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事業会社でマーケティング組織を作るのに最初に採用すべき人

今回は事業会社でマーケティング組織を作る時、どんな役割の人を最初に採用すべきかについて書きたいと思います。なぜこんな話を書くかというと、気になる話をよく聞くようになったからです。最近マーケティング支援のお仕事を仲介してくれる会社の方とお話ししていると、マーケティング組織を立ち上げるのにWebマーケターを採用しようとしているケースが非常に多いとのことでした。しかも、「SEO最適化ができて、広告運用ができて、クリエイティブが作れて、SNSが運用できて、オウンドメディアのライティングもできる人」みたいな人が求められているようです。これはあんまり良くない流れだと私は思っています。

なぜ良くないのか。確かに、今コロナの影響でマーケティング手段はWebに大幅に寄っています。そのため、Webマーケティングのノウハウを持つ人材が役に立つのは間違いありません。ただし、事業会社で初めてのマーケターとして採用されるのがWebマーケティングに特化した人材であるべきかというと、私がその会社の経営者ならNoと言います。加えて、上記のようなWebマーケティングの多様なスキルを持つ人材はそれほど多くなく、そのような人材を採用するにはそれなりの人件費がかかります。高い人件費を払って、初めてのマーケティング担当者としてWebマーケティングに特化した人材を採用するのは事業会社にとっては大きなリスクとなりかねません。

現在のマーケティングは、とりうる施策の種類が非常に多岐にわたっています。そのため、マーケターと呼ばれる職業の中でも役割が細分化され、分業化がおこっています。Webマーケティング、イベントマーケティング、マスマーケティング、コミュニティマーケティングなど、オペレーションレベルで特化したマーケティングロールが生まれています。実際、私がいた頃のマイクロソフトでは、それぞれの細分化されたマーケティング機能ごとに組織があり、専門のマーケターが存在しました。しかし、今回テーマとしているような事業会社で初めてマーケティング組織を作ろうとした際に、このような特化したスキルを持つマーケターを採用してきても、なかなか機能しないのが現実です。

では、どんな人材を最初のマーケターとして採用すべきかというと、「マーケティングマネージャー」と呼ばれる役割の人です。マーケティングマネージャーは、マーケティングに関して広い知識をもち、最適なマーケティング施策を選び、設計し、実行できる人材です。どんなマーケティング施策を実行すべきかは、その時々の状況によって異なります。状況を見極め、自社のブランドと相性の良いマーケティング施策を選び、連携させて実行し、ビジネスの結果まで導く役割をマーケティングマネージャーは果たします。そして、予算や人材をやりくりするのもマーケティングマネージャーの仕事です。人材が自分しかいなければ、リソース的、知識的に自分でできることは自分でやり、できないことは外部のベンダーに依頼するなどのやりくりも行います。予算が足りなければ、効果の高い代替手段を探してそれを実行したりもします。そうやってマーケティングを徐々に軌道に乗せていくのもマーケティングマネージャーの役割です。

最初に出てきた「SEO最適化ができて、広告運用ができて、クリエイティブが作れて、SNSが運用できて、オウンドメディアのライティングもできる人」というのは、Webマーケターとしては非常に優秀な人ですが、マーケティングマネージャーではありません。決してどちらが優秀とか、そういう話ではなく、「マーケティング組織を立ち上げる際に、最初に必要となるのはどのような人材か」と言ったらマーケティングマネージャーですということです。

ちなみに、マーケティングマネージャーという肩書きですが、マネージャーだからと言って管理職というわけではありません。私もマーケティングマネージャーという肩書きで長いこと仕事をしていましたが、管理するのはマーケティングであり、人ではありません。なので、管理職を採用するわけではありません。これは、非常に誤解が多いのでおまけ的に書いておきます。

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