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六月の花嫁とサムシング・フォー

[1:はじめに]

もう今月(2022年6月)も残すところわずかですが、せっかくなので季節にちなんだお話を。

みなさんは六月といえば、いったいどんなことを思い浮かべますか?
六月は旧暦名で《水無月》と呼ばれていますが、日本では昔からほとんどの地域が梅雨の時期にあたるので、湿度が高く、どんよりとした空模様と降りしきる雨のイメージが強いかもしれません。
しかし雨が多いのにどうして水無月なのでしょう?
名前だけを見ていると違和感がありますが、旧暦名の〈無〉は〈~~の〉と訳すのが正しく、由来としては「水が無い月」ではなく「水の月」という意味になるようです。
後者であれば、たしかに雨が多いこの季節にもぴったりな名前ですね!
余談ですが、この時期になると一部の和菓子屋さんでは月名と同じ名前のお菓子がショーケースに並びます。
基本的には期間限定のお菓子ですので、もし見かけることがあれば、ういろうと小豆がお好きな方はぜひ召し上がってみてはいかがでしょうか?

と、今月の名前についてはこのあたりで。
本題はタイトルの通り、六月の花嫁(ジューンブライド)についてと、花嫁つながりから、彼女たちの幸せを願うおまじないアイテムのお話です。

[2:六月の花嫁(ジューンブライド)とは]


《June bride(ジューンブライド)》とは、正確には〈六月の花嫁〉だけでなく〈六月の結婚〉そのものを意味する、ヨーロッパに古くから伝わる伝承の一つです。
その内容は「六月に結婚式を挙げると一生幸せな結婚生活をおくれる」というもので、日本でも六月に結婚式をしたいと憧れている女性や、実際に式を挙げたご夫婦もいらっしゃるのではないでしょうか。
ジューンブライドの由来については複数存在しているのですが、今回はその中でも個人的に好ましいと感じたものを詳しくご紹介します。

◆由来その1:最高の女神《ユノ》の加護があるから


かつて、古代ローマ人が信仰していた神話における最高位の女神《ユノ》。
彼女はローマ神話における主神《ユピテル》の妻であり〈結婚・出産・育児〉を象徴する女神だとされています。
そしてそれらの象徴と同時に〈女性・子ども・家庭〉を守護しているとも語られ、古代ローマ人の、特に女性たちから深い崇拝を集めていました。
ローマ神話では一月から六月まで、それぞれの月を守る神々が存在すると語られています。
一月の〈ヤヌス〉、二月の〈フェブルウス〉、三月の〈マルス〉、四月の〈ウェヌス〉、五月の〈マイア〉。そして六月の〈ユノ〉。
今回、ユノ以外のお話は割愛させていただきますが、どの神々も素晴らしい権能と象徴を持つ高位の存在であることに違いはありません。
少し話がずれてしまいましたが、大切なのは六月の守護神がユノであるという点です。
また英語で六月を表す〈June〉は、ユノのアルファベット表記である〈Juno〉が元だとされています。
これらのことからヨーロッパの人々は、最高の女神ユノの加護を信じ「ユノが守護する六月に結婚式を挙げると幸せになれる」と語り継いできました。
この伝承こそが、六月の花嫁〈ジューンブライド〉の由来のひとつとなっているのです。

ジューンブライドの由来として、上記の伝承の他には〈ヨーロッパの気候では六月がもっとも結婚式に適していた〉という説や、〈農業の繁忙期を避けたら六月に式を挙げる人が多かった〉といった説があるようです。
ですが、神話や伝承を好む私としては〈神代から長く語り継がれてきた女神の加護〉という話が本当なら良いなと感じたため、詳しくまとめさせていただきました。

[2:花嫁の幸せを願うサムシング・フォーとは]


《サムシング・フォー(Something Four)》。
それは特別なアイテムを用意することによって〈花嫁の幸せを願う〉おまじない。
このおまじないの方法と効果は「条件を満たしたアイテムを身に着けて結婚式を挙げると、その花嫁は一生幸せになれる」というもの。
特別といってもアイテム自体に具体的な指定はなく、言い伝えとおりの条件さえ満たしていれば用意するのはどんなものでもかまいません。
言い伝えられている条件はアイテムひとつにつきひとつで、それぞれ〈なにかひとつ古いもの〉〈なにかひとつ新しいもの〉〈なにかひとつ借りたもの〉〈なにかひとつ青いもの〉となっています。
四つとも「なにか」としか表現されておらずあいまいで、どんなものがふさわしいのかわかりにくいかもしれませんが、これらの条件にはしっかりとした意味があるので、それさえわかっていれば問題ありません。
それぞれの意味とはどんなものなのか、下にまとめてみました。

◆四つの条件が表すものとは


1.サムシング・オールド(なにかひとつ古いもの):元の家族との絆や伝統、宝を受け継ぐことを象徴するもの。
2.サムシング・ニュー(なにかひとつ新しいもの):新たな夫婦二人の新たな生活や未来への希望を象徴するもの。
3.サムシング・ボロー(なにかひとつ借りたもの):幸せな結婚生活を送っている人の幸福をわけてもらうもの。
4.サムシング・ブルー(なにかひとつ青いもの):穢れのない清らかな花嫁を象徴するもの。
このように四つの条件には象徴するものや意味するものが存在します。
なかでもサムシング・ブルーは童話の《青い鳥》のイメージもあり「幸せを運ぶ色」として有名で、花嫁だけでなく、式場が内装に取り入れているところも増えてきたようです。

◆おまじないの由来


サムシング・フォーというおまじないの元となったのは、イギリスの古いマザーグースの詩だとされています。
詩の内容は以下のとおりで、
『Something old, something new,(なにかひとつ古いもの、なにかひとつ新しいもの。)
something borrowed, something blue,(なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの。)
and sixpence in her shoe. (そして靴の中には6ペンス銀貨を。)』
となっています。

詩を読んで「あれ? 四つじゃなくて五つ?」と、思われた方もいらっしゃることでしょう。
実はそのとおりで、日本ではマザーグースの詩や6ペンス銀貨が一般的ではないことによりおまじないの内容が元の言い伝えから少しだけ変わっています。
日本で伝わっているサムシング・フォーのおまじないもけっして間違いではありませんが、言い伝え由来の地であるイギリスでは、結婚式のラッキーアイテムとして《シックスペンスコイン(6ペンス銀貨)》は現在でも愛され続けており、本物の銀貨の製造が終了し一般流通がなくなった今でも、そのレプリカを左の靴に入れて結婚式に臨む花嫁は多いのだそうです。

というわけで、季節の話題として〈ジューンブライド〉と〈サムシング・フォーのおまじない〉について書かせていただきました。
未来の花嫁様で、できるかぎりいろいろなことにあやかって幸せな結婚生活を送りたいと願われている方は、ぜひサムシング・フォーのアイテムをぜんぶ用意して六月に結婚式を挙げられてみてはいかがでしょうか?

(なおこれらの内容はすべて伝承やおまじないであり、その効果をお約束するものではありません。万が一のことがあっても筆者は対応いたしかねますのでご了承ください)

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