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【ミカタをつくる広報の力学】 #04 技術部門にミカタをつくる

広報担当者が社内で理解や協力を得るために、どうやって周りにミカタをつくっていくか。私の実体験をもとに、ミカタのつくり方を綴るコラムの4回目です。

今回は、技術部門の人をミカタにしたときの話です。

前回の開発部門と比べて、技術部門は職人気質になりがちなので、コミュニケーションハードルが若干高いかもしれません。

とはいえ、製造業においては製品や品質について詳しく語れる重要なポジションなので、ミカタにできると強いです。

※ここでいう「技術部門」は、「技術開発部門」ではなく「生産技術部門」のことを意味しています。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


技術部門は頑固な職人?

技術部門が開発部門(R&D)と大きく違うのは、コスト部門ではなくプロフィット部門であるということ。製造業における技術部門は、生産部門を動かす事業の根幹を支えているといっても過言ではありません。

私がいた製造業の会社では、製品PRはもちろんのこと、企業PRとして品質やテクノロジーをアピールするときなどにも技術部門に協力してもらっていました。

その際、冒頭に書いたような、職人気質の「匠」たちと折衝するわけです。ちょっと、おっかない(笑)
もちろん悪い人ではないんです。ただ、プライドは高い。良い意味で。

開発部門との違いはプロフィット部門であることと書きましたが、それだけではありません。

得意先からのオーダーに応えたり説明する機会があるため、顧客の顔や反応が見えている。さらにアウトプットは実製品なので、自分の生み出した成果が目に見える形で表れる。

これらの要素を自覚できるため、プロフェッショナルとして自分の仕事に誇りが持てるのです。
だから、正しいと思えることは譲らない。絶対に妥協しない。

少々めんどくさい相手ですが、ミカタにすれば抜群に頼りになるタイプです。こういう人は損得勘定では動かないので、相手のメリットを提供しても何の効果もありません。

ではどうするか。


プロ同士のガチンコ勝負

そうです。お互いプロ同士としてガチンコの対話をするしかないのです。

向こうは、いわば専門性の高いフィールドで、狭く深く掘り下げるスキルを積んでいます。だから、まず専門用語が難しい。そして、形あるものへのこだわりがすごく強い

一方こちらは、広く知らしめるために専門用語は少なくして、誰にでも伝わるコミュニケーションを目指します。さらに、PRという目に見えないものを扱っているので、職人気質の人とはお互いに相容れない関係かもしれません。

でも実は、プロという自覚をもって仕事をしている人は、フィールドがまったく違っていても、自分と同じようなプロの話はしっかりと聞くんですよね。

だから一番重要なのは、「広報のプロ」として信用してもらうことなのです。それをわかってもらうには、「どれだけ準備をして臨んでいるか」で概ね伝わります。

当時の私の仕事は、社内だけでなく、社外の専門家を取材することもあったのですが、都度、相手のフィールドを理解するために結構時間をかけて調査していました。専門用語だけでなく、業界トレンドや最新技術、報道傾向なども調べて臨んでいました。

「自分はプロとしてこれだけ準備してきました」ということを示せば、大体は協力してくれますので、ここからは姿勢の話ではなく、実務の話をしようと思います。


口下手な相手には念入りに準備

私個人の経験則ですが、形のあるものを扱っている人は、口下手な人が多いように思います。こうした場合に重要なのは、しつこいくらいの「入念な準備」です。

展示会や自社サイトで流す「匠の技」的な動画のインタビューを撮影する必要があったのですが、そのときのオペレーションで留意した点と段取りを書きます。

①匠の話したいことの全容を大まかにヒアリング
②ヒアリングをもとに挿画を考慮して質問を作成
③質問シートに記入してもらい全体構成を組む
④難解な部分を補う挿画とキャプションを制作

どれも当たり前のことですが、インタビュー慣れしていない人が相手だとかなり念入りに準備する必要があります。
特に難解な専門用語が飛び出す可能性がある場合には、テロップやイラスト挿画も考慮しなくてはなりません。

話し下手な人が相手のときは、さらに緊張させないための配慮も必要になってきます。
「何を話したら良いかわからない」となりがちなので、大まかなヒアリングの後で、それに沿った具体的な質問を作成していました。

どれだけ下準備をしても本番にハプニングは付きもの。バッサリ編集を見越して多めの取材を心がけると安心です。


おわりに

今回は私の知っている技術部門の匠について書きましたが、どこの部門の人が相手でも、専門性とプロ意識の高いタイプには、こちらも同様にプロとして接すると信用してもらえることが多いです。

基本的にこだわりが強い人たちなので、本当はたくさんの話したいことがあるのだと思います。それを一般の人にもわかりやすく伝えられたら、広報冥利に尽きるというものではないでしょうか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。

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