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失恋墓地(2作品目)【毎週ショートショートnote】

私は失恋すると墓地に来る習性がある。

もう何回来ただろう。この墓地に。

この気持ちを供養してもらいたくて。 

それは私だけの『失恋墓地』。

夜の墓地はひっそりとしていて春はひんやりしている。

今日は満月だ。雲もなくはっきりと見える。

月明かりが墓地全体を照らし、墓石が青白く光を反射していた。

規則的に、等間隔に並んでいるそれらを眺めながら私は歩いた。

そこは異世界のような非日常の空間。

人間がまだ感知できない何かが潜んでいるんじゃないかという恐怖。

ーあ、あのお墓の後に何かの気配が……

私の心臓の音が大きくなった。

そのお墓を凝視しながら横を通り過ぎた。

だが、何かがいるわけもなく……

そういった恐怖で失恋の気持ちを上書きさせる。

私は明日からまた新しい気持ちで恋することができる。

「気になる男性が一人いるんだよね~隣の部署の経理の人なんだけど、草食系っぽくて可愛いんだよね。私をフッたみんな後悔するわよ」

私は傷ついた気持ちを自分で供養した。

(410字)



たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※執筆をガリガリ進められる人間になりたいです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。



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