ホールシックガール・エスケープ

ホールシックガール・エスケープ


 テキトーな誰かとセックスするのは

 さびしいから

 その間は何も考えなくて良い

 あなたはそこにいるだけで認められる

 例えば良い子であったり何か媚びたりしなくても

 将来の不安を考えたりしなくても

 ただそこにいるだけで認められる

 穴としてである

 彼らはただ出せれば良い

 その穴の中に、わたしの場合、女の子が住んでいる。


 わたしの実家には父親が子供を殴ろうとして開いた穴がある


 女の子は誰かと繋がりたい

 気付いて欲しい 寂しい

 そんな女の子に私は体を乗っ取られる時がある

 幼少期、家に食べ物がなくてはち切れるほどバターを食べた

 女の子は寂しくて

 先週、わたしはマーガリンの箱を空にしながら

 苦しくて

 彼氏にLINEを返した


 壁の穴は修理されずずっと廊下に開いたままで

 わたしは廊下を通るのがいつも怖かった


 コンビニエンスな快楽で

 穴は埋められる

 食べると腹は満たされる

 セックスすると寂しくないように思える

 だけど逃げるな

 目を背けるな

 それらは偽り

 女の子は寂しくって繋がりたくて

 誰何構わず食べて食べられるけど

 女の子は親に殴られた

 食べ物を与えられなった

 その子がわたしの中に住む

 わたしまでもが女の子をいじめなくても良い

 わたしはわかっている

 マーガリンを口にする方が苦しい

 誰かとセックスする方が寂しい

 そんなことより

 たったひとり遠く離れた人と

 ずっと繋がっていたいことを


 真っ直ぐに 生存せよ!

 わたしは穴を埋めない


 その穴に手を差し込んで

 女の子の手をとって穴の

 あちら側からこちら側へ連れ出す

 一緒に穴を見る

 そこから女の子は生まれ落ち

 穴があるお陰でわたしは孤独

 バターを食べるわたしも

 誰かれ構わず食べる彼らも皆孤独

 けれどもわたしは寂しくない

 何かれ構わずも吐くこともせず

 偽りなく食べる

 快楽でなく 寂しくもなく

 生存のため

 わたしの穴は塞がらず

 誰にも理解されない

 わたしは孤独

 だからこそ寂しくない

 穴があるからわたしは女の子と繋がれる

 手を強く握ると少し驚いた顔で


 「あんた、馬鹿ね」

 と笑った。


 あなたの心の中に女の子はいますか

 あなたは彼女から逃げていませんか

 本当に食べたいものは何ですか

 セフレですか それとも

 女の子と向き合う時間ですか

 冷蔵庫の中にマーガリンしかないのでわたしはバターを買って来た

 恋人にお菓子を作るために

 わたしは女の子と「もうひとりでバターを食べませんよ」と

 ゆびきりげんまん

 真っ直ぐに 生きていく

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