「300年後に実現する完全なジェンダー平等」とは何かを解説する
こういう記事が出ました。
https://www.afpbb.com/articles/-/3422792
完全なジェンダー平等実現「300年近く先」。
この見出しにはいろいろ問題がありますが、なにより問題なのは「完全なジェンダー平等」が「300年後に実現」する、と読めることです。
「完全なジェンダー平等」ってどんな状態?
「300年後に実現」ってそんな未来のことわかるの?
とまあ疑問はわくでしょう。そんなあなたのもやもやを解消します。
タネあかしをすれば、この記事の元になった国連のニュースはこれです:
https://news.un.org/en/story/2022/09/1126171
これは、SDGsの進捗具合についての国連レポートに関する記事です。なので見出しの意味はこうなります。
報告によれば:(もっとお金やリソースを)投資しないと、(SDGsゴール5の)男女平等には(2030年の期限よりずっと先の)300年近くかかる
要するに、このままじゃ間に合わないから、ペースを上げろと言っているんです。
一番足を引っ張っているのがclose gaps in legal protection and remove discriminatory laws、法的保護の男女格差解消と女性差別的な法の撤廃、つまり法的整備の項目で、このままのペースだと286年かかることになる、というわけです。286年たったら実現するわけではない。8年後の2030年に実現するために、急げ、と言っているのです。
また、gender equalityは「ジェンダー平等」と訳すべきではありません。SDGsゴール5のgender equalityは徹頭徹尾、女性の差別撤廃、女性の権利保護、女性の地位向上の項目です。せめて男女平等とすべきです。日本語の「ジェンダー平等」にある「(性的)多様性の尊重」といった内容は、gender equalityにはまったく含まれていません。
最初の記事の見出し「完全なジェンダー平等の実現」に戻れば、「完全な」は「実現」にかかっているのが本来です。gender equalityの完全な実現には法的整備はかかせないので、全体としてこのままだと2030年に間に合わなくなる(だからもっと金とリソースを回せ)という話です。「完全な」を「ジェンダー平等」の前においてセンセーショナルな誤読を誘う、こういうテクニックはいやらしいと思います。まあ「男女平等という目標の完全な実現は、このままでは300年近くたっても達成できない」では人目をひかないのはわかりますけど。
以上です。
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