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若木信吾の「つかずはなれず」写真講座

写真家の若木信吾です。 写真に関するあれこれです。写真家たちのインタビューや、ちょっとした技術的なこと、僕の周辺で起こっていること、それらについて考えていることなど、ざっくばらん… もっと読む
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#若木信吾

スティーブンショアのモダンインスタンスModern Instances

スティーブンショアのモダンインスタンスModern Instances

「ためになるものへの警告」と僕は読む
 スティーブン・ショアは写真家としてはもう巨匠なのだが、アメリカの今の若い人たちにとっては大学の先生の一人だと思っている人もいるかもしれない。僕ら写真集好きにとっては、もうこれまでの素晴らしい写真集の数々でも圧倒されてきたのに、未だ精力的に撮影を続けている憧れの写真家のひとりだ。最新刊の写真とエッセイの組み合わされた「Modern Instance」というタイ

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自分が撮った写真の中に何が隠されているのか

自分が撮った写真の中に何が隠されているのか

 今年に入ってVoicyを始めた。自分の日々の仕事や日常を話していることが多い。頻度が高いため、これで大丈夫なのかとか、(自分もリスナーも)飽きてしまわないかと早くも心配になっている。まだ30回くらいしか放送していない。このnoteを月一と考えるとVoicyはかなり多い。しゃべりはノリでなんとか乗り切ろうとしているからやれているのだろう。noteとVoicyでは用途が違うような気がする。noteは

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積水ハウス住宅展示場での展示

積水ハウス住宅展示場での展示

 Note編集部さんから「写真家にnoteが役立つ3つの理由」の記事でオススメいただいた、イオンモール浜松市野店での展示の記事「ショッピングモールで写真展」をお読みいただきありがとうございます。去年自分の中でも一番やってみて面白さと可能性がある展示だと思いました。

 そして今年もまた新しい展示のチャレンジの機会をいただきました。昨年、住宅展示場の商談ルームに飾る写真をご購入いただいた積水ハウス浜

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かたずけをさえぎるもの

かたずけをさえぎるもの

 僕の現在の事務所は最近でいう、シェアオフィスという感じで、建築家の谷尻誠さんの会社にデスクを借りている。それまでは、マンションの一室を事務所にしていた。現在の場所に引っ越しするために多くの荷物をトランクルームや、実家の方に分散して置いているが、その中の主なものに写真のネガやプリントがある。大学の頃からの分を考えると、32年分、ここ10年くらいはカメラのデジタル化でフィルムの量はだいぶ減ったが、こ

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写真集とストーリーテリング

写真集とストーリーテリング

 Youngtree Diary #2がまもなく完成します 。前回に引き続き、15人の執筆者による日記を時系列にならべたものです。今回はさらに文字分量が増え、ほとんど読み物の作りになってしまいましたが、日記自体もとてもいいものになってます。

 写真家なのに、これほど文字ばかりの本を作っているのも不思議なのだが、言葉という伝達方法に憧れを持っているからかもしれない。自分が写真を主に使ったビジュアルコ

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いい写真とおしゃれな会話

いい写真とおしゃれな会話

 最近代官山の蔦屋に行くことが増えたのは、パーキングエリアの中に車の充電スポットができたからだ。以前は事務所が近くにあったから、ふらっと立ち寄ることはあったが、事務所を今の場所に引っ越してからは用事がなければほとんど行かなくなってしまった。それが車の充電を理由に週1、2回も行くようになった。しかし、その充電器は超高速大容量なので、だいたい30分もあれば満タンになってしまう。書店での30分はあっとい

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旧盆

旧盆

 七月は旧盆で、実家がある浜松は旧暦でお盆を迎える。13日の父のインスタグラムに迎え火の様子が写っているのをみて、お盆だったと気がついた。東京にいるとすっかり忘れてしまう。お盆とは夏休みのことだとばかり思ってしまう。迎え火のヴィジュアルは独特で、一瞬に子供の頃の記憶が蘇る。キャンプファイヤーの炎よりはずっと小さいが、マッチが燃えてるよりはずっと炎らしさがある。花火よりも直接木を燃やす方が刺激的だ。

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Episode #7
トムウェイツとナポレオンピッツァ

Episode #7 トムウェイツとナポレオンピッツァ

 スーパーラボ・ストア・トーキョーでの展示も無事始まり、写真集も発売されました。是非手にとってご覧ください。紙も印刷もすばらしい出来です。

 ナショナルシティについて調べていた時にもうひとつわかったのは、若い頃のトムウェイツがナショナルシティのナポレオンピッツァで働いていたということだ。その頃の歌が、僕の好きなアルバム2枚に入っていた。まさかこのジョーとサルのピザ屋さんにいけるとは!ハートオブサ

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Episode #6 ロチェスターのベトナム料理

Episode #6 ロチェスターのベトナム料理

写真集「Things and seen」いよいよ明日金曜日発売です!!! 神保町のSUPER LABO STORE TOKYOで夕方からレセプションがあるのでぜひお立ち寄りください。

 30年ぶりに戻ったロチェスターで、最初の夜に行った店は全く馴染みのない、ネットで検索した中華の人気店だった。こじんまりとした店構えと、味は悪くないが、込み合った夜のレストランにひとりで食べに行くのはいつでも気がひ

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Episode #5

ナショナルシティ

Episode #5 ナショナルシティ

 スーパーラボからいよいよ今週末に出版される新写真集「Things and seen」に入っている写真たちのエピソードを綴る第5回目はナショナルシティについて。

 去年、2019年の三月に訪れたサンディエゴの大きな目的は映画「TOTEM Song for home」のUCSFでの上映会だった。UCSFの教授を務める宮尾大輔さんが、その時アジア映画について教えていた流れで、日本人が撮った台湾のドキ

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Episode #4 幽霊の写真

Episode #4 幽霊の写真

 2019年は井上円了先生a.k.a妖怪博士の没後100年だったそうだ。この写真を撮ったのはその10年前の2009年のこと。井上円了先生が中野に作った哲学堂というものがあって、その入り口は哲理門という。その哲理門の両脇には木で作られた幽霊と天狗の像が奉納されている。現在はレプリカに変わってしまっているが、僕が撮った当時は結構痛んだ状態であったが、オリジナルが置いてあった。

 円了先生は明治の頃、

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EPISODE #3 サンディエゴ、ジェリーの家

EPISODE #3 サンディエゴ、ジェリーの家

 2019年の3月、 詩人のジェローム ローゼンバーグ氏のお宅を訪ねた。詩人の伊藤比呂美さんが住んでいた家の目と鼻の先にあり、奥さんのダイアンさんとふたりで住んでいる。彼らは同じ87歳、とても元気だ。今日は大ちゃん(今回UCSDの大学院のレクチャーで呼んでくれた宮尾教授)が、インタビュアーだ。ジェリーさん(ジェロームさんの略称)の家は住みはじめて40年経つということだがとても綺麗な外観とインテリア

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