことができることは、利用者としては嬉しい限りです。


 また最近米Microsoft もリテール ビジネス向けの展開を加速していて、Cashierlessサービスのベンチャー AiFi とパートナーシップを結び Microsoft 「Smart Store Analytics」クラウドサービスのプレビューを開始しました。Microsoft の「Cloud for Retail」製品群の一部である Smart Store Analytics は、AiFi の技術を利用する小売企業に買い物客分析やオペレーション分析を提供するものです。
Microsoft はサプライチェーン向けにも  AI やローコード、セキュリティ、SaaS アプリケーションなどを連携させた新たなプラットフォーム「Microsoft Supply Chain Platform」をリリースしていて、サプライチェーンのインテリジェンス、需要と供給に関する洞察、パフォーマンスの追跡、サプライヤー管理、リアルタイムのコラボレーションの支援に加え、フルフィルメントの最適化や、価格の管理、倉庫管理、在庫の最適化、注文の管理も支援します。またプレビュー版の「Microsoft Supply Chain Center」は、顧客のサプライチェーンに影響を与える可能性がある世界各地の事象を追跡し、サプライチェーンをまたがったアクションを調整するとともに、AIを活用して需要と供給のミスマッチを低減させるサービスを提供します。


 そして個人的に注目しているのは米Alphabet の Googleで、今年の NRF 2023 Retail's Big Show 直前に小売業者が店舗内の棚チェックプロセスを変革し、顧客にとってより流動的で自然なオンラインショッピング体験を提供する ECサイトを強化するための AI技術を発表しています。
一つ目は「Vertex AI Vision」で、 この棚チェック AIソリューションは人、場所、物に関する Googleのデータベースを活用し、小売業者が大量の商品を認識し店頭の棚のサイズと品揃えを確保する能力を提供。
二つ目は「Discovery AI」ソリューションで、新しいパーソナライゼーション AI機能と AIを活用した新しいブラウズ機能を導入、小売業者がよりダイナミックで直感的なショッピング体験でデジタルストアをアップグレードできるよう支援。
三つ目は「Recommendations AI」で、小売業者が eコマースページの商品注文やおすすめパネルを最適化し、リピート購入のためにパーソナライズされた提案を可能にする新しい機械学習機能を提供。


 リテール向けサービスのデジタル化は IT大手だけでなくリテール最大手の米Walmart も、外見も体型も自分に似ているモデルで服をよりイメージしやすくする、AIを活用したバーチャル試着技術「Virtual Try-On」や「Be Your Own Model」、「Choose Your Model」などのサービスを開始しています。既存のファッション モデルを選ぶのではなく、買い物客が自分の写真を使って洋服の着こなしを確認することが可能になり、結構楽しいです。
このバーチャル試着技術は 2021年に買収したイスラエルのスタートアップ Zeekit を活用、コンピュータビジョンとニューラルネットワークを使い、衣服のカタログ画像を解析して着せ替え画像を作成することが可能になっています。


 昨年は Apple の iPhone を店頭決済端末とする「Tap to Pay」サービスに注目が集まっていました。一般的な決済サービスは決済時に読取り端末が別途必要なのに対し、追加デバイスなしで顧客側の Apple Payやタッチ決済対応のクレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットなどを、店舗側の iPhone (NFC対応のiPhone XS以降) にかざすことで決済が完了する仕組み。
また Apple Wallet に運転免許証や州政府が発行する ID を登録できるサービスがアリゾナ州などでスタートし、まずは空港の手荷物検査時の身元確認において iPhoneや Apple Watchをタップして ID提示が可能になったのも印象的でした。

 最近のリテール ビジネスはオンラインと実店舗の融合が進んでいるように感じていて、オンライン及び実店舗においてデジタル化が進んでいるのはとても興味深いです。これは自分の日常生活にも影響してきていて、日々の買い物がスムーズになっているのを感じる今日この頃です。

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