見出し画像

放生会

放生会


放生会という祭りに行った

ここでは食べるために殺してはいけないのに

多くの人が食べるために歩いていた

屋台で売られるものの全てがいのちである

唐揚げとチュロスと鶏と麦のいのちを

咀嚼し磨り潰す人の波の中を潜り

私は屋台の端から端まで何も買わずに歩いた

何と罰当たりな人混みと思って

しかしそんな人もいのちであるので

参道は混雑している

ここでは全てのいのちが放たれ

食べることは生きること

人のいのちも殺してはいけない

私は参道の端に辿り着いた途端屋台で全てのものを買った

屋台で買えるものは似通っていて、その全てのいのちを

唐揚げとチュロスと鶏と麦とその他諸々のいのちを

頬張ると

何だか体がポカポカしてきた

私だっていのちである

殺してはいけないし

食べることは生きること

参道に放たれ ようやく人の波に乗れる

しかし私は胃袋の重さに耐えられない

そこには全てのいのちが

閉じ籠めているのは何と罰当たりな

私は屋台で蛇を買い

歩き終わる時に水に放してやる

頬張った全てのいのちが

唐揚げとチュロスと鶏と麦とその他諸々のいのちが
水に流れ これできっと

食べるために殺した私はいなくなる

そして食べることは生きることなので

私のいのちも一緒になって

水の中に放たれ消えて行く

放生会という祭りはきっと

私の胃の中にある

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?