見出し画像

エモすぎる謎ねぶた【毎週ショートショートnote】裏お題

「では、入ります」

ホスピスで寝ている父の脳に僕は入った。

20XX年、量子AIによって人の脳の中に入ることができるようになっていた。

「うわ、すごいな」

暖かい色の巨大なねぶたがゆっくりと動いている。

そのねぶたをよく見ると僕の顔があった。

他のねぶたを見ると家族の顔だった。まるで父のまわりで家族みんなが踊っているようだった。

「これは……」

「脳内見られるのは恥ずかしいけど、『エモすぎる謎ねぶた』っていうことにしておいてくれ。ところで何かあったか?」父が言った。

「そうだ。父さんのクラウドパスワードを教えてほしいんだ。父さんの仕事の引き継ぎをするよ」

「現実的だな。まあ、俺も急に倒れたからしょうがないな。パスワードは『password』だよ」

「そんなパスワードだったんだね。あとのことは任せてくれて大丈夫だからね。みんな元気だから……」

「わかった。申し訳ないな。ありがとう……」

父がそう言った直後、ねぶたの明かりは消えていった。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※月末、年末の仕事がきつくなってきました。皆様も体調にはお気をつけください。


*この記事は、以下の企画に参加しております。

サポートお願いいたします!執筆活動費にさせていただきます。