2021年の日本茶業界について。これからの動きについて。
9月です。2021年もあと4か月です。はやいですね。(笑)
だからこそ、このタイミングで「2021年の日本茶業界について」なんて記事を書くのは遅いんじゃない?と思った方。実は全国的に煎茶の生産は8月で終わってしまうところが多いんです。※秋に生産されるのは番茶が多い。
つまり、8月で大方2021年に生産された煎茶の取引が終了し、残された2021年の4か月+2022年の3月までの動き次第で2022年の新茶の出来や相場が決まっていくんです。
生産がやっと終わった日本茶生産農家さん。仕入れがやっと終わった日本茶卸売業者さん。
それぞれの2021年があったとは思うのですが、ここでは僕のあてにならない予測や個人の主観も踏まえながらより大局的に日本茶業界の2021年を振り返ってみたいと思います。
茶業者でなくても、様々な業界の2021年を見ることで面白い発見があると思いますので、是非最後までご一読ください。
2020年と2021年の生産状況について。
まず、はじめに2020年と2021年の相場状況はどうだったのかを見ていきたいと思います。
ちなみになぜ相場状況を見ていくかというと需要と供給のバランスの指標になること。生産農家さんの収入が多くなれば茶園管理もできるつまり、美味しいお茶が作りやすい環境になります。
反対に収入源(単価安)だとお茶の管理ができなくなる。味が落ちるんですね。だから相場をみて未来を予想する。仮説を立てるみたいなことができるんですね。
2020年は、2021年よりも生産量・相場状況も好況だった。でも...。
結論から申し上げますと、コロナ過の2020年産の取引に比べ、2021年産のお茶の取引単価は大幅に向上しました。
但し、日本国政府から最初の緊急事態宣言が行われたのが2020年4月。日本全国の茶産地は「新茶」の時期、お茶を摘採する期間でした。そんな時期に緊急事態宣言で日本茶の市場も大混乱。たしかにコロナ過の出口が見えはじめ相場は持ち直したかもしれませんが、そもそも比べる対象の2020年の取引単価があてにならないのかもしれません。
過去を振り返ると以下の通りです。
農林水産省「茶をめぐる情勢令和3年6月」から引用
世の中の相場というものは需要と供給のバランスで決定するといわれていますから、日本茶の需要がどんどん減っていることが分かります。
繰り返しになりますが、農家さんや茶卸売業者の収入が減ることで、美味しいお茶を安定して作ることができなくなります。これは深刻な問題です。茶業者が良い品質の茶葉を良い価格で購入し、価値を加えてお客様に販売をしなければなりません。これは急務です。
近い将来、お茶の需要を創出し、さぁこれからだ。という時に、供給体制(生産体制)がボトルネックとなりうる可能性もありますから未来を見据えた茶業経営の合理化が求められて生きそうですね。
これから日本茶業界に起こると考えられること。
①ペットボトル日本茶の更なる進化。
僕はペットボトル飲料の進化は止められないと思っています。というか止める必要もないと思っていて、進化するべくして進化していくのではないかと思っています。実際に大手飲料メーカの仕入担当者さんやペットボトルOEM工場の方とやり取りをしていると、急須で淹れた味に近づけるような抽出方法を貪欲に学ばれているし実際に投資しています。
お茶の成分や抽出方法もかなり研究されています。もし、流通の時点での温度管理の体制が整うようであれば【美味しくて新鮮な日本茶】がどこでも楽しめるようになると思っています。そういう条件が整えば【すすむ屋茶店】でも商品化したいと思っています。※いづれにせよ、すすむ屋が考える【おいしいお茶】となると250円~500円の価格になるでしょうからそこまで品質があがるかどうかが勝負ですね。
更に、スムージーやラテ系も日本茶と相性がよいのでここの商品も充実してくるでしょう。溶けるアイス「クーリッシュ」のような商品の展開もあるかもしれません。問題はプラゴミの問題で、容器にイノベーションが必要かもしれません。
②日本茶k字経済。供給量が少ない高品質茶葉の高騰。
残念ながら世の中のk字経済の流れは茶業者にも、もれなく訪れると思っています。農家さんであれば、品質(取扱い単価)の高いものをつくるか。茶の品質を下げたとしても、収量(販売数量)を確保するか。の選択をしなければならないと思います。茶業者であれば、品質の高い茶葉のみを扱うか。価格は低くても販売量を増やすか。いづれにせよ。ブランドごとに誰の何を解決するのか。ポジショニングを明確にしていくことが必要だと思います。
実際に、農家さんでも中級品をつくる農家さんは激減しているのが現実で、そのほとんどが収量確保に動いているので、相対的に品質の高い茶葉をつくる農家さんや茶卸売り業者さんの取引価格は上がっていくと思います。但し、低価格帯の茶葉の市場が大きいのも事実ですので、メリハリのある茶づくりをやりきれる人が勝ちますね。
③抹茶(粉末茶)の様々な商品が増える。鹿児島が抹茶の生産量日本一になる。
健康に対する意識の向上で、日本茶に対する意識は世界的にかなり高まっていると思います。その中で、気軽に日本茶に触れることができる。製菓用の抹茶の需要が増えると思います。それに伴って様々な抹茶商品が出てくるでしょう。これまでのお菓子は勿論のこと、プロテインや青汁のようなものにより緑茶が使われてくるのではないでしょうか。
そうなると生産基盤のある、鹿児島・静岡の抹茶供給量は飛躍的に成長するはず。もともとこの2県は生産体制が整っていますから品質の良い抹茶や煎茶パウダーができるでしょう。なかでも鹿児島はもともと抹茶の製造に必要な「被せ」という加工をしていましたから抹茶の生産量も日本一になると思います。抹茶=京都のイメージが、抹茶=京都・鹿児島・静岡になる日も近いと思います。
④職人はいらない。いらなくなる。
最後に、これは僕の皮肉な予想ですがこれ以上職人はいらない。と思っています。というのも茶業界はそもそも職人だらけだし、職人しか生きてこれない特殊な世界なんですね。頼るのは自分の五感のみ。そうやって茶葉の品質を担保してきたわけですから。今までが奇跡なんです。(笑)。
僕が言いたいのは、職人が全く不要ということではなく、すでにある職人の力を何倍にもできるようなマネジメント能力や市場を読み解くマーケティング力・更にパーパスや美意識をもちあわせた経営能力がこれからは必要になると思っています。職人を活かすことができる人がこの世界には必要です。
どちらかというと職人タイプの僕にとっての戒めとして最後に予測しておきます。日本茶の業界がより素晴らしい業界になることを願って。
まとめ
コロナ過において、日本茶業界も変化を必要とする時代となりました。k字経済は他業界の話ではなく日本茶業界にもいえること。当たり前のことですが、より自分達がどうありたいか。何を必要とされているかを見極めていく必要がありそうです。
とはいえ、世界的な健康意識の高まりから日本茶を探し求める方が増えるていることも事実。品質の良い茶葉を提供して多くの人に日本茶の本当の価値を届けたいですね。また日本の伝統産業という地位に甘んじることなく、うまく変化しながら世の中に必要とされる業界でありたいものです。
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