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【ミカタをつくる広報の力学】 #01 賛同される「説得力」のつくり方

広報担当者が社内で理解や協力を得るために、どうやって周りにミカタをつくっていくか。私の実体験をもとに、ミカタのつくり方を綴るコラムの1回目です。

※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、わかりやすいかと思います。


ミカタをつくる、つまり理解や賛同を得るには、こちらの話に「価値がある」と判断されなくてはなりません。そのためには相手がそう判断するだけの「説得力」が不可欠です。

今回は「説得力」について書きます。

お急ぎの方は、まとめだけでもどうぞ。


先にザックリとした結論

「まとめだけでも」と書いたものの、目次でもネタバレしているので気が変わりました。お急ぎの方のために、先に結論を書きます。

あくまで持論ですが、説得力を持たせるのに効果的なのは、相手が納得できる「理屈(論理)」と、相手のニーズを知るための「情報」、相手に分かってほしいという「熱意」の3つです。

以上、ザックリとした結論でした。またお時間のあるときに、ごゆっくりお立ち寄りください。

本編はここからです。

「説得力」は「信じてもらえる力」

かつて私が企業ブランディングを頼まれたのは製造業の会社でした。それまで在籍していた広告会社を辞めて、リブランディングのためにその製造企業に入社。まずは社内で情報を集めようと、いろいろな部署にヒアリングをすることになりました。

「この会社のイメージを変えるために来ました」と言って、簡単な自己紹介をしてから話を聞くのですが、どの部署でも微妙な温度差を感じるんですね。聞かれたことだけに答えるような、全然積極的になってくれない感じ。なんか警戒されているような空気感。

「自分たちが守ってきた製造業をチャラチャラした広告屋がぶち壊しに来た」とか、「他所者がいきなり来て偉そうに」とか、「モノをつくってないヤツに何がわかる」とか思われてたのかもしれません。
被害妄想だけがどんどん肥大化します(笑)

これはもちろん私が悪いんです。私が信じてもらえてないから、相手は真面目に聞いてくれないんですね。つまり「説得力がない」状態なのです。

ではどうすれば説得力を持たせられるのか。結論で紹介した3つに沿って書いていきましょう。

1.相手を主役にした理屈

「説得」というのは、「相手の納得」をゴールとして行うので、ゴールの権限を握っているのは、もちろん相手です。つまり「相手が納得できるような理屈」が説得力を持つということになります。

だから、誰かの協力が必要なときは、自分の理屈では組み立てないようにしています。自分と相手が目指すものが同じだったとしても、まずは自分の理屈を横に置きます。相手を主役にして、相手を中心とした理屈で、ものごとを考えていくのです。

言い換えると、相手にとっての「自分ゴト」にするということです。

会社のブランドイメージを変えるために、その中身として各部署の仕事を知る必要があったのですが、主役を会社から部署の担当者に替えて、改めて話しに行きました。

「あなたの仕事に興味があります。いろいろ教えてください」と言って見学させてもらうことにしたんです。

結果、どうなったか。

会社とか仕事とか関係なく「あなたの仕事に興味がある」というように変えただけなんですが、少しずつ相手をしてくれるようになりました。会社のためのヒアリングなら他にもいますが、「あなたの仕事」となったらその人以外いませんからね。

もちろん、いきなり「興味がある」と言われても信じるわけはありません。
信じてもらうために事前にしていたことがあります。それが情報収集です。

2.相手のことをよく知ろう

会社のリブランディングをするにあたって、あらかじめ様々な情報収集をしていました。

具体的には、会社創業からの歴史や各事業・製品の詳細、特許・技術などの様々な情報を、会社案内やホームページはもちろん、ネットで検索したり実際の売場を見ることで勉強しました。

そのときに、その会社の独自の技術や有名な賞を獲得しているプロダクトを知って、実は、本当に興味津々だったんです
車掌さんにインタビューする鉄道少年のように、目をキラキラと輝かせていたかもしれません(笑)

見知らぬ土地で同郷の人に出会うとホッとするように、自分と同じレベルで会話ができる相手には警戒心を解いていきます。相手のことをよく知ることで、コミュニケーションはかなりスムーズになるでしょう。

上記で説明した「相手を中心とした理屈」も、相手のことを知らないと組み立てにくいものです。企画書などでも「ニーズの考察」とか「課題の発見」といったページの前には、必ずといっていいほど「現状把握」というリサーチ結果のページがあります。

相手に理解してもらうには、まず先にこちらが相手を理解しなくてはいけないということなんです。

3.結局「熱意」が大切

相手のことを入念に調べるのも、相手の立場を考えて理屈を立てるのも、かなり根気のいることだと思いますが、いざ目の前にしたときの気迫が最も本気度を伝えられると思います。

どんなに完璧なデータと澱みないロジックで攻めても、熱意を感じないプレゼンでは相手の心を動かすことはできませんから。

ですが、あまり暑苦しいとウザがられてしまうのでご注意ください。

まとめ

最初の結論に書いたように、相手が納得できる「理屈(論理)」と、相手のニーズを知るための「情報」、相手に分かってほしいという「熱意」の3つが説得力を増強します

「熱意をもって、相手をよく知り、相手のことを考えてコミュニケーションをとろう」と書くと、すごく当たり前のことのような気もしますが、現実とは案外そういうものなのかもしれません。

それでもたまに説得力のない話があるのは、この3つのいずれかが欠けているからなのでしょう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ではまた次回お会いしましょう。

ご意見・ご質問は、コメント欄またはお問合せまでお願いします。

おまけの独り言

プランニングやクリエイティブといったプレゼンテーションを行う専門職になると、上記の3つで形成される「説得力」に加えて、新しいことを企画する「発想力」と、わかりやすく見せる「表現力」が加わります。

相手が納得できるような理屈」についても補足します。

理屈」というのは、大抵の場合「因果関係」を示しています。つまり「原因と結果」。逆に見ると「目的と手段」です。さらに余談ですが、論理思考だと前者、デザイン思考だと後者で考えることが多いと思います。

理屈が納得できる状態というのは、この因果関係が理解できて受け容れられる状態を指しています。別な言い方をすると、根拠が自分の中で明確になっている状態。正に「自分ゴト」化された状態のことです。


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