わたしの頭と心をほぐしてくれたビジネス本 -心をつかむ超言葉術-
ある日、社内のSlackで投稿された「#読書の秋2021 に参加してみよう」という企画のお知らせ。
あ、書きたい。と真っ先に思い浮かんだのがこちら。
コピーライターで作詞家という肩書きを持ちながら、ラジオ、企画講座など幅広くあらゆることを手掛けていて、noteでもご活躍されている阿部広太郎さんの著書のひとつ。
ビジネス書だけど、心のバイブルにしたい。読後はそんなふうに思った。
阿部さんとの出会い
出会いといっても一方的だが、2019年の宣伝会議賞のキックオフイベントで初めてお目にかかった。
プロのコピーライターって近づきがたいオーラがあるのかな、なんて変な想像をしていたが、リアルの阿部さんはまったく逆だった。
オーラも話し方も柔らかで、でも阿部さんの話からは、企画や言葉へのふつふつとした熱い気持ちが溢れていた。
それから半年後、この本を読んだ。
あのときに見た、阿部さんの柔和な雰囲気と、熱い心が手にとるように感じられる。今まで読んだビジネス本では感じたことのなかった、なんだかホッとする気持ち。ちょっと言葉に意識を向けるだけで、心が豊かになったように感じる発見と感動。
期限に追われながら目の前の仕事を必死にこなすしかなかった日々だったが、一度肩の力を抜いて、優しく熱い想いをもってクリエイティブなことをやろう、そんな気持ちにさせてくれた。
全体として、特にコピーライターやプランナー向けの内容ではあるのだが、コピーライターでも企画屋でもない、でもちょっと企画好きの凡人が、「これは一生大事にしたい」と思った点を紹介したい。
素敵禁止。
自分の言葉選びのクセを意識し、その言葉の奥にある気持ちに向き合ってみよう、という話。阿部さんの場合は、「素敵」という言葉をあえて使わずに、もっと伝えたいことにぴったりな言葉を選んでいるという。
読者にも素敵禁止と言いたいわけではないと書いてあるのだが、この内容を読んでから、「素敵」という言葉がどうも気にかかるようになった。
思っていたより自分も周りの人も、よく使っていることに気付いたからだ。
そもそも「素敵」という言葉自体、響きが素敵だし、ちょうどいい塩梅の表現で使い勝手がいいし、使う方も聞く方もなんだか嬉しくなる言葉。
でも、あえて使わないように意識してみると、「なぜ自分は素敵だと思ったのか?」という根っこにある気持ちに向き合えるようになった。
例えば、素敵なnoteを読んで誰かに感想を伝えたいとき、単に「素敵でした」ではなく、「心温まる文章でした」とか「◯◯さんらしい表現に惹き込まれました」みたいに、「素敵」よりも一段深く、どんな点に心動かされたのかを言葉にしてみる。
そうすると、本当に伝えたかったことが伝わる気がするし、相手にとっても「素敵」と言われるよりちょっといい気分になってもらえてたら嬉しいなと思う。
言葉をちょっと意識するだけで、なにげない日常の会話でも心がちょっと温まる。どう伝えたらいいかな、と言葉を考えることが楽しくなった。
企画書はラブレター。
企画書には愛と熱を込めること、そして自分にしかできない仕事をつくること。
自分の仕事のスタイルと答え合わせができた気がして、嬉しかった内容だ。
広告営業の仕事をしていたとき、提案書や取引先からの要望に対して、「あのデータやこんな角度の分析があったら喜ばれるかな?」と、デフォルトで見せるもの以外のことを盛り込むのが好きだった。
おかげで、部署異動で引き継ぐときには「こんな細かく見てたの?」と驚かれる(というより、ややめんどくさがられる笑)こともしばしばあって、わたしのやっていたことはちょっと大げさだったのだろうか・・・と思うこともあった。
ただ、「こんな提案をいただいたのは初めてです」と取引先の人から言われたときはすごく嬉しかったし、
この本を読んで、わたしのやり方は間違っていなかったかもしれない、と思うことができた。
阿部さんは、企画書をつくる仕事についてこう言っている。
「やらなくてはいけない」仕事であっても、少しでも夢中になれるポイントを見つけて深掘ったり、どんなふうに伝えたら心が動くだろうかと考えてみたり。
わたしなりの「やりよう」をもって、少し遠回りでも、想いを込めた仕事をこれからもしたいと思うことができた。
あなたが感動していなければ、それを受け取る人も感動しない。
これは、第4章にあった一文だ。
ドキッとした。
今やっている仕事に、わたしは感動できているのだろうか、と。
当時、web広告のクリエイティブを作ったりキャンペーン企画を担当することが主な仕事だったのだが、それにはどうしても、KPI・予算・開発ハードル、などあらゆることを加味する必要があり、「受け手が一番喜ぶこと」よりは「こちらから伝えたいこと」を優先して出さなければならないこともあった。
もちろん、受け手がどう感じるかという視点は意識していたが、「自分が受け手だったときに、本当に感動するか?」という視点まで持てていなかったと気がついた。
それ以来、この一文を仕事のモットーにするようになった。
「わたしは感動できるか?」と一度立ち止まってみる。制限があるなかでも最大限まで工夫して、その答えにYesと言えるものにする。すると、世に出すときの自信が、全然違った。
ルールや制限に従わなくては、と凝り固まりがちだった頭を、ほぐしてくれた。
ーーー
このnoteを書く前に読み返したら、やっぱりホッとした気持ちになれた。
さまざまな事例を用いながら、「こうしてみてはどうだろう」と優しく提案してくれる。そこからは、それをどう落とし込んで言葉として発信していくか、自分の番だ。
何か息詰まったり、迷ったりしたら、またこの本を開きたいと思う。
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