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「ジェンダー平等」を分解しよう

 「ジェンダー平等」は誤訳ですの続き。gender equalityを「ジェンダー平等」と訳してしまったことで、「ジェンダー平等」にはgender equalityにはない意味が生まれてしまった、と考えています。それが混乱と誤解のもととなっています。少しでも「ジェンダー平等」の混乱と誤解が解けるように、この文章を書いてみます。

 今使われている「ジェンダー平等」には、主に3つの違う側面があると思います。
 「男女平等」「ジェンダー解体」「性的マイノリティの権利保障」の3つです。それぞれ目指すものも、ベースになっている認識も違います。協調することもありますが、ぶつかることもあります。「ジェンダー平等」について語るとき、どれについて語っているのかを考えるのは大事だと思います。

◆男女平等
 もともとのgender equalityの範囲です。男女平等と訳していますが、実際にはSDGsゴール5で見たように、【女性の】差別撤廃や地位向上や権利保障の話です。なぜなら、ベースになっている認識が、”女性は男性に比べて不当に虐げられている”というものだからです。
 例えば女性専用車両は、女性が痴漢男性に脅かされていて安心して電車に乗れないという認識のもと、女性が安心して電車に乗る権利を保障するために設けられています。男性が女性に脅かされるという状況はないと思われるため、男性専用車両は設けないわけです。
 男性に脅かされずに利用する、ということでは、女性トイレや女性更衣室などの女性スペースの確保も女性の権利保障のためです。

◆ジェンダー解体
 社会的文化的性別としてのジェンダーは、「男らしさ・女らしさ」「男の服装・女の服装」「男の仕事・女の仕事」という性的表現・性的役割と表裏一体です。 「ジェンダー平等」の中には、この性的表現・性的役割を見直し解体するという側面があります。ベースとなっている認識は、性別による性的表現・性的役割の固定化は不当である、というものです。
 例としては、男女の体操服の色の指定をやめて統一するとか、女子の制服にスラックスを導入するとか、会社のお茶くみを男性もするとか、でしょうか。
 「ジェンダー」そのものを解体するわけなので、「ジェンダー平等」は自己矛盾している、という批判のもとにもなります。

◆性的マイノリティの権利保障
 LGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル)などの性的指向の少数者と、T(トランスジェンダー)などの性自認の少数者と、いろいろな形で性的にマイノリティである方々がいます。これらの人々を認め、差別をなくし、権利を保障しようという側面です。ベースとなっている認識は性的マイノリティが不当に差別されているということだと思いますが、その前に性的指向や性自認が生来的で恣意的に変更不可能なものであるという認識があるようにも思います。
 例としては同性婚とか、トランス女性が女性スポーツに参加できるようにするとか。

 今日本で語られている「ジェンダー平等」は、この3つの側面(もっとかも)がごちゃまぜになっていると思います。「ジェンダー平等」を分解し、どの側面について語っているかを意識したいと思います。

(2022.9.26追記。性的少数者の例示から「インターセックス」を消しました。理由については以下のサイトをご覧ください。)


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