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マーケティングにおける兵站

「兵站」という言葉はご存知ですか?「へいたん」と読みます。平坦とは兵の字が表す通り軍事用語で、簡単な言葉で言えば「補給」というのが近いと思います。

戦争の歴史が好きな人はよく知っていると思いますが、この兵站がしっかりしていないと戦争で勝つ事ができません。これは古今東西を問わず、ローマ時代の戦争においても、現代の戦争においても、その重要性は変わっていません。それを疎かにしてしまったが故に、太平洋戦争における日本軍の南方戦略は大失敗に終わっています(考えていなかったわけではなく、楽観視していたからだと思っています)。

で、兵站とマーケティングの関係ですが、最前線の兵である営業さんに情報やリードをいかに届けるかがそれに当たります。特にリードを届けるという意味での兵站は非常に重要となってきます。マーケティングを担当していればリードを届けるのは当たり前というイメージですが、本当にその兵站戦略は戦略となっているのかという話を今日はしたいと思います。

営業さんは誰と戦っているのか

よく誤解されるのですが、営業さんが戦っているのは顧客だと思ってませんか?基本的には営業さんもマーケも同じで、戦っているのは競合です。ここでいう競合は以前に書いた「競合とはなにか」という記事のもっとも広い意味での競合まで含めた競合です。

営業さんは、これらの競合に打ち勝って、自社の製品やサービスを選んでもらう「クロージング」という最終局面で戦っています。マーケはこの最終局面での戦いのために兵站戦略を整えて実行していると言っても過言ではありません。

ちなみに、ドラッガーの「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。」という言葉がありますが、クロージングを営業さんがやるのか、顧客が勝手にやってくれるのかの違いですので、ここでは営業さんが存在する前提とします。

兵站は繋がっているのか

さて、マーケティングにおける兵站としてリードという物資が重要だと言いましたが、これをちゃんと届けられているでしょうか?言い換えれば兵站線は繋がっているでしょうか?

マーケティングの施策では、認知獲得、興味拡大、評価促進、販売促進と言った顧客の購買フェーズに応じて施策を設計していると思います。しかし、それぞれの施策は繋がっていますか?ちゃんと一人/一社の顧客、が購買プロセスを進めるように、購買まで導いていますか?

よく施策計画で見かけるのが、認知獲得だけを行う、興味拡大だけを行うと言った施策がバラバラに用意されている計画です。これでは適切なリードを営業さんに届ける事ができません。このような状態は兵站線がブツ切れになっている状態です。せっかく認知してくれた顧客を特定しないまま、興味拡大の施策を実施しても、認知してくれた顧客を捨ててしまうようなものです。

実際の戦闘で例えてみると、

自国の穀倉地帯から食料を輸送開始したものの、中継地点Aの先の道が途中でなくなり腐らせてしまった。近くの中継地点Bでは中継地点Cまで食料を届けなければならないが、物資が届かないので、近くの荒れた畑からなんとか食糧を調達し、少ないながらも中継地点Cまで届けた。しかしまたそこで道がなくなり、少ない食料も腐らせてしまった。前線に近い中継地点Dでは最前線に食料を供給しなければならないが、待てど暮らせど食料が来ないので、野原の野草をとって前線に供給していた。

となると、前線の兵士が飢えてしまうのは目に見えています。実はこの状態のマーケティング計画は非常に多いのです。

そうならないためには、少なくとも穀倉地帯から最前線までは道が繋がってなければならず、多少の損失はありながらも、できるだけ多くの穀倉地帯で採れた食料が最前線まで届けられる状態でなければなりません。

言い換えれば、認知獲得した人を購買という最前線のゴールまで導けるような道筋が必要なのです。そのために必要なのは、全てのステップでCall-To-Actionを設定して、道をつないでおく事です。この辺りに関しては「穴の空いたバケツとマーケティングコミュニケーション」という投稿を読んでみてください。

適切な物資を届けているのか

最後に、物資をしっかり届けると言っても、その物資が適切なものでなければ意味がありません。例えば、どんなに大量の食料が届いても、腐っていたら意味がないようなものです。

以前にも少し書きましたが、とにかくリードを集めるために、展示会でコンパニオンさんにお願いしてノベルティと交換でプロファイルを集めるというようなことを行っても、本当に顧客となるようなリードは非常に少ないという事が起こります。(この辺は「展示会マーケティングの闇」という記事をご覧ください)

このような状況では、営業さんは努力ばかりで結果に結びつかず、疲弊してしまいます。

そうならないように、適切な顧客候補をみつけ、それを適切なリードに育てていく義務がマーケティングにはあります。これをナーチャリングと呼びます。このなーチャリングを適切に行っていくための補助ツールとしてMA(Marketing Automation)があります。MAを入れれば兵站線を構築できるというわけではないですが、それをわかりやすくするという点においては重要なツールです。

ということで、今回は兵站線に例えて顧客に購買プロセスを進んでもらう、つまりナーチャリングをちゃんとして、質の良いリードを営業さんに渡せるようにしましょうというお話しでした。

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