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読書感想 - 「すごい手抜き - 今よりゆるくはたらいて、今より評価される30の仕事術」 佐々木 正悟

感想

完璧主義の危険性をこれでもかと書き連ねた本。

完璧主義というのは実は本人も結構苦しいスタイルだと思います。完璧というものはこの世に存在しないということを受け入れていないため、どこまで頑張ってもやりきった感がなく、自分を評価できない。一生懸命やっているのに評価されない。それは、完璧を追求するというスタイルによって、締め切りを守らなかったり、コストをかけすぎたりということで生じるわけですが、本人としては「より完璧にしないと評価されないんだ」という逆の発想に入ってしまったりします。

少し厳しめの言い方をすると、完璧主義の人は、仕事はそれ単体で存在するわけではなく、依頼者と担当者の間に存在するものだということがわかっていないということです。自分一人の仕事というものは定義上存在しません。存在するとするなら、それは芸術活動、アーティストのやり方というものです。他者との関係の中で仕事が存在すると捉えるなら、品質もコストも納期も(いわゆるQCD)達成基準というものがあり、それを満たさなくてはならないのです。

「他者と連携して進めるのが仕事である」という風に理解していれば、品質のためなら、コストと納期をぶっちぎってもいいという発想にはならないはずです。品質を言い訳にしてコストと納期を犠牲にしていい道理はないのです。

この本は、完璧主義の自覚がない人、自覚があるけれどやめられない人に是非読んでみてもらいたい本です。最初に言った通り、完璧主義は本人も辛いです。周りも大変です。結構厳しめの言葉が並ぶ本ですが、楽になれる言葉でもあると思います。

その他、心にとまったセンテンス

仕事でも勉強でもそうですが、一切の手抜きができない人というのは、必死に完璧を目指した挙句、途中であきらめるという傾向があります。

「できっこない」ことはできっこありません。世の中には、誰かができっこない目的に向かって時間を費やしている間にも、できることだけをコツコツと着実にこなしている人が必ずいます。

できることをコツコツこなしていく人のほうが経験を多く積むことができ、確実に力になるものです。できっこないことに時間を費やしている人は、自分がその仕事を成し遂げられる想像しかできていないのです。「できっこないこと」をしようとするのは、要するに何もしないのと同じことです。

「私は完璧を期している。だから締め切りに間に合わなくても仕方がない」と心のどこかで思ってしまう。

ヘミングウェイやトロロープといった、かなりの語数を書き連ねた作家は、毎日書く語数のノルマを定めたり、書いた文字数を毎日数えたりしていました。つまり、1日最低2時間は机に向かって、そのとき最低でも1000語は書くという、機械的なやり方で黙々と仕事を前進させるのです。

手を抜かないというのは聞こえがいいようですが、理想的にできないなら仕事をしないというやり方だと、徐々に理想に近づくプロセスにおいて成長する、という展開がまったく期待できません。つまり最初から完璧にできる人でない限り、何もしないということになってしまいます。

仕事をするのに吉日を選んでいたら、いつまでたっても進みません。どんな日でも仕事をしない理由になってしまいます。

仕事とは、できれは習慣的に、調子がよくても悪くても、雨が降っていても快晴でも、「とにかく前へ進める人」によって進んでいくものです。この「とにかく前へ、仕事を進める」プロセスにおいて、手抜きというか、万全は期せない日も、ありうるのです。

手を抜けないという人は、仕事をしない日が多々発生しがちになります。それは必ず、プロジェクトを遅延させる結果にもなるのです。

「できないことでも、できる」というのはありえません。それは文字通り、言葉の矛盾です。

完璧主義的な人というのは
自分→肉親→家族→親友→友達→知人→他人
の順に犠牲にしていきます。
わざとやっているわけではなく、期せずしてそうなってしまいます。
要するに、いざとなったら頼れる存在ほど、犠牲にするということです。

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