架空の可能性

最近、1日10分くらいピアノを練習している。
子供が習い始めた時に使うような楽曲集(超初心者向けのクラシックや童謡などが載っているやつですね)をただ弾いているだけなのだが、
何を隠そう音楽の仕事をしているにも関わらず全然ピアノが弾けない。
こんなことを書くと仕事が減るかもしれないけれど...
毎回ピアノや鍵盤のレコーディングには本当に(ほんとーーーに)時間がかかっている。

なんとなく毎日練習するようになり、少しずつ
「なるほど、こういう感じで弾くのかぁ」
と以前よりは鍵盤との距離がわずかに縮まったように思う。

でもそれと同時に、これからいくら練習したとしても(上達したとしても)
自分がギターに対して感じているような特別な感覚はもたらされないのではないか、とも思う。
まあ当然ですよね。ギターはもう25年くらいやっているわけで、それと同列に比べることは不可能、というかフェアじゃないですね。

ただそういう時間的なことを抜きにしても、やはりギターに特別なものを感じるのは、単純にギターが好きなんだなと、改めて思い至る。
25年も続けて、しかも仕事にしていると
「ギターが好きか」
というシンプルな問いに、シンプルに答えられなくなってくる。
「これだけ続けてるから好きなんだと思うけど、仕事でもあるし...」
実際仕事が続くと今日は弾かなくていいか...みたいな日もあるわけで。

たまに思うんです。ギター以外の選択肢もあったんじゃないかなと。
違う楽器。いや、それだけではなく音楽とは違う職業。違う可能性。

でもふとしたきっかけで(今回のピアノのように)実際に違った視点から今の自分を見ることが出来た時、
「あ、これしかなかったんだな」
と妙に腑に落ちてしまうのです。すとん、と。

そんな架空の可能性よりは、自分が選んできたものを気に入って大事にするほうが日々楽しく過ごせるのではないかと、白と黒の鍵盤を見つめながら思うわけです。

そういうわけでピアノの練習はほどほどでいいかなと思っています。

目指せ書籍化📓✨ いつかライブ会場のグッズ売り場にエッセイ集を平積みにしたいと思います。