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失恋墓地(4作品目)【毎週ショートショートnote】

その日は優しい雨が降っていた。

私は傘にあたる心地よい音を聞きながら歩いていた。

ーここに来るのはもう5回目ね。

『失恋墓地』そこは失恋した気持ちを埋葬する場所。

私は年に一回墓参りをする。

お供え物とお花を用意して失恋を思い出す。

ータカシさんと別れてもう5年。5回忌ね。

水場でお花の準備をしながらタカシのことを考えていた。

「こっちの水道使ってもいいですか?」

男性が声を掛けてきた。

「いいですよ。どうぞ」

私はそう言って男性の顔を見た。

「タカシさん……」

「マユミさん?……」

「タカシさんも失恋墓地に来られるんですね」

「マユミさんこそ、来られるんですね」

タカシがそう言うとタカシの手から一枚の写真が落ちた。

「えっ、私の写真?」

私は自分が写る写真を見て一瞬動揺したがすぐに悟った。

「マユミさんに振られてここで埋葬してるんですよ」

「ちょっと待って。振られたのは私よ。私もタカシさんへの失恋を埋葬してるのよ」

「も、もしかして(二人同時に)」

(410字)



たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※そろそろ連載小説も進めなければ。連載小説の筆が進まず、毎週ショートショートnoteに逃げちゃってる自分がいます。たらは様にご迷惑を掛けてるかもです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。

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